黒幕と先生の戦国記
終わりが近付いてきております。後、2、3話くらいで書き終わります。最後まで読んで頂ければ幸いです。
城中に火の手が上がる中を私は護衛に守られながら進んで行く。・・・・・・まさかこのタイミングで仕掛けてくるなんて思わなかった。
いったい誰が仕掛けて来たのかもわからないなんてね。
「子供達をすぐに避難させなさい!それから・・・・・・!」
火は点いているのに燃えていない?何よこれ!
気付けば煙も苦しくない。まるで幻・・・・・・
『謀られたようだな。宿主よ、急いだ方が良いぞ。嫌な気配が数多く紛れ込んで来ている。・・・・・・志乃と明を逃がした方がよいな。』
クオは何か気付いた様だ。こんな時だから詳しく聞いていられないのが腹立たしい。
「殿を最優先で逃がすわ。」
『・・・・・・それでも良いがな。この炎は幻ではないぞ。焼きたい者を焼き殺す炎だから其れまでは燃え続ける。まあ、使用者の魔力が続けばだがな。』
目標は綾人様か・・・・・・其れにしても全く気付かないなんて!
「た、大変です!敵らしき者共が侵入して来ており城内で戦闘が始まっております!」
誰かが裏切ったな。しかし誰が・・・・・・考えるだけ無駄かしらね。浜野安治とその妻しか思い浮かばない。もっと早くに追放しておくべきだったわ。
走る私達の近くで悲鳴が上がる。数名が悲鳴が上がった部屋の襖を蹴り破り中を見たら複数の忍者に斬られた元教え子が其処に倒れていた。
私に付き従う忍者達が素早く始末すると殺した忍者は皆が異様だった。手やら足や等が異様に発達した身体をしていたのだ。
「こやつ等は風魔でございます!」
「・・・・・・風魔?」
『昔は封魔とも言ったかな。身体に魔を封じる一族だが・・・・・・こやつ等の住みかは東側の筈だったが?』
忍者の説明をクオが補足している中で私は麗が何かを抱えているのを確かめた。腕の中には眠る子供が抱かれていた。
・・・・・・自分の子を守る為に、其れとも麗が狙われたか、いや全員ね。
「頑張ったわね。後は任せなさい。」
そう言って開いたままの目蓋を手で閉ざす。・・・・・・懐かしい首飾りをしている様だ。堺で買った物を大切にしていたのね。
首飾りを外して子供の圭吾に付けてやりつつ指示を出す。せめてこの子だけでも生き残れば・・・・・・
最上階を目指して進む中で多くの味方の死体を見つけてしまった。・・・・・・皆が知っている者ばかりで今まで苦労を掛けたきた者達が無残にも殺されているこの状況が腹立たしい。
「!お下がり下さい。」
護衛の武士と忍者が私の前に出ると其処には黒装束の男と風魔の忍者がいた。その横には安治が此方を見てニヤニヤと笑っている。・・・面白い事をしてくれるものだ。
「恩を仇で返すとわね。・・・安治覚悟は出来ているのかしら?」
私の言葉に安治は更に顔を崩して笑い出した。
「ハハハ、笑わせるなよ妖怪が!お前等こそこの私が仕えてやったのに大した見返りも渡さずに居たくせに。・・・だからこれまでの報酬を貰ってやろうと言うのだ!」
急に怒り出した安治を冷たく睨み返す。・・・・・・この小物は主犯ではないわね。後ろに控えている黒装束の男がなにやら不気味で仕方が無い。風魔が彼を取り囲みまるで守ろうとしているのに風魔とは違う感じがする。
「おのれ浜野!貴様裏切ったのか!」
「!!!和馬止めなさい!」
護衛として付いて来た和馬が斬りかかると・・・・・・何時の間にか前に出ていた黒装束の男に一太刀で切り伏せられていた。其れを見て私の護衛たちは私の周りを囲み更に警戒を増した。
「ふっん!昔から生意気な小僧だったがやはり身の程を知らんかったか!」
和馬の死体を踏みつける安治に一人の護衛が歯軋りをして怒る。この子も昔から面倒を見てきたから和馬とは兄弟の様に育った。・・・いえ、そう育てて来た。
「かなりの使い手を連れて来たのね。・・・・・・でも良いのかしら?家の殿も強いのよ。勝てる見込みは有るのかしら?」
今は時間を稼ごう。この黒装束の男は危険過ぎる!・・・子供達が逃げるまでは時間を稼がないといけない。
「あの馬鹿殿が強い?少し出来るからと言って大きく出るものだな!」
安治が食いついたが黒装束の男は苛立っているようだ。何時までも時間稼ぎも出来ない様ね。
「クオ・・・こいつ等を相手に出来るかしら?」
『難しい事を言う。だが志乃達の為なら時間は稼ごう。』
意識をクオに切り替える為に目を閉じると身体の自由が利かなくなりクオに身体が渡る。
『前の様な力は無いが・・・覚悟は良いか人間共?』
だが、向こうも承知していたのか慌てる事無く結界を張って来た。ここまで読んでいた?・・・おかしい準備が良すぎる。考えていると黒装束の男が声を掛けて来た。
「・・・先生の事は調べて有りますよ。それに九尾は我々の目標の一つ、出してくれた事に感謝します。」
顔を隠した黒装束の男は顔を隠していた頭巾を取るとこちらに微笑みかけてくる。・・・・・・そうか、あなたならこれだけの事が出来ても不思議じゃない。いや、今まで気を許し過ぎていたくらいだろう。
『あの時の小僧か?・・・綾人とは友ではなかったようだな。』
髪が伸びゆらゆらと動き出し、九つの尾の様に動かしているクオが結界を確かめる。やはり京での結界に似ている様だがそれ以上に厄介だ。身体を取り戻せない。
「友人、いえ、親友でしょうね。・・・今となっては言い訳でしょうけど、俺には綾人が止められないと考えた。だから今回の行動に出たんですよ。」
『利用したとしか考え付かんがな。その為に色々と動いたのかな?』
そうか、この時の為に、為だけに今まで動いていた!
「始まりは暗殺でした。・・・ですが無理と気付いてからは色々と動きました。西田を利用し、上杉の使者を利用し、そして綾人の家臣を利用しました。」
「た、田中殿!どう言う事ですかな?」
『小物が黙っておれ!』
田中優斗、あなたに其れだけの事が出来るなんてね。失敗したわね。
「風魔を配下に加えてからは大分動きやすかった。先生は多くの忍者を持っている様でしたから上杉と西田に目を向けさせてその隙に・・・後は言わなくてもあなたにはわかるでしょう?」
『ぺらぺらと喋りよって、良いのか?我等に其処まで話しておいて我等が生き残ればお前等は今度こそ終わりぞ。』
「・・・この城の炎は特別です。立花先輩が『爆炎の書』を覚えましてね、だから逃げられないんですよ。」
『これは目標を燃やす炎であろう?』
可笑しいのか田中が笑い出す。
「だからこの城から逃げ出す者を燃やすんですよ!」
『な!』
護衛達も慌てだす!そんな事が出来るのか、それ以上に先程逃がそうとした圭吾は!
『・・・これだけの魔法はそうは続かん!』
「普通ならな。・・・忘れてませんか?井上の事を、彼女は桐原に何故大事にされていたのか考えなかったのですか?答えは簡単ですよ。」
まさか魔法を使う時に補助が出来た?確かに其れならあの桐原が大事にしそうだ。
『逃げ出す者を全てか・・・お前等ここから生きて帰れると思うなよ!!!』
九つの尾の様に動かされた髪で攻撃を開始するクオ、だけど結界の効果か田中まで攻撃が届かない。
「無駄です。綾人を救うにはもうこれしかない。いや、俺の目的を達成する為ですかね。その為に綾人は邪魔なんです。」
『貴様は殺す!必ずだ!我の宝に手を出した事を必ず後悔させてやる!!!』
暴れるクオを冷めた目で見ながら新たに現れた風魔の忍者から田中は報告を受ける。
「・・・そうか見つかったか。無理はさせるなよ。綾人は強いからな。」
・・・最悪だ!このままでは碌に反撃できないまま全てが終わる。綾人様も躊躇っている内に斬り捨てられてもおかしくない。移動を開始する田中を見る事しか出来ない。護衛も風魔の忍者に止められて追えない。
「母様!!!」
その時とても聞きたかった声が近付くと共に見たくない光景が想像された。
『志乃来るでない!!!』
全ての黒幕は一時、浜野夫婦と考えていたんですけど小物過ぎるから止めました。・・・酔って子供を殴る大人がラスボスとか無いですよね?




