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赤ずきんと呼ばれた狩人と森の少女  作者: ariya
4章

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32/51

3 とらわれの少女

 城の中を捜索すると部屋が多く並んでいる部屋にたどり着いた。ディルクは部屋のひとつひとつを確認していったが豪奢な家具が並べられているが長いこと誰にも使用されていない様子であった。

 鍵のかかっている扉もありそれを確認しながら、先を進んでいく。

 少しずつ面倒になり先に奥へ進んでしまおうかとすら思ったが、この城のどこかにニコルがいるかもしれないという期待が彼の足を緩めていた。

 ひとつの扉に手をかけここも鍵がかけられていると嘆息した瞬間。


「誰?」


 中から声がした。その声にディルクは飛び跳ねる程に驚いた。

 声の主は間違いなくニコルのものであった。

「ニコル?」

 ディルクの声に部屋の中にいる者も驚いた反応を示した。ディルクは扉を開けようと試みるが、鍵がかけられて開かない。破ってしまおうと思い何度か体当たりしたが、びくともしなかった。ジルケのメイジ術で壊せないかとも考えたが扉に触れると厳重に呪術がかけられていた。それは扉が外力によって壊されない為のものであり、メイジ術を使用しても無駄だろうと悟った。

 鍵だけでなくこのような手間をかけるのだ。

 中にいる少女は偽物ではなくニコルだとディルクは確信した。

「待っててくれ。今すぐ人狼からこの扉を開ける方法を聞き出して見せる」

「………」

 ニコルはしばらく黙って考え事を始めているようだった。どうしたのだろうか。

「ディルク、引き返して………ここにはあの魔女ヨハンナがいるわ」

 魔女とも呼ばれる人狼の名にディルクは反応した。カタリーナ姫の侍女でありメイジ術の心得もあった女性。他の人狼と異なり、狩人と人狼の争いに積極的に介入することはなかった。そのためその存在すら疑問視されていたが、いくつもの資料で彼女の存在は確定されていた。カタリーナ研究に信念を燃やしているハンスも彼女は存在していると断定している。

 この城に彼女がいる。

 そう考えるとやはりここにはカタリーナ姫の肉体があるのだろう。

 肉体についても捜索は大事だが、ディルクは一刻も早くニコルの救出を行わなければと思った。

 この数日の間、彼女はどれだけ怖い思いをしてきただろうか。

 そう思うとこの扉を破ることができないことが歯がゆく感じられた。

「大丈夫。僕は人狼との闘いは慣れている」

 先ほどのイルザ退治の躊躇は脇に置いて、自分は決して負けることはないとニコルに断言した。彼女に不安を与えないために。

 そういいディルクはその部屋を後にした。


 城の至る場所を捜索し中央の玉座と位置される城主の部屋の位置を確認した。そこに間違いなくヨハンナがいるだろう。

 今まで通ったどの扉も比較できない程の大きな扉を前にディルクは一呼吸おいた。

 手をあてるとすんなりと大きな扉は開かれた。

 前に広がるのは赤い華美な絨毯、装飾の施された騎士の像の並列、奥の方には玉座と思われる椅子が置かれその前に棺桶がおかれていた。

 この部屋が城主の部屋というならばあの棺桶の中にディルクが長い間追い求めていたものがある。

 カタリーナ姫の肉体が。

 棺桶に近づこうと思うと殺気を感じ取り後ずさった。

「そうだ。人の分際で姫に近づこうとは無礼にも程がある」

 そういい男が冷たい言葉を言い放ちながら騎士像の影から姿を現した。

 銀色の髪に赤い瞳、白い肌であるが決して虚弱な肉体ではなく程よい筋肉がついた中肉中背の男であった。そして何よりも美しい容貌であった。女性がみれば思わずため息をもらし放心するだろう。ディルクがみても美しいとつい形容してしまった。しかし、その全身から滲み出る雰囲気は冷徹という言葉がよくみえていた。赤い瞳は冷たく、じっと見つめられると蛇に睨まれた心地を覚える。


「あなたは?」


「ここにはじめてたどり着いた狩人よ。私はカリア。狩人であればわかるだろう」


 自己紹介はそれで充分なはずだとカリアは言った。確かにその通りだ。狩人の間では有名な災厄の人狼であった。

 彼はカタリーナ姫の騎士であり、人狼の間では祖に等しい存在であった。

 そしてその冷酷な性格、人を見下す性格も有名であった。

 彼の手によって殺された人は何万にもわたる。そして彼が作り出した新たな人狼や、眷属の狼は獰猛で多くの人を襲い続けていた。時には人の村を牛耳り支配し生贄としての食餌を要求する者もいた。それも含めると彼と彼に関した者たちによる被害は多大であろう。

 息をのみ彼から目を離さず自身の剣を手にする。カリスの赤い瞳に見つめられ、自分が緊張しているのがわかる。

 ひとつの隙をみせれば自分の喉はかみ砕かれる。

 恐怖心を抱きながらもディルクはこの場を去ろうとしなかった。

 ここで去ることはできない。

 距離を縮め近づき、右手の短剣を振り下ろす。予想していたが、やはりカリスの剣によって受け止められてしまった。ディルクはもう一本の左手に所持していた短剣を振り上げようとした。

「ふんっ」

 カリスがひとつ息巻くと突風が巻き起こり、ディルクは姿勢を崩し急ぎ後ろへと回った。

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