102『義経と三人の旅になる』
くノ一その一今のうち 閑話休題編
102『義経と三人の旅になる』 そのいち
『僕ね、ここで八百年経ってしまって、ちょっとエネルギー不足なんだ』
「あ、はあ……」
『それで、西国まで戻ってエネルギーの補充をしたいんだけどね。勾玉さんと同じで、自分では動けないんだ。それで、ついでに連れて行ってもらうと助かるんだけど』
義経にしては言葉が軽いし、今風だし……ちょっと怪しい。
「なんかぁ……大河ドラマのロケの休憩中にナンパしてるアイドルタレントみたい」
ああ、それも途中で不祥事起こして降板される感じの……。
『白幡神社に住んでるからね、けっこう女の子の参詣客も多くてさ、ま、こんな感じ……的な(^^;)。で、勾玉さんと同じで、地面に足の着いた移動でないと西国まで持たなくて、それで、天照さんが——くノ一の子たちが来るからお願いしてごらん——って(^〇^;)』
「あの、どうして天照さんが?」「うん、天照大神いうたら伊勢神宮とちゃうのん?」
『ああ、天照さんは、日本各地で祀られてるんだよ。うち以外にも、あちこちで祀られてるよ』
「……あぁ、ほんまや」
素早くググってため息の相棒。
『その勾玉に同乗させてもらうから、面倒はかけないよ』
「えぇ、同乗するのぉ!?」
『うん、勾玉そのものは依り代、乗り物だからね。中の勾玉さんも「かまわない」って言ってるよ』
「「うそ?」」
『嫌だったら、熱くなって手で持てなくなってしまうよ』
「ええ?」
胸に手を当てると、ほんのりと暖かくて——かまわない——という穏やかな感じ。
「念のため、お祖母ちゃんに確認、いいよね?」
『あ、どうぞどうぞ(^▽^)』
で、お祖母ちゃんに電話すると、あっさりOKで、メンバーが増えてしまった。
でも、勾玉は紐を通して胸にぶら下がってるわけで、義経が居ると思うと、ちょっと抵抗。
でも、忍者だからね、文句は言わない。
「ほんなら行こか!」
屈託なく百花が宣言して西に進む。
おおむね旧東海道を歩く。茅ヶ崎南高校の制服は小田原あたりまでなら怪しまれないだろう。
『平塚を過ぎたら海沿いを行くといいよ』
「なんでやのん?」
『高麗山とか、山が海沿いまで迫ってるから坂道が多くなる。海沿いの方が楽に歩ける』
義経のアドバイスで、茅ケ崎の駅から南西に歩き、鉄砲道という物騒な名前の道に出る。なんでも、幕末に鉄砲の練習場への道を付けた名残だそうな。真っすぐな道だし、歩道付きの二車線だし、地元の高校生が歩いていても自然だし。
「ねえ、ググったら、近くに弁慶塚とかもあるじゃん。弁慶さんをお供にしたら、あたしたちよりも頼りになるんじゃないの?」
『弁慶は、僕を護って立ち往生しちゃったからね』
「死んだいうことでしょ、義経くんといっしょちゃうのん?」
『立ち往生っていうのは、立ったまま死んでることなんだぜ。体に何十本も矢を受けてさ。めちゃくちゃエネルギーが居るんだよ、あの死に方は。それまでも、いっぱい無理させてきたからね。弁慶は、もう弁慶塚からは動けないんだ』
「え、それって……」
『だいじょうぶ、僕が力を取り戻して戻ったら、弁慶にも力を分けてやる。そうなったら、二対二』
「二対二ぃ?」
「それが、どないや言うのん?」
『Wデートができる!』
そう宣言すると、義経は茅ヶ崎南高校の男子生徒になった!
「え、なんで実体化してんのよ!」
『あ、なんか、勢い!?』
「「もお!」」
『いや、それだけ二人のエネルギーが強いんだよ。まあ、いっしょに歩くだけだし(^^;)』
下手に言い争っても目立つので、なんだか部活帰りという顔で西に向かう。部活帰りって時間じゃないんだけど、きちんと制服着て普通に歩いていると怪しまられることはない。制服の威力は絶大だ。
でも、制服姿の外食は憚られ、コンビニでお弁当を買って、海の見える公園で昼ご飯。
ちょっとのんびりして、その日は小田原のお寺に泊めてもらった。
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟




