嫌な奴にも大事な人が居るんだよね。
ああ・・・ここまで書き上げるのにこんなに苦労するなんて、
こんな駄文ですが楽しんでくれている方が居る事に感謝しています!
其れは夜も更けてきた時の事だった。俺は志乃との約束を守り剣を教えて実際に俺の刀を見せていた。普段は使わない刀を倉庫から持ち出したのが間違いの始まりだった。
「これが父上の刀ですか?何時ものとは違います。」
実戦向きで丈夫だが少し装飾を施された刀を抜くと刃は淡く青く光っている。・・・・・・そんな刀を真剣に見ている志乃に苦笑いしつつしまう。
稽古が終わった後に見せる約束をしていたから今は俺の部屋で向かい合って座っている。二人の間に刀を置くと話をはじめた。
「普段使う刀は其処にある。こいつは強力過ぎてな・・・・・・扱いが難しいんだ。」
「父上でも難しいのですか!」
強力な武器が有れば勝てると勘違いしていた時期に作り出した刀だ。簡単に鉄を切り裂くが、そんな刀で自分を傷つけたり、奪われでもしたら大変だったから今迄使わなかった。いや、使えなかった。
「手入れすら必要ない刀では有るけどな。欠けない、折れない、錆びない。正直こいつ自体に気が込められているから振るだけで人を殺せる。」
「母様に聞いた事が有ります!魔剣ですよね!」
・・・・・・確かに魔剣だな。素人が使うと自分まで殺してしまうかもしれない魔剣だがな。
「この一年色々と教えてきたが、志乃は天才だな。俺すら越えるかもしれない。・・・・・・何時かこの刀をやろう。」
「本当ですか!」
「ああ、どんな刀でも斬れない物が無くなったらな。」
「・・・・・・父上、其れでは意味が有りません。斬れないから強い武器を持つのでしょう?」
「そうかもな。でもな、強力な武器ほど使いこなさないと意味が無い。・・・・・・俺は何時まで経っても使いこなせないままだ。」
そう、何時まで経っても能力を使いこなせずに失敗してきた。
自分を、誰かを傷つけて来た。この刀と一緒だろう。強力な能力を使いこなせずに使わない様にするしかない。
「皆が言っていました。父上は最強だと!私達の自慢なのですから自信を持ってください!」
最強か、負けた事が無いからな。確かに最強だろう。
「志乃にまで怒られる日が来るとわな。だけどな、俺は弱い。これは事実だし認めている。」
「違います!私達の父上は弱く有りません!強くて優しいんです!」
なんだかむず痒いな。
「何時かはわかる時が来る。だから志乃にはこの刀を使いこなして欲しい。お前はクオの力も継いでいるからその力も使いこなすんだ。」
そう言って志乃の頭を撫でておいた。目を細めて喜んでいる仕草はクオに似ている。
「でも最初から使えばもっと強くなるはずです。だから今下さい!」
コンッ!
俺は軽く叩いて苦笑いをする。
「其れだと駄目なんだよ。大体、剣術なんか学んでもこの刀なんか使わないぞ?良くて精神を鍛える事が目的みたいなもんなんだ。」
振るのではなく斬る事が出来る様になればこの刀を持つ事に意味が有る。今ならそう思える。・・・・・・いや、そう思える様になった。
「明はどうするのですか?」
「刀の事ならその時に探してやるし、剣術の事なら多少は教えるが、志乃ほど真剣には教えないな。必要が無いしな。其れよりもこれからは文官としての能力が求められてくるんだから、そっちが最優先だ。」
言いながら倉庫に刀を仕舞いにいくと嫌な気配が近付いてくる気配がした。・・・・・・多いな、其れにこの魔法が放たれる前の独特な感じがヤバイ気がする。
「ち、父上?なんだか変な感じがします。」
この不穏な気配を志乃も感じているようだ。倉庫にある軽装を探るとすぐに用意をする。
「誰かいるか?」
二人しかいない部屋に数名の忍者が膝を着いて傍に現れた。
「・・・何者かが近付いております。殿にはこの場を、」
「其れでは不味いな。・・・・・・すぐに全員を避難させろ!其れか、な!!!」
部屋に何時の間にか火に囲まれていた。だがおかしい、こんな火の付き方が有るものか。襖に燃え広がる様にどんどんと広がるがまるで燃えていない。だが幻でもないだろう、確かに燃えている・・・これは何時だったか無くなった書物に書いてあった上級の魔法の一つだろう。
「斉藤の敵討ちか?・・・・・・立花しか思い付かないがこの忍び込んできた人数は説明できない。其れなら浜野辺りが怪しいが、」
志乃を忍者が抱えるとすぐに移動を開始した。階段を使うのも面倒だからそのまま外に出て城から飛び降りた。すると聞こえるのは悲鳴に怒号とまるで城攻めの様だな。・・・・・・いや、城攻めか。
「これはこれは、秋山綾人様がこんな所に居られるとは!いやはやこれで私は出世できそうだ。」
声のする方を向けば鎧を着た者達が俺の家臣を斬り殺したのか返り血を浴びて笑っていた。知らない奴だな・・・鎧も統一性が無く豪華だ。これは大分不味いかな?どこぞの大名も絡んでいる様だ。
「時間が無いからな、貴様等はここで終わりだ。」
敵を倒しながら逃げ出す者を助けながら進む中で人の焼ける臭いがするのに気が付いた。急いで確認しに行くと俺の家族では無いが数名が其処で酷い火傷をしていた。俺の家族狙いでは無い?
「どうした?」
「と、殿、出ようとした者は燃えてしまう様で・・・このままでは出る事が出来ないのですが敵は数が増えている様で何時までも持ち堪える事は、」
家臣の様子を見れば何度か戦ったのだろう武器も欠け、身体は傷だらけだ。
「殿!奥方はご無事です!」
集まる皆を逃がす為に方法を考えるが、この手の魔法は継続するのが至難の業の筈だが先程から火の勢いは衰えていない。無理やりにでも突破すれば火達磨確定だしな。
「これはどう言う事ですか!いったい誰が!」
「・・・落ち着け、其れと逃げる事を考えろ。」
近付いてくる嫁さんを落ち着かせると刀を抜いて近付いて来る気配に備える。・・・多過ぎるがこれ程の敵を招き入れた奴が何処に居るかも気になる。
嫁さんは泣いている産まれて間もない我が子を抱いて震えている。この子は女の子だから生き残る可能性も高いだろう。男子なら死に物狂いで探し出して殺されかねないしな。
「・・・・・・志乃、今から見せてやるのは俺の剣術の全てだ。見ておくといい。」
正眼に構えて刀に気を流し身体を気で強化する。纏めた力をただ斬りたい物だけを斬る為だけに振る。其れだけで炎に包まれた城壁や城門は吹き飛ぶと共に炎もそのまま吹き飛んでいく。
外に居た敵兵は目を丸くして此方を見ている。数はそこそこ、少数精鋭で攻め込んで来たんだろうが・・・・・・甘いんだよ!
「さ、流石です父上!」
「覚えておけよ。ただ斬るだけの其れだけの事だ。・・・この刀はお前が持っていけ。」
そのまま家臣から槍を受け取ると動き出した敵兵に向かい皆を逃がす為に攻撃を開始した。吹き飛ばした城壁で数を減らしていた敵兵を片付けると皆を逃がす。
「急げよ!徳、お前はこのまま近くの城に行け。あそこなら信用できる者が居るから安心だ。」
「な、殿は一緒ではないのですか!あなたが生き残らなければ秋山家は終わりです!」
・・・・・・アリスがまだ逃げ出せていないんだ。俺には見捨てて行く事は出来ないんだよ。
「・・・すぐに後を追う。」
「嘘です!あなたは私よりもあの人が大事なのでしょう。産まれたこの子よりもあの人を・・・あの女を選ぶのですか!」
睨みつけてくる嫁さんは涙を流し子供を両腕で大事に抱きしめている。泣いている声に敵が集まると厄介だから急いで欲しいんだがな。
「皆を連れて行け。・・・お前の事も嫌いじゃなかった。いや、言い訳だな・・・好きだったし、愛しても居るが一番ではなかった。済まなかったな。」
「・・・知っていました。皆知っていました!だから皆があの女を大事にした!其れでも私は・・・」
護衛達に無理やりに嫁さんを連れて行かせ逃げて来る者や襲って来る敵兵を相手にしていると志乃だけが与えた刀を持って傍にいた。
しばらくすると圭吾と明に雪を抱えた者達が此方に近付いて来た。・・・圭吾は麗が一緒だった筈だが麗の姿は何処にも無かった。其れに家臣達の顔色が悪い上に言い難そうにしていれば言いたい事は大体わかってしまう。
「麗はもう・・・」
「・・・申し訳ございません!」
「そうか、子供等だけでも助かったのだ、良くやってくれたな。」
「其れからアリス様が殿を探しに行く途中で何者かと出くわしたようです。その場を動けずに居ると逃げていた女中が報告して来ました。」
「お母様が!」
その報告を聞いた志乃が今来た家臣達の来た道をアリス達の元に行こうと駆け出した!慌てて忍者が捕まえようとしたが駆け出した志乃の足の速さが勝ったのか追いつけない様だ。
「っ!こんな時に何をしている。アリスならクオが憑いているんだから大抵の事はどうにか、」
「殿、ですが女中の話では苦戦していたとの事で、「其れを早く報告しろ!!!」も、申し訳ありません!」
その報告に慌てて家臣達に指示を出し志乃の後を追う様に駆け出す。・・・クオが梃子摺る様な相手となると相当な使い手か魔物相手の専門の連中と言う事になる。クオの力を継いだ志乃にはどちらも荷が重い!
炎が埋め尽くす廊下を走ると悲鳴の数がへってきているのに気が付いた。これは敵が集まりだしたら手が付けられなくなるから急いでアリス達の元に行かなくては・・・
「おや、此方においででしたか。既に城門で目撃していたので逃げたものとばかり思っておりましたが・・・どうやら天は我等の味方らしい。」
誰も居ない廊下で声だけが聞こえその場で足を止め槍を構えた・・・刀にしておけば良かったかな。気配だけは感じるが数は一人の様だ。けど何だ?この感じはどこかで感じたような・・・
「お久し振りですな。前は上杉の使者としてお会いしましたが・・・ああ、この顔でしたかね?もう何人もの顔と声を持って居るので忘れてしまいそうなんですよ。」
目の前に現れた忍者は顔をさらしてニヤニヤと笑っていた。・・・そうか、俺は謀られていたのか、だとすると相手が想像できない。それだけ手強い奴が俺の知らない間にここまで・・・
「口の軽い忍者だな。ついでにお前のご主人の事を喋ったらどうだ?」
「流石に其処までは・・・と、言いたかったのですがあなたに勝つのは私では無理でしょうからお教えしましょう。・・・田中優斗様が今の我等の唯一の主でございます。」
な!・・・動揺を見せない様に構えはそのままだが槍の穂先は微かに動いた。其れを確認した忍者は嬉しそうに微笑んでいた。
「これで私の役目は果たしたも同じ・・・さあ、お相手をお願いいたします。この時の為だけにご息女と甲賀者達は通して差し上げたのですから!」
飛び掛る忍者を槍で裁くとその場を後ろに飛び退く、その後すぐにその場に投擲されたクナイや手裏剣に目を向けた瞬間に相手は俺の後ろを取っていた。・・・ありきたりなんだよ!
その行動に合わせて槍の穂先を最小の動きで後ろに居た忍者に向けて突くと手応えを感じた。
「お見事、です、な。・・・だが、私の役目は果たしまし・・・」
「ちっ!」
急いで槍を手放して忍者から離れて走り出す。その時にクナイを二つ拾って置いたがこの武器では心許ない。・・・廊下を曲がると爆発音が響いた。最初からこれが目的だったのか・・・
俺を動揺させる事と手傷を負わす事が、二つ目は武器を奪ったんだから其れで良かったのだろう。
「最初から特攻を仕掛けて来るなら此方も打つ手が有ったんだが・・・ついでにイラつかせたんだから流石だよ。」
愚痴を溢しながら進むとご丁寧に武器の類は回収されていた。あいつはここまで読んで動いていたのか?偶然を装ってここまでする奴を抱えていたなんてな。
「優斗・・・お前もこの世界に大分毒されたな。」
誰に言うでもなく呟いた言葉に帰って来たのはクオの叫び声だった。
『志乃来るでない!!!』
次話で本編を完結にする予定です。その後に蛇足として一話を書いたら終了かな?
主人公の成長とかヘタレ具合の感想を貰って読み返してみたら自分でもなんてヘタレなんだこいつは!
と、思ってしまいました(笑)
元々考えていた話では5人で協力して魔王役の先生と其れに操られる織田信長を相手にチートで立ち向かう!とか、
優斗と共に木下藤吉朗に取り入った斉藤先輩達と柴田家に仕えて迎え撃つ!
こんな話だったのに・・・難しかったから辞めて綾人を当主にしたらこんな話になってしまう。
何なのこのヘタレ!作者は好きなんですけどね(笑)チートも使いこなせないし、子供だし・・・そんな奴が召喚なり転生したら?
こんな事を考えて書いています!




