第一章2「フリスビーが射抜いたもの」
少女が連れていかれた。
俺は1つ訂正しなければいけないことがある。美少女は存在した。
彼女はとんでもない美少女だった。高校生にしては小さすぎる体躯に、それと同じくらいの長いピンク色の髪。きりっとしたとした二重の目に、胡桃のように小さい口。胸の小ささ以外は、完璧なスタイル。
ほかにも言いたいところを挙げると、原稿用紙を十枚ほど要する。だが、そんなことをしている暇はないので、とりあえずは超絶美少女という一言で片づけておこう。
しかし、そんな彼女に対して今向けられている視線は、美少女に向けられるそれとは程遠い。それも当たり前と言えば当たり前だ。学校に植えてある木を切り倒そうとしていたのだ。美少女というより狂人というイメージが勝つ。
しばらくの静寂の後、みんなは動き出して式場である体育館に向かっていったので、それに流されるように俺も体育館に向かった。
入学式が始まった。パイプ椅子に尻を痛められながら大人たちの長ったらしい話を聞かされる。なかなかきつい拷問だ。楽しみましょうの一言で十分だろ。それなのに、入学早々から、中学とは違って遊んでいる暇はないだの、一年生から勉強に励みましょうだの反吐が出る。それが俺たちのやる気をそいでいるとなぜ気づかない。
やっと最後の校長の話に回ってきた。やっとここまで来たが、ここからが長いことは全人類周知の事実だ。
俺もそろそろ眠たくなってきた。どうせ聞いても何の実りにもならない話だ。少し仮眠を。
そう思って目を瞑ろうとした瞬間だった。
「届けぇーーーー!」
聞き覚えのある甲高い声が体育館に木霊した。その声もまた、おそらく入学式に聞こえてくることのないであろう言葉で、会場がざわめいた。
全員が驚いたのはその声だけが理由じゃない。例の少女の手から放たれた謎の物体が、前のステージに立った校長先生めがけて弧を描いて飛んで行ったのだ。
そしてその物体は校長先生の顔に当たり…………かけている眼鏡が地面に落ち、粉々に砕けた音が体育館中に響いた。
その後のことは想像の通りだ。先ほどとあまり変わらない。またもや男性教員に取り押さえられて、連れていかれてしまったのだ。
あとから分かったことだが、少女が投げたものはフリスビーだったらしい。柔らかい素材の物だったので、校長にケガがなかったのは不幸中の幸いだった。
その後は校長の話なんて誰も聞かずに、隣の人と今の事件についてこそこそ話しており、なんだかスカッとした気分になった。




