プロローグ
ざわめきが、静かに消えていく。
広いホールに整列した隊員達。
幹部、来賓。
全員の視線が、一点に集まっていた。
壇上、黒の礼装。
ホールのライトで輝く銀色の髪。
神代蒼真。
背筋を真っ直ぐに立っている。
名前が呼ばれると形式通りの拍手が起こる。
音が遠く感じた。
ーよくもまぁ、こんな所まで来たもんだ。
演台には原稿。
それを見る必要はなかった。
視線を真っ直ぐ前だけに向けた。
息を吸うと胸が、少しだけ痛む。
だけど顔には出さない。
「第8代 黎明総統、神代蒼真です」
低い声がマイク越しに静かに通ると空気が張りつめ誰も動かない。
「難しい話はしない。ただ、一つだけ」
視線が、全員をなぞる。
第一特務遊撃隊、第二特務遊撃隊
一般隊列
医療スタッフ列
後方…家族席
天音と橘に抱かれる蒼志と悠真
椅子にこしかける麗華の腕の中で眠る華凛
麗華の隣でこちらを見る澪
腕組みをして仁王立ちするいつもの鷹宮
そして、壇上脇に控える蓮。
ー俺の帰る場所。
「全員、帰す」
マイクから音が落ちる。
誰も、息をしてないみたいに静かだ。
蒼真は真っ直ぐ前を見据えたまま動かず続ける。
「それが黎明だ」
蒼真が一礼すると一拍遅れて拍手が起きる。
最初は小さく、やがて、大きく。
波みたいに広がっていく。
真っ直ぐに進むべき先を見据えて、その全てを背負ったまま壇を降りた。
蓮と共に脇を通り抜けると幹部の視線が刺さる。
それぞれに温度が違う視線だ。
歓迎、警戒、無関心。
全部、混ざっている。
そんなもの、今は気にしない。
通り過ぎるだけだ。
家族席に近づくと蒼志と悠真が走ってやってくる。
「パパー!かっこよかった!」
2人は満面の笑みを浮かべていた。
2人を蒼真は抱き上げた。
華凛はまだ麗華の腕の中で幸せそうに寝息をたてている。
まだ名もなき怪物達第4部ー神代蒼真ー
ーその男が立つとき、時代は変わる。




