表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拳で語りたい物語(仮)  作者: 山下太郎
9/27

浸透系

[武都リョクリン 神水流(カミズル)道場]

7月11 8:20


「こちらがギルドからの依頼書となります」

「確認させて頂く、ギルドマスター直々ですか、少々お待ちを」

道場主ホクシンはそう告げ、書に眼を通す

読み終わったのか、ホクシンは

「ホクトを呼んできてくれ」

弟子の一人にそう投げかけ、また暫く時間を待つ

「失礼します師範なにか?」

「お客人、私拳士ホクトと申します、ようこそおいてくださいました」

「上級魔法士、トレイヴンですお邪魔しております」

「これを読めばわかる」

「失礼します」

ホクトは書に眼を通す、顔色はあまりよくない

「して、師範私にどうしろと?」

「好きにせよ、この件は一任する」

「それは流儀をまげてもと認識しても?」

「広義に捉えよ」

「言わずともわかっておるだろうが、教える事もまた修行」

「わかりました、トレイヴン様、勇者様をいますぐお連れいただけますか?」

「まだお受けするわけではありません、その前に確かめなければならぬ事があります」

「え?」

虚を突かれた形でつい声にだしてしまった上級魔法士

「ええと、申し訳ありません私に判断は不可能のようです一旦もどり

 確認してもよろしいか?」

「よしなにお伝えください」


[冒険者ギルド1F]

9:10


「という事でして、判断を仰ぎにもどりました」

「確認しますのでお待ちください、丁度勇者様はいらしてるので」

「おねぇさん、バタジャガタベタイナァ!!」

「まってなすぐ作ったげるよ」

「OK!!」

後々に効いて来るのである!!

「勇者殿、いらっしゃいますか」

「なんでしょう?」

「少し先の件でお話が、受付の方へお願いできますか?」

「ええわかりました・・・」

「戻って来るまでにたんと作っといてあげるよ」

「お嬢様、任せました!!」

そんな光景を眼にした受付嬢の顔は緩んでいた


「おはようございますトレイヴンさん」

「おはよう勇者殿」

「先方がどうも確認したい事があるとの事で、勇者殿に来てもらえないかと」

「ああ、行きましょうすぐいけます」

「では、私の手を移動魔法を使いますので」

「ええと、天馬の羽の魔法版です勇者殿、名称は転移が一般的でしょうかね?」

「なるほど」

「行きます」

「行ってきます」


[武都リョクリン 神水流(カミズル)道場前]

9:35


「ここは武都リョクリンです、名前の通り道場が多い為名づけられたと記憶してます」

「最初はひとつの道場だけが在ったそうで、人が増えた結果ですね」

「道場の名前はカミズル、勇者殿のお相手はホクト殿です」

勇者が知りたい事を適確に知らせるトレイヴンは優秀である

「行きましょう」

「はい」

道場の門前にて勇者の行動

「押忍!!お願いします」

20歩先にホクトは立っていた、勇者を睨み付けるように見ていたが

勇者の行動に驚愕してる様子、まわりには結構な数の門下生が整列している


「私は奥で待たせてもらうよ」

自分と変わらない位の女性がいた多分この人がホクトさんなんだろう

「押忍!!リュウ・オミナエ勇者やらせてもらってます」

武道家風はわからないチュースはだめだろう

「カミズル流拳士ホクト、以後お見知りおきを」

「して勇者様、拳を学びたいとの事ですが

 はいそうですかと受け入れるわけにも参りません」

「資格や流儀ってやつですね、かまいません回りくどいのはやめましょう」

「・・・わかりました」

「私と組み手をしてもらいます、この件は師範より一任されておりますので

 それで判断させて頂く、よろしいか?」

やべぇ女性相手なのに燃えてきた、まだだまだ

「押忍!!」

「あ、流儀といいますか私も一つだけあります

 女子供に手を上げてはいけないという物です」

「幼少より父に言い聞かされてきました

 もちろんあなたを弱者といってるわけではないのです」

「力なきものと置き換えて貰えれば」

「理解した、一応私はこの道場を継ぐものなので問題ありません」

「それと気になってるんですが、なぜあなたは私に敵意を向けるのです?」

「組み手、練習のような物であって実戦ではないですよね?」

「え?」

見透かされていた、白状しなければならないだろう

「私は・・・あなたが憎い、勇者という才能が・・・」

「なるほど、全ての力を使えるか」

「ええ・・」

「簡単な事じゃないですか憎さを別なものにすればいいだけですよ」

「?」

「俺はまだ魔法も気も自然の力も使えない、武道家の人が手から気を出すの見て

 わくわくしました、尊敬しました、憧れました」

「この組み手、もしあなたのそれを変える事ができたら

 合格って事にしてもらえますか?」

「アコガレロト?尊敬しろと?」

「ああいや、それはあくまで俺の話なんで憎しみを別のものに変えてもらえればと」

「無理でしょうそれは」

「知ってますか?どうやら、それをやるのが、やれるのが勇者って」

言ってみたかっただけなのは否めないし後悔はしない、反省はする

だが決め手にはなったようだ

「いいでしょう見せてもらいます、勇者の力を」

「押忍!!」


ワンパンでした、ワンパンでぶったおされた

「勝ち負けじゃないですよね?」

立ち上がりながら、強がる超いてぇ

「ええ好きなだけどうぞ」

両者の攻撃が届く間合いに入るたび勇者はぶったおされた

「少しだけカミズルを味わってもらいます」

ああまだ基礎武術だったのねと思うまもなく腹に掌底が入った激痛が走る

「がぁああああああ」

「浸透系打撃です、耐えるのは諦めてください」

腹に何も入ってなくてよかった

なぜ立てるのか、それで何が変わるのかわからない

だがこういう時思い出す、野球の練習は無駄じゃないこれ以上苦しい事はあった

そしてあの人は言っていた、指一本動かせるなら


今だ立ち続ける勇者、その眼は死んでない輝きが増してるように思う

浸透打撃で終わると思った、甘かった

もうごまかせない気が膨れている、当初は基礎を学んだ拳士程度だったはずが

今では3倍くらいに膨らんでいる

なぜ立てるとは言わない、そんなお約束はこの状況を一目見ればわかる

「苦しくないんですか?」

「痛いし、苦しいですよ、あなたは強い俺よりね、圧倒的だ

 だからこそ楽しい、強さを求める者にとって

 いや武を学ぶ者にとって、強者への挑戦ほどの娯楽はない!!」

また膨れ上がった何倍だろうか、勇者の突撃を難なくかわしカウンターを放つ

「がはっ」

「たのしい?」

まだわからない様子の拳士に勇者は咆える

「あなたはなぜそこに立っている、たまたま生まれたから?

 なんとなくこの歳まで続けた?才能があった?」

「あなたを俺は尊敬しよう、あなたは俺より強い

 強い事は尊敬できる事だ、誇れる事さ、続けられるのも強さだ」

両腕はダメだな動かそうとすると鋭い痛みヒビが入ってるのだろうか

足は辛うじて動くが、腹はもう麻痺してる、顔は右目が開かない


また勇者は倒される、それを見てホクトは言う

「ひとつ奥義をお見せしましょう、カミズル流金剛浸透掌底といいます」

「打撃を当てる瞬間にその部分をコントロールし打撃が通り易いよう

 調整する、そして浸透系で内部を破壊する」

ある程度物は硬くないと衝撃は伝わりにくい、それをコントロールして

完璧に打撃と浸透系を叩き込むのだろう

(・・・が・ぁあぁぁぁぁあ)

どのくらいのた打ち回ってたか覚えてない、本当に痛いとき声はでない

見た事ある通称心臓打ち捻り付

脂汗が出てる、呼吸はやっとだ、時間は決まってないが立たねば

それに勝機は見えた

「はぁはぁはぁ・・・、出来るようになるのは楽しいでしょう?」

そういいながら天を仰ぐ勇者能力がんばれ超がんばれ

「ああそうですね、強くなるのはわかりませんが

 出来るようになるのは楽しいですね」

「ほころんだ、あなたは今、はぁはぁ、奥義をだしてくれたそういう相手だと

 奥義を見せてもいい、はぁはぁ、相手だと認めてくれた、はぁはぁ」

「・・・・みとめた私が?」

考えさせるそのたびに変わるチャンスなんだと思う

「あなたは・・・もうなんでもいい、認めたという事は尊敬の念が生まれた」

「はぁはぁはぁはぁ・・・ふー、あなたは強い楽しめよ」

「武を歩む者なら楽しんでみろ、結果なんてどうでもいい」

 勇者の気が膨れたように感じる、いやあれは気なのか私にはわからなくなった

「拳士ホクト、あなたにはその義務がある」

「もう一度言おう、アナタは出来る強い人だ!!」

「わかったはずだ、出来るならわかったはず

 強い相手に己を全力でぶつけるのは?」

ここ一番で咆えながら勇者は問う

「楽しい」×2

二人の言葉と考えは初めて一致する

「その程度か、憎い勇者を倒して見せろ」

倒れた体性で言う勇者

「いまさら安い挑発は必要ないでしょう?」

「そうですね、すいません」

顔をあげ彼女の顔をうかがう、彼女の顔は穏やかに見える

俺は最後の突撃を開始する


「参りました」

ぶったおれたまま、俺は叫ぶこれ以上は無様を晒すだけ

突撃した俺を、まるで合気道のように流し投げ

止めに腹に掌底を打ち込まれた麻痺しててよかった

一撃も返せなかった、体は徐々に内出血跡が浮かび上がる

すこし呼吸を整えなんとか立ち上がる、素晴らしきはこの世界に適応しだしたこの体

「押忍!!ありがとうございました」

「帰ります」

道場を継ぐ者と言っていた事、武道を続けていた事

確信できるのはそれから導きだせる、出来るようになる楽しさだけだった

それ以外はハッタリだ、記憶にある名言の受け売りでもある

勇者能力がどう作用したかはわからない、だが


・・・門に入る時の礼に最後の礼、そして今の自分の心

高揚している、楽しんでいた、いつから?疑問はつきない

勇者の才能はすさまじいそれは、誰でも知っている

彼は一度でもそれを使ったか、否一度たりとも使っていない

魔法も、気も、自然の力も使えないと言っていた

そしてそれは本当だった、使えないからここに来たのだから

なぜ才能を憎んでいたかすら忘れてしまった

彼のように初めは憧れだったのかもしれない、いつのまにかそれが変わってしまった

今日のこの出来事のように


「すぅ・・・拳士ホクトが師範の一任により宣言す

 我がカミズル流は、認定の儀において相応と判断し

 勇者リュウ・オミナエ殿をお受けいたします!!」

「その気高き魂を流儀を理解し皆納得したと思う」

「これは師範の判断と同義とします」

「一同よろしいな?」

「ハッ!!」

一斉に門下生が手を合わせ頭を下げた、この流派の礼なのだろう

壮観だったそしてまた倒れたがもういいだろう

「ひとつだけリュウ殿いいですか?」

「ええどうぞ、倒れたまま申し訳ない」

「ぷっはははは、あなたはあなたの流儀を守り通したのですね」

「?」

「一度も当てるつもりの攻撃をなさらなかった

 最初は少しむっとしましたが、あなたの流儀は伝わりましたのでよしとします」

「次からは容赦しませんのでそのつもりで」

「はい・・・押忍!!」

その後勇者は門下生にもみくちゃにされた

「いたいいたい、そこいってるからいたい、やめて、折れてる折れてる」

「やめろっていってんだろ!!」

体は動かないし抗いようもない、もちろん止まらない

拳士ホクトが止めに入り事なきをえた

「死ぬとこじゃったのう」


返事しちゃったけど俺の攻撃当てたら爆ぜない?

バタジャガは無理だな・・・・どうやら帰れそうにない


(ふむ、面白かったがのう、つまらんとも言える

 ああいう勝負じゃ勇者には絶対かてっこないのう、味を占めてきた節もある

 それに鼓舞が発動したら抗いようがない)


とりあえずホクトは女性キャラで悩み中

女性にその投げかけが通じるのか・・・・

単純に男は強いヒーローに憧れるが、女性は可愛いものに憧れる

どうしようもない性別の壁だ、幻想はご都合でやるしかないかな

男として可愛いものにあこがれないもんな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ