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52.

日曜・月曜と2回更新できなかったので、いつもより長めです。

お時間ある時にどうぞ。

商業地区と聞いたとき、なんとなく前世で言う所の市場のようなものを想像していた。

より厳密に言うと、ヨーロッパのマルシェのようなものだ。

大きな広場に簡単な造りの小さいお店がたくさん集まったような、買い物のためだけの場所。

けれども実際のところは住宅街の延長線で、店舗兼住居みたいな建物がいくつもひしめく、どちらかと言うと商店街のような感じの場所だった。

勿論、商店街なんて言っても前世の活気と生活感に満ちた庶民的なそれではなくて、建物一つに一つのお店、そしてその建物がいずれも立派で高級感に溢れている。

もうちょっと雑多で気安い雰囲気を想像していたのに、実際はちょっと気合い入れておしゃれして出かけるような場所らしい。

建物の高さはバラバラ、前庭のようなスペースがあったり、普通の住居にしか見えないのに看板が下がっていたり、はたまた大きなショーウィンドーがとられてお店らしいお店だったり。

それぞれ家主の好みを反映した建物であるはずなのに、それでも妙に統一感が感じられる建物が道の両側に立ち並び、そのすぐ前は歩道になっている。

そして、車道の一番建物側はどうやら馬車を一時的に停めておく場所らしく、ちらほらと停車中の馬車が見える。

道の一番真ん中が車両が通行するスペースで、反対車線、反対側の駐停車場、歩道、商店という左右対称の造りになっていた。

繁華な地区なのでさすがに通行量が多いかと思いきや、意外にも歩行者も道行く馬車や騎馬もそう多くはない。


「もっとたくさん人がいるんだと思ってたわ・・・」


車窓から店先に下がった個性的で美しい看板たちを見るともなく見ながらつぶやくと、ミケーラが答えをくれる。


「その・・・あの、普通の貴族のおうちなら、ご令嬢自ら出向かず欲しい品物を扱うお店の人におうちまで来てもらいます、から」


「成程。噂に聞く外商というやつね」


外商というと百貨店とかにいて、お金持ちの家に出向いて商談する人たちで、前世の私には縁もゆかりもない人たちだった。

それが今や、こうしてお買い物に出てくるほうが変人みたいなこの世界では、そういう人たちのお世話になるのが当たり前らしい。


「じゃあ歩いてお買い物をしてる人たちって・・・主人のお使いに来た使用人とかそういう人たち?」


道行く人々は千差万別で、従僕やメイドのお仕着せ姿もあれば私の内なる庶民の目で見てちょっといいところのお嬢さん、という感じのお付きの者を従えた少女の姿なんかも見える。


「内壁の外から買い物に来るから、一概には―――言えない」


商家のお嬢さん風の少女の一団に目をやりつつルークがそう言って、壁はあれど行き来は自由らしいことが知れる。

・・・ほう、ナルホド?

じゃあちょっとばかりいいとこのお嬢さん風の服であれば、貴族とばれずに行き来できるわけね、ここからなら。


「ご主人?ええと、なんか悪い顔してますけど大丈夫ですか?」


私の思考を読み取ったかのように膝の上からがーちゃんがこちらを見上げてくるので、内心の動揺はおくびにも出さず、わざとにやりと悪い笑みを浮かべて誤魔化しておく。


「あら、あなたのご主人さまは生まれつき悪人顔なのよ?顔が悪いのは初期設定だわ」


「ミザリー様は!!悪い顔じゃないです!!美人です!!!」


悪役なので悪役顔だという周知の事実を認めただけなのに、斜め前のミケーラがこぶしを握り締めて思いのほか強く反論してきてちょっとびっくりする。

あまりの語気の強さに、なにか言いかけたがーちゃんも口を開いたまま何も言えずにぽかんとしているくらいだ。

しかしまぁ、ちょっとの間にますます愛が重くなった気がするのは気のせいかしらね。


「・・・悪人顔、とは思わない。女の子が、自分にそんなこと言っちゃ駄目」


すぐ横のルークにも気を遣わせてしまったようで、彼の左手が伸びてきて頭をぽんぽんされる。

純然たる事実を客観的に認めただけなのに、こどもがやると事実だけに気の毒がられてしまうようだ。

でもねぇ、ちゃんと自分を客観視できなきゃ、大人になった時自惚れが強いミザリーみたいになっちゃうのよ?


「あら、二人ともありがとう。・・・まぁでも、ちょっとだけ悪いことを考えてたから、がーちゃんの言う通り顔に出ていたかもしれないわね。ここからなら壁の向こうに行けるかも、って」


がーちゃんがいたたまれない顔をしているので、軽くフォローを入れておく。

途端今度はミケーラが心配そうな視線を寄越してきたため、もう一回フォローを入れる羽目になったけど。


「大丈夫よ。勝手に壁の向こうに行ったりしないから。行くときはミケーラに護衛をお願いするからね」


そう言っておけばミケーラも安心したようで、何度もこくこくと頷きが返ってきた。

どうやら護衛は引き受けてくれるらしい。でもこの分だと一人で出歩くのは無理そうね。


「・・・変なところ、よく似てる。ベルナルド様に。―――そろそろ壁だけど、見たい店はあった?」


前半は苦笑交じりに、後半はからりと切り替えてルークが聞いてくるけれど、待って、聞き捨てならないわ。

父さんと私がどう似てるって?

・・・脱走癖?脱走癖があると思われた?


「ああ、ええと、そうね・・・折角お小遣いをもらったから、お留守番のみんなにお土産でも買って帰りましょうか。んー、お茶を買うならお茶請け、よね。でもお茶菓子はいつも美味しいのを作ってもらえるから・・・焼き菓子以外がいいわね」


ルークを問い詰めたいのをぐっと堪え、ひとまず折角のお出かけなのでどこに寄り道するかに集中することにする。

領地でお留守番のみんなと、今日は来られなかったアルマにお土産。

お茶は買って帰るとして、それのお供にちょっとしたお菓子・・・お土産の箱菓子を小分けするみたいな、もらう側がそんなに気を遣わず済んでみんなに平等に行き渡るものがいいわね。

でも下手に既成のお菓子なんか買って帰ったら厨房スタッフの顰蹙を買うかもしれないから、うちじゃ作らないようなものがいい。


「えと、えと、キャンディ、とかですか?」


「チョコレート、ってやつはどうです?聞くところによると、すごく美味しいらしいですけど」


「ドライフルーツ、とか。・・・保存ができて便利」


三人から三つの案が出てきて、とりあえずミケーラが可愛いのでいずれ経済力がついたら好きなだけキャンディでもなんでも買ってあげたいと思いました。

前世でコツコツ貯めた貯金を持って転生してきてこっちの通貨に両替さえできていれば・・・!

お金を持ったままあの世へは行けない、って、至言よね。

あとチョコレートあるんだ。まだこっちじゃ食べたことないけど、もしかしたら王城のパーティあたりで出てたかもしれないわね。食べ物の選択権を男子二人に委ねるなんて、愚かなことをしたわ。

でも、選ぶとしたら。


「・・・キャンディも美味しいわよね。お茶にはちょっと合わないかもだけど、次に父さんとお出かけする時までに美味しいお店を探してもらいましょう。あとチョコレートは私もまだ食べた事ないわ。でも多分高級品でしょうから、みんなに配ると気を遣わせてしまうわね。正直私も食べたいから帰ったらアルマにお願いして厨房で作ってもらうわ。楽しみにしてて。―――以上の理由でドライフルーツに決定します。異論があれば聞くわ。私は民主主義なので」


選考結果に理由も添えるとミケーラもがーちゃんも特に不満に思わなかったらしく、話がまとまったのを確認したルークが首から下げていた水晶のようなものを上着の下から引っ張り出してくる。

それを手のひらで軽く握ると、ただの水晶に見えたものがふわ、と光を放つ。


「ドライフルーツの美味しいお店、知ってたら連れて行ってほしい」


『ドライフルーツ、ですね。一軒心当たりがありますので、お連れ致しましょう』


水晶からグレンデールさんの返事が来て、思わず正面の窓を見ると上半身だけでこちらを振り返った彼が笑みを寄越すのが見えた。

よく見ると彼の耳元でわずかに何かが光っており、どうやら同じような水晶を耳飾りにしたものを着けているらしい。

双方向性の通信機能がある水晶。例のヤツだわ。魔法とかいう、例の。

確かに通常客車の前部分にいる御者と違って動力源も兼ねるケンタウロスは馬の位置にいるわけだから、行きたい場所とかを伝える時どうやってコンタクトを取るのかなぁって思わないでもなかったのよね。

答えは魔法。あー、はいはい、便利便利。


前方にはグレンデールさん越しに灰色の石壁が見えてきており、想像よりもずっと立派なそれに到達する前に馬車は脇道へと逸れて行く。

高くそびえるそれは、防壁の名に相応しい。

砦を広げ、周辺から合流してきた人々を呑み込んで、大きくなる都。

それを守るための壁。

高い灰色の壁は石積みで、一番上は歩哨が見回りできるよう通路のようになっているようだ。

てっきりちょっとした石積みくらいかなぁって思ってたけど、本格的な防衛のための壁だわね。

曲がるときにちらりと見えた門には、一応門番らしき人たちが立っていた。

けれども重そうな扉は開けっ放しになっており、通行も一々止められたりはしていないようだった。

・・・行けそうね。


「さっきの通りは文具関係の店が集まってる・・・食品は少し行った先」


枝道に入っても相変わらず両脇はお店で、ショーウィンドーや錬鉄でできた美しい飾り看板など眺める私にルークが解説を入れてくれる。

扱う品物によって集中的にお店が並んでる、っていうのはいいわね。

例えばペンを買ったらついでに便箋みたいな紙モノも近所で買える、って事でしょ。

何でも扱う百貨店みたいな店がない以上、あちこちうろうろしなくていいのは効率が良くて好ましい。


「扱う品物によって店舗が固まってるのね。成程、分かりやすい。卸売りもする問屋街、って感じかしら」


「うん・・・領地でも街へ出ないのに・・・問屋街なんて、よく知ってたね」


「あら、出ないんじゃなくて出る機会がなかった、が正しいわ。私はいつだって観こ・・・もとい、領民たちの暮らしを見てみたいって思ってたもの。でも父さんも母さんも家にいなくて、誰からも外出のお許しが貰えなかったでしょ?だからおうちで大人しくしてただけ」


詭弁のような言い訳だけど、そういえばお嬢様お買い物ってどうしてたっけね?

誰か呼びつけてた?・・・んー、あんまりそんな覚えもないから、呼びつけるまでもなく充足していた、って事ね。

なんせお洋服に関しては屋敷内に無限増殖する部屋があるし、趣味らしい趣味もなかったし。


「帰ったら、領都も見に行けばいい。まだ先だけど・・・春の祭りがあって・・・きっと楽しい」


「春のパンま・・・でなくてお祭り?」


聞いたことのあるワードに一瞬記憶がバグったけど、春の祭りと言うともう・・・いや、やめときましょう。

パンならこっちにもあるから別に食べたくなっても困らないけど、あの柔らかいもちもちのパンっていうのはあんまりないのよねぇ・・・

こっちのは小麦の香りがすごく強くて美味しいのは美味しいんだけど、カリッとさせることを至上命題にしているとしか思えないようなパンしかなくて、柔らか食パンとかにはまだお目にかかったことがない。

うあー、柔らかい食パンで作った卵サンドが食べたくなってきたわ。

一旦忘れて春のパンまつ・・・でなくて春のお祭りの話題に集中しましょう。


「そう。長い冬が終わって春が来たら―――そのお祝いの祭り」


ああ、春分の日を祝う、って事かしら。

確かに領地があるのは北のほうで、晩秋どころか秋もたけなわという頃にはすでに雪が降り始めてたものね。

確かに冬は長いでしょう。

であれば春が来るのは待ち遠しいし、来たら嬉いでしょうね。


「すごく賑やかにやるんですよ。沢山食べ物の屋台が出て、みんなで歌ったり踊ったり―――俺はそれを横から・・・って言うか上から、って言うのか、ただ見てただけですけど、それでも賑やかで楽しそうでした」


「あの、えと、私もフェンネル様のご領地の春のお祭りは初めてで・・・あの、ミザリー様と一緒にお出かけしたい、です」


がーちゃんが今年だか去年だかその前だかのお祭りの様子を教えてくれて、今年うちの領地へやってきたミケーラもはにかみながらお出かけに誘ってくれるので、なんだかまだまだ先の話なのにがぜん楽しみになってきた。


「そうね、じゃあまたみんなでお出かけしましょうか。私もすごく楽しみになってきたわ」


連れてってくれる?と水を向けると、ルークが口元だけで笑って頷く。

二度目のお出かけ予定を確保できたところで、馬車の速度が落ちてやがて一軒のブラウンストーンでできた建物の前で停車した。

周囲と調和した茶色のレンガ造りのその建物には、お約束に違わず錬鉄の看板が下がっており、金属で作られた花と羽ばたきながらその密を吸うハチドリのような小型の鳥が蔦の装飾とともに美しい一枚の立体図で仕上げられていた。

でも正直看板だけではここが何の店なのか不明だわね。

ルークが馬車の扉を開けて降り、すぐにミケーラが続いて私もがーちゃんが定位置に戻るのを待ってからルークの手を借りて馬車から降りると、冷たい風に身震いをする。

馬車の中は暖房類はもちろんなかったけど、それでもやっぱり外よりは暖かかった。

建物にショーウィンドーの類はなく、左右の建物と同じ四角い三階建てで、道路に面していくつか取られた窓辺は花や小物で飾られている。


「こちらでお待ちしておりますので、どうぞごゆっくり」


路肩の停車スペースに停まった馬車の前方からグレンデールさんが声をかけてくれて、ルークが頷きを返すのに合わせて私もありがとう、と返事を返しておく。

走ってたから今は暖かいかもしれないけど、あんまりこの気温の中で待たせちゃ悪いわね。


ミケーラがさっと前に出てお店の扉を開けてくれるので、彼女にもお礼を言っていよいよこちらに来て初めてのお買い物だ。


木製のどっしりした設えの扉をくぐると、中は意外にも今が冬だという事を忘れてしまいそうな暖かな雰囲気で満ちていた。

入ってすぐ店舗になっており、長年大切に使われてきたのが分かる木製の床に、壁面は木製の商品棚が並ぶ。

温かい空気とともにふわりと果物の甘い匂いが出迎えてくれて、緑が多く飾られたお店の内装も相まってまるでここだけ春が来たみたいだ。

鉢植えの観葉植物はもちろんの事、天井から吊り下げられた鎖の先に錬鉄の籠が取り付けられ、そこに植木鉢が入っているらしく蔦のような植物が緑の枝を存分に伸ばしている。

それが邪魔にならない程度にいくつも下げられており、ちょっとした森かジャングルにでも迷い込んだような気分だ。

外観から想像したほど広くはない店舗で、一角に接客用らしいソファセットが置かれており、什器の類はあとは棚とカウンターがあるのみだ。

そして入ってすぐ正面にあるカウンターの内側から、この店の主人らしき若い女性が微笑みかけてきた。


「あら、いらっしゃいませ。どうぞ、お入りくださいな」


二十歳そこそこにしか見えない若い女店主は、たれ目がちな目元を笑みの形にさらに下げてにっこりと歓迎してくれ、彼女の髪の色がなんかちょっと見たことないようなピンクだったので一瞬固まった私の背をルークの手が押して店内へと促す。

染めたピンクって言うか、生まれてこの方この色なんだろうなぁ、という嘘くささがないピンクなんだけど、勿論天然でそんな髪の色をしている人なんていないところの記憶が優勢になっている私にはびっくりするなと言うほうが無理な話だ。

目の色は濃い黄色で、お店の内装も相まってなんだかお花をイメージさせる色の持ち主だった。


「そちらへどうぞ。本日は何を差し上げましょうか?」


ソファを指して私たちを誘導しつつ、女主人はすぐにカウンターから出て私たちのそばへとやってくる。

その頃には彼女にくぎ付けだった私もルークによってソファまで誘導されて、彼と二人勧められるがままに腰を下ろした。

ミケーラは私たちのコートを回収し、それを抱えたままソファの後ろに立って侍女としてだか護衛としてだかのお仕事に精を出し始める。

すぐ横の壁にコートをかけるフックのようなものがいくつかあったけれども、ミケーラにはそれを使う気はないらしい。


「ええと・・・ドライフルーツを頂けるかしら」


どうも勝手が分からないので何をどうしたものかと思ったけれども、とりあえずそう言うと女主人がまた目じりを下げてにっこりと微笑む。

私が知ってるお買い物って、自分で商品を見て回って気に入ったものをレジに持っていく方式だけど・・・どうやらここではお願いして見せてもらうみたいね。

とは言え商品棚は見やすくディスプレイされており、自分で見て回って興味のあるものがあれば店主に声をかける、という方法も取れそうだ。


「はい、どういったものがお好みかしら?―――種類が分からなければ、おすすめからお出ししますよ」


言葉に詰まった私の様子をきちんと見ていた店主が素早く助け船を出してくれるので、私はそれに頷きを返す。

こっちの果物の名前がよく分からない、というのもあるし、うっかり食べたいものを羅列してこっちにはなかったらそれはそれは大変なことになるでしょうし。

がーちゃんは完全に私の味方だし、ミケーラだけなら私への愛が重すぎるので、秘密にしてね、で済むでしょうけど、問題はルーク。


「畏まりました。ちょっとお待ちくださいね」


店主が三度にっこりと私たちに笑みを向け、くるりと反転してカウンターへと戻っていく。

そのあとを追うように私もソファから降りて、店主とは逆に戸口のほうから商品棚を見ることにした。

こつこつといい音を立てる木の床を踏み、窓辺に可愛らしく飾られた小物や観葉植物を見ながら反対側の壁際にある棚をまず拝見。

木製の棚は可愛らしい手のひらサイズから私では一抱えもありそうな大きめのサイズまで様々な瓶で埋め尽くされており、中身はどうやらジャムのようだった。

余さずきれいに裏ごししたようにとろりとしたジャムから、あえて果実をゴロゴロと残したタイプまでジャムと一口に言っても色々で、さらにそれが果物の種類だけある。

なかなかに壮観だわね。

奥から順に見ていくと、途中で瓶の色ががらりと変わる。

黄金色からライトな黄色、それから琥珀色。それまでのカラフルな果物たちの瓶とは打って変わって、急に黄色を中心とした色味で揃えられた棚に代わり、よく見ると手前のほうの黄色中心の色味はジャムではなくて蜂蜜の瓶のようだ。

これも産地や百花密なのか一つの種類の密なのかで厳密に仕分けされているらしく、なかなかに迷わされる物量を誇っている。

ソファと反対側の壁は一面に瓶詰めの商品棚で、戸口の横の棚にはお茶の道具が美しく並べてディスプレイされていた。

ティーカップとポットがセットになったものや、それぞれの単品。

こちらはそう種類がないけれど、お花かベリーの柄かで統一されているのが可愛らしい。


ドアを挟んで反対側の棚にはお茶が入った缶が陳列されていて、思わず手が伸びそうになるけれど我慢。

これから先生に頂いたあの美味しいお茶を扱うお店に連れてってもらえるのだから、ここでは当初の目的通りドライな果物のみを仕入れるべきだわ。


そのお茶の棚に背を向けるようにソファが置いてあって、私の動きを見るともなく見ていたルークと、じっと見守るように重めに見ていたミケーラと目が合う。


「うふふ、何か気になったものがあればお出ししますよ」


沢山のサンプルが載った木製のお盆を手にちょうどカウンターから出てきた女主人の言葉に、私も笑みを返しておく。

味見しながら品物を選ぶスタイルのお店みたいだわね。


ルークの隣へ戻ると、テーブルのそばに跪いた女主人が花びらを模した小さな白いお皿をテーブルに一つ一つ置いていき、とりどりの色をしたドライフルーツが載った花弁の形のお皿をまるでお花のように並べる可愛らしい見せ方に思わず笑顔になる。

白い花弁の上には、なんだか見た事あるようなヤツやなんだこれ何者だ、というようなヤツまでいろいろ載って来ており、色んな色の花弁の花がテーブルにいくつも咲く。

一緒に花柄のティーセットも用意されており、ハーブティーのようなにおいと色のお茶が可愛らしい淡い花柄のティーカップへと注がれる。

果物を味見して、お茶で口内をリセットして次の果物を味見できるようだけど、なんだかすごく贅沢なお買い物の仕方ね。


ルークがひょい、とアンズのような何かを摘まんで口に入れ、私はざっと見た感じイチゴと思われるものをまず摘まむ。

いきなり正体不明に行く勇気はなかった。

・・・むう、イチゴだわ。甘くておいしい。

あと見たことあるのはクランベリーらしきものと、さっきルークが食べてたアンズと思われるもの。それからブドウ。

イチゴがおいしかったのでもう一つ摘まんで後ろを振り返り、ミケーラを手招きして何一つ疑いもなく素直に身を寄せてきた彼女の唇に押し付ける。

突然の事にびっくりしたようだったけれど、手がコートでふさがってしまっている彼女はそれでも素直に口を開けて、耳まで真っ赤にしてもぐもぐイチゴを食べ始める。

うふふ、可愛い。


「こっちもおすすめですよ」


私たちの様子をにこにこ見守っていた店主が白い花びらの一つを手に取って、上に載っている半月型の黄色い何かを差し出してくる。

見た目で何か分からない謎の果物その一だわ。

けれど好意はありがたく受け取ることにして、一つ頷きを返してからお皿の上の黄色い何かを手に取る。

サイズから見るに、元の果物はリンゴくらいありそうだ。

それを櫛切りにして干している感じだろうか。

あら・・・これってもしや。


一口齧ってにおいから予想していた通りのものだったので、半分になったそれを今度は肩のがーちゃんへ差し出す。

肩で大人しくしていたがーちゃんは一瞬面くらったように差し出された果物と私とを視線で往復し、しばらくの逡巡。

丸まる一個は彼の口では持て余すでしょうけど、半分なら十分口の中に入るだろうという計算の元の行動だったけど、食べさしってやっぱちょっとよろしくなかったかしら?


一旦食べきって新しいのをあげようかと思った矢先、覚悟が決まったのかそっと嘴で挟んだので、まぁいっか、とあげてしまうことにする。

桃のドライフルーツって初めて食べたけど、意外にも美味しい。

ちゃんと桃の香りも味も残ってるし、びっくりするほど甘味がある。

見た目がすごく黄色いから、多分黄桃を干したものだろう。

・・・桃を干すとか。贅沢よね。

でもこの桃、フルーツティーにしたら絶対美味しいわ。

これからお誂え向きにお茶のお店にも行くから、お茶請けだけと言わずフルーツティー用のも一緒に頂いて行きましょうか。


その後も店主がどんどん色んな果物を味見させてくれて、結局私にもなじみのある果物を中心にそれなりの量を買い付けてしまった。

でもまぁ王都のお屋敷と領地の従業員たちに配ったらすぐハケるでしょう。・・・と、思うことにしときましょう。

品物は後で届けてくれるというので、移動しながら食べられる分だけ少量包んで貰って店を後にする。

戸口に立った女主人に見送られつつ、グレンデールさんに待たせてしまったお詫びを言ってまた馬車に乗り込み、今度はそう走らないうちにすぐにもう一軒の目的地へと到着する。

大通りと言うか、メインストリートにあったさっきのお店からあまり離れてはいないものの、通りを一本二本入ってかなり落ち着いた雰囲気の一帯にそのお店はあった。


こちらもさっきのお店と同じ建物一軒丸まるを使ったお店だったけれど、箱のような建て方が主流だったメインストリートのお店と打って変わって、表通りから一本入ったあたりのお店はそれぞれ小さなおうちのようになっていた。

先生御用達のそのお店は小さな前庭のある石灰岩みたいな白っぽいレンガ造りの一軒家で、青い屋根が白い壁に映えてとても美しい。

冬枯れの季節で寂しくなりがちな庭も、この時期にも花をつける植物をきちんと植えているらしく手入れされた冬の庭の風情だ。

低い緑の生垣と、内側に開かれた錬鉄の門の向こうは玄関まで石畳が敷かれており、庭の中を通って一軒家へと入っていくようになっている。

通りを入ったこの辺りは道が少し狭くなっており、馬車を止めるスペースがないようだった。

御者がいればすぐに動かせるから、とりあえず停めといていいのかしら。

運転手が乗ってれば交通整理のおじさんとかにとりあえず即時駐禁切符を切られたりはしない、という前世ルールはここでも適用されるの?


「裏手に馬車を停めるスペースがあります。そちらへ持っていきますので、お帰りの際はお声かけくださいね」


錬鉄の門の前でぴたりと馬車を停めてくれたグレンデールさんが私の疑問を読んだかのようにそう言って、お店と隣の建物との間を指す。

見ればそこに小さな路地があって、どうやらそこから裏にあるという駐車場へ入れるらしい。

なるほど。大通りは路駐してよくて、通りを入るとお店がそれぞれ駐車スペースを用意してる、って事ね。


門をくぐる前に馬車を引いていくグレンデールさんに手を振ると、彼からも挨拶が返ってくる。

それを見届けてからいよいよ先生御用達のティーショップへと、ミケーラが開けてくれたドアをくぐる。


今度私たちを出迎えてくれたのは、深呼吸したくなるほど素敵なお茶の香りだった。

何種類もの紅茶と思しき茶葉の香りで満たされた空間。

天井は梁が見える造りになっており、そこからいくつか下がったランプがろうそくのような温かい光で店内を満たす。

さっきのお店みたいに入った正面にカウンターがあって、その向こうにいたこれまた若い青年がいらっしゃい、と歓迎の笑みとともに声をかけてくる。

どう見ても二十歳そこそこくらいの若い青年で、先ほどの女店主同様前世ではお目にかかったことがないような紺色みたいな不思議な色の髪をしている。

目はさらに黒みの強い青で、さっきの店主もそうだったけど、あんまりお貴族様はお買い物に出歩かないようなので丁寧でありつつも親しみのこもった接客態度だ。


先生、確かここの店主とお友達だっておっしゃってたけど、随分若いわね。

てっきり先生くらいの年代の方だと思っていたのでちょっと驚いたけれど、お店の内装が素敵すぎてそんな驚きはすぐに消える。

こちらも床は木製で、壁は外壁と同じ白いレンガ。

正面のカウンターの奥は天井まである木製の棚が作りつけられ、各段にお茶の缶がずらりと並んでいる。

正面カウンター下も棚になっており、そこに日持ちがしそうな焼き菓子やナッツのようなお茶請けたちが揃う。

左右の壁はそれぞれ窓が大きくとられ、一軒家を囲むように造成されたお庭がよく見えた。

そして入ってすぐ左右の棚にはさすがと言いたくなるほどの美しい茶器の類がそれぞれ見栄えがするようディスプレイされている。

先ほどのお店は扱うものが果実だっただけにお花と果実というキーワードに沿ったコレクションだったけど、こちらは色々な趣の茶器がとりどりに揃えられており、お茶とお茶道具全般を愛する身としてはこのお店に漂うお茶の香りと戸口の左右の棚だけで絶対に間違いがないお店だ、と分かる。


こちらのお店は先ほどのお店と違って庭付き一戸建てともでも言うべき大きさで、そのため居心地のよさそうなソファセットが左右の庭に面した窓のそばに設置されており、ここでもやっぱり味見をしつつゆっくりと品物を吟味することができるようだ。


「そちらへどうぞ」


カウンターの中から店主に身振りで示された右手側のソファに腰を落ち着けると、店内を改めて見回す。

ここでもやっぱりミケーラがコートを預かってくれ、彼女は仕事に徹するようで座ったのは私とルークだけだった。

左手にカウンター、後ろに商品棚、それから正面に扉が一つあって、開いているそこから上の階へ上がる階段が見える。

建物の大きさから考えるに、奥にもいくつか部屋があるようだ。

大きな商談をするスペースか、在庫を置いてある倉庫のようなスペースか。

あるいは居住用のスペースかもしれない。


見るともなしに奥の部屋を見ていると、そこから一人のメイド服姿の女性が姿を現した。

年のころは店主の青年と同じくらい、水色みたいな淡い色の髪に同系色の目の美人で、きちんと手入れされて清潔感のあるお仕着せをぴしっと着こなしている。


「いらっしゃいませ」


薄く笑って丁寧な礼をくれる彼女に黙礼を返すと、木製の大きなお盆を持った店主がカウンターから出てきてお茶の準備を始める。

メイド姿の女性はさっと私たちの後ろのミケーラのところへ行くと、彼女が手にした私たちのコートを受け取って丁寧に壁にあるコート掛けに掛けてくれ、ミケーラがぴょこ、と頭を下げてお礼をしている。

その間にお茶が十分に蒸れたようで、時間を計っていたらしい店主が慣れて洗練された手つきでテーブルに茶器を準備し、やや小ぶりで美しい乳白色のティーカップに琥珀色の液体を注ぐ。

ティーポットからカップへと注がれたお茶が白磁を琥珀色に染めると同時に湯気が上がり、ふわりと香りが広がる。


「イニダ産の冬摘みです。他にもお好みのものがあればご用意しますので、遠慮なくおっしゃってくださいね」


店主に勧められるまま、お礼を言ってから最初の一杯に口をつける。

とりあえずで出してくるということは、今の時期のこの店のおすすめ、ということだろう。

こっちのお茶の産地のことは全然分からないけれど、一口含んだお茶は冬摘みらしくどっしりとした風格のあるお茶だった。

そんなに華やかではないものの、ほっとするような落ち着きのある香りと極端な個性は薄いもののやや濃いめの味で、これなら主張が強すぎないのでフルーツティーにするのに相性がいいかもしれない。


「はぁ・・・おいしい」


思わず「この一杯のために生きてる」と続けそうになって、おじさん臭さが留まるところを知らなかったので慌てて停止。

私はお酒は飲めないけれど、ビール一杯で「この一杯のために~」とやるおじさんたちの気持ちはよく分かる。

いいお茶を飲むと幸せな気分になるのよねぇ。

それこそ、”一杯のお茶が飲めれば、世界なんて滅びたって、それでいいのさ”なんて言ってしまうロシアの文豪にだって、完全に同意したくなる。

ドストエフスキーとサシでお茶を飲めたら、きっと面白いでしょうね。


「お気に召したようで何より。産地も時期も、品揃えには自信があります。次は何をご用意しましょうか?」


「そうねぇ・・・産地なんかはあまり詳しくないの。バーラウル先生に紹介いただいて今日こちらにお邪魔したんだけれど、一杯目から文句なしだから、ご店主のおススメを順番に淹れていただけたら嬉しいわ」


先生の名前を出すと、店主の青年がおや、と目を見開く。


「ドレイクのお知り合いでしたか。・・・先生、という事は、じゃあ君があの・・・いや、失礼」


「ええ、ミザリーと申します。先生にはお世話になっていて、私のお誕生日にこちらのお茶をくださったの。それ以来、いつかお邪魔したいと思っていました。ご店主様は先生のお友達だと伺っているので、どうぞ気安くミザリーとお呼びください」


すぐに私が公爵令嬢だと気づいたらしい青年にみなまで言わせず、先に身分は関係ない、と言外に含ませて告げると青年は保護者にしか見えないルークに確認をするように視線をやって、ルークが浅く頷くと応えるように一つ頷いて笑みを浮かべる。

どうやら飲み込んで貰えたようだ。

たまにしかできない外出なので、できたら堅苦しいのは避けたい。

特にこのお店は常連になりそうな予感しかないので、店主とはできれば気安い間柄になりたいし、そうなると身分なんて邪魔なだけだ。


「話はよく聞いていますよ。一度会ってみたいと思ってたんだ・・・ドレイクがあなたの事を話すとき、いつも随分楽しそうでね。―――ドレイクに勧めたのは確かイニダのラングール地方だったな・・・今年は当たり年だったから、今おススメできてあれに匹敵するとなると・・・」


どうやら先生がこちらに足を運ばれた際、お茶の合間に私の事を話題にされていたようで、店主の私を見る目が一気に親し気になる。

先生、どんな話をされたのかしらね。

・・・正直、ろくな生徒じゃないと思うんだけどね。


店主が私が頂いたお茶に検討をつけて、今ある在庫を片端から思い浮かべて検討するように腕を組んで考え込み始め、彼がどんなお茶を勧めてくれるのかがぜん楽しみになってきた。

でもその前に、一つお願いしておくことがある。


「あ、そうだわ。その前に、今頂いたお茶をもう一杯お願いしても構いません?・・・私に、でなくて、待ってくれているうちの御者に頂きたいのだけれど」


「ええ、勿論。ミスティ、お願いするよ」


ポットを持ち上げた店主が私のカップに注ぎ足そうとしてくれるのを制してお願いすると、すぐに笑みとともに了承してくれ、ミケーラと一緒に後ろに控えたメイドへ声をかける。

すると水色の髪の涼やかな美女はにこりと薄く笑って、すぐにカウンター内へと入って新しくお茶の準備を始めてくれる。


「ああ、ミケーラ。ごめんなさいね、私のコートのポケットにさっきのお店の紙袋があるから・・・そう、それよ。その中からショウガの・・・お砂糖がついた薄茶色の丸いのをいくつか出して、お茶と一緒にグレンデールさんに届けてもらえる?」


ミケーラにお願いするとすぐに壁にかかった私のコートのポケットから蝋引き紙の紙袋を出してくれ、彼女の小さな指が間違いなくショウガの砂糖漬けを摘まんだのを見て頷くと、彼女からも笑みが返ってくる。

さっき頂いたお茶は味がしっかりしてたから、きっとショウガとの相性はいいだろう。

それにあったかくなるものね、ショウガは。


「なるほど、いいチョイスですね。うちにも少し置いてるんですが、うちが仕入れているのと同じところでお求めのようだ」


私の指示とミケーラの様子を興味深そうに見守っていた店主がそう言うので、お茶との相性に太鼓判をもらった気分。

しかもあのお店から品物を仕入れているという事は、完全にこの店主のお眼鏡に叶うお茶菓子になる、という事だ。

入ってすぐのカウンター下にお茶菓子の類があったから、もしかしたらそこにあのドライフルーツも置いてあるのだろう。


カウンターから出てきたメイドさん―――ミスティと呼ばれた彼女がお盆にティーカップを乗せてきて、ミケーラがそれを受け取ると、すぐに戸口へ向かいかけたミケーラをミスティが引き留める。

どうするのかと思えば、最初に彼女が出てきたほうの奥の扉を指しており、どうやら建物内を通って裏の駐車場へ連れて行ってもらえるようだ。


「ごめんね、ミケーラ。お願いね」


通り過ぎるミケーラに声をかけると、はい、と元気よく返事をくれて、それを見て微笑むミスティの背中を追って慎重な足取りで奥へ続く戸をくぐり、やがて見えなくなってしまう。


「よし、大体お勧めしたいお茶が決まりました。順番にお淹れしても?」


相変わらず腕組みして、ミケーラたちを視線で追いつつもどのお茶が私の気に入りそうか考え続けていたらしい店主が、一度大きく頷いてそう言うので、お願いします、と返事をしておく。

すると店主からも頷きが返ってきて、彼は踵を返すとさっとカウンター内へ戻り、後ろの棚からいくつか缶を下ろして準備を始めた。


「ふふ、ホントに好きなんだね、お茶」


ティーカップ片手に口を出すでもなく見守ってくれていたルークが、なにか面白いものでも見たように笑う。


「そうね、好きだわ。・・・あ、そうだ。ガーランドさんへのお土産に、魔法瓶なんてどうかしらね?」


「魔法・・・瓶?」


「ご主人、魔法瓶って何です?どういう魔法がかかってるんですか?」


いいことを思いついたと思ったら、すかさずルークとがーちゃんから疑問形で返事が来て、またやっちまったのだと知らされる。

いや、でもきっとあるはずでしょ?

これだけアレもコレも魔法でできるんだったら、魔法瓶の一つや二つ。


「ええ・・・っと。水筒、なんだけど」


一旦言葉を切って、がーちゃんをチラ見する。

水筒という概念がなかったら即座に止めて、と視線で訴えかけると、ちゃんと伝わったらしく私の左肩の定位置にいる鴉が頭を上下させて頷きを寄越してくる。


「ええ、水筒ですね。移動中に飲めるように中に水とか入れておくヤツでしょ?」


「そうそれ!ええと、それのね、保温ができるやつなんだけど・・・」


「保温?・・・つまり、水筒に温かい飲み物を入れて、その温度を保つ、ってことでしょうか」


「そうよ。そういうのってないのかしら?」


きっとあるはず、と期待して聞いてみるも、がーちゃんは私を通り越してルークを見つめ、右隣のルークも私を通り越してがーちゃんに視線をやっているようだ。

・・・ないのね。




評価・ブックマークありがとうございます!

年末進行がなかなかにどうしようもない感じで、日・月に予定していた更新が見事に間に合いませんでした。

これが今年最後の更新です。年明けはしばらくまた使えない状態になる見込みなので、更新未定です。


一年お付き合いくださりありがとうございました。

なかなか進まず私が一番焦れていますが、来年もゆっくりやっていきますので、ぜひまた覗きに来てやってください。

年末に向けて寒波が来る予報ですので、皆様どうぞ十分に備えて、よいお年をお迎えください。

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