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赤ずきんと呼ばれた狩人と森の少女  作者: ariya
2章

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2.スーリィ洞窟

 メリス国西南部に位置するクルス森は広大な森である。その中にいくつかの山・谷・湖・洞窟が存在している。そのうちのスーリィ洞窟は美しい鍾乳洞で有名な場所であった。

 しかし、クルス森は全体的に人狼とその使徒である狼が縄張りを引いており、人は単独で入ることは難しい。

 ディルクも中に入ると同時に奥から出てくる狼の群れに応戦していた。奥に入る度にどこかしこから現れる狼に手を焼いている。

「うう、できればもっと強いメイジ術を使いたい」

 ジルケは忌々しげに軽い飛び道具程度の術しか使えなかった。

「どうしてダメなんだい?」

「親父に言われているんだ。ここで強い魔法を使うなって。洞窟がそれに呼応して崩れる可能性があるから」

 ジルケは唇をとがらせながら次々と小さい炎の術を放つ。命中した狼は倒れ込んだ。その隙間をくぐり二人はさらに奥へと進む。

「ジルケのお父さんは結構博識なんだね」

 あたりを見渡すディルクは洞窟の形状をみて納得したように言った。どういうことだとジルケは首を傾げた。

 ディルクが洞窟内にある一部の石を示した。薄くであるが、文字と円陣が小さく描かれていた。

「ぱっと見見逃してしまうし、こんなに暗い中で読みづらい」

 そう言いながらディルクは灯りを取り出した。

「さっきから思っていたけど、便利だね」

 ジルケもディルクと同じ灯りを持っていた。それはネックレスのような形状をしており石の部分が強い光となっていた。

 銀十字が作った道具であり、持ち主の微量な魔力に反応し暗闇の中で光をともすのである。また灯りを消したいときは首にかけなければいい。

 ディルクよりもジルケの方がマナが強い為、ジルケの方がディルクの持つ灯りよりも明るかった。

 ディルクはそっと石の文字を照らして円陣を分析した。

「これは古い形式だけど、おそらくはこの洞窟が崩れないように支えの役割を果たしている」

 よく見れば洞窟の天井は少し崩れ気味の円形であった。洞窟が崩れないように上から下へ行く力は分散されなければならない。崩れない洞窟はうまくそうした形になっているが、この洞窟はわずかにだが崩れてしまっている。洞窟が崩れない為にこうして各所に陣を組み込んでいるのだ。

「へー」

「昔はこの洞窟からは鉱石が取れたらしい。だが、崩れやすくなっているため魔術に詳しい者がこうして工夫を凝らしたのだろう」

 ここで大きなメイジ術を使えば、円陣が反応し力の均衡が崩れる可能性があった。だから、ジルケの父親は強力なメイジ術を使うのを禁止しているのだろう。

「なるほどね………うわっ、また来た!」

 奥から牙をぎらつかせる狼にジルケはうんざりした。なるべく範囲の狭い術を使う為、命中しても動けるものもいた。ディルクが少しの隙のある狼を仕留めて行く。

「ジルケは、狼に対しての威嚇をして。僕がその隙に全て留めを刺すから」

「つまらない」

 自分の活躍が地味であり、ジルケは拗ねた声をあげた。しかし、今のディルクの話では仕方ないことであり渋々従った。

 ようやく奥の方へ行くと奥は泉が湧き出てて鍾乳洞の姿が水面に移りうねっている。上がわずかな空洞があるらしくそこから小さな光が届けられる。

 あたりが白と水色のコントラストを使いながら彩られていた。

 おかげで灯りは必要なくなっていた。

 別世界のような神秘的な光景にジルケはうっとりした。

 ディルクは奥に明らかな人工の床が張られているのをみた。ほんの十畳のみであったが、まるでこの上が何かの祭壇のようだった。

 床をみると円陣が組み込まれていた。ここまで通る途中に見た支えの円陣とは異なりおおがかりなものであった。

「なんだ、これ?」

 ジルケは首を傾げてディルクに尋ねた。さすがのディルクもはじめてみる形状に首を横に振った。

「だけど、何かの手がかりになるかもしれない」

 そう言いながらディルクは懐からメモ帳を取り出した。床に張られた円陣を確認しながらメモに写していく。

「これはカタリーナ姫に関係しているのかな」

 ジルケの疑問にディルクはすぐに応えることができなかった。

「でも、可能性はある」

 しかし、これがどういう意味のものかわからなかった。

「帰って調べないと」

 教会なら古い書物がたくさん揃っているかもしれない。そう考えたが、ジルケは困ったように喋った。

「教会は何度か火事になってて建て直されているからディルクが欲しい情報はないと思うよ」

 それを聞きディルクはさぁっと青ざめた。都市部でいろいろ調べてこの森がカタリーナ姫の故郷であることを突き止め、様々な情報が得られると思っていた。なのに、大事な書物がすでに失われていたとは。

「まぁ、落ち込むな。私の家に来ればいいよ。親父が結構なおたくでさ、カタリーナ姫に関する書物をいっぱい持っているわけよ」

「本当ですかっ」

「あ、言っとくけど、これは秘密な。親父がカタリーナ姫の研究しているなんて知られたらすんごい変な目で見られてしまう。世間的にはメイジ術の研究てことにしているからそこんとこよろしく」

 ここでさらにディルクは驚いてしまった。

 まさか、カタリーナ姫の研究をしている者が村にいようとは。

 しかも、一緒に行動しているジルケの父親というではないか。

 一度落ち込んでしまったディルクであったが、思わぬ情報に興奮を覚えずにはいられなかった。

「わかりました。父親の研究に関しては内密にします。どうか取り次ぎを」

「いいよ。ただなぁ………」

 ジルケは困ったように頬をかいた。

「すっごい変人だけど、あまり驚かないでくれよ」

 ジルケとしては父親が余所者にまで奇異の目で見られるのを好ましく思っていなかった。だから、ディルクがカタリーナ姫の調査を始めたと聞いてもなかなか自分の父親のことを話せずにいたのだ。

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