出会いました
私、クリスティアの家は公爵家だ。
父は有能な宰相で、母はかつて社交界の華と呼ばれた完璧なお姫様。兄は硬質なイケメンでご婦人方の憧れの的!そして美女ぞろいの姉たち。
そんなハイスペックファミリーに産まれた私は15歳。
栗色の髪。通称「アンスカリ家の問題児」もしくは「幻の君」
問題児に関しては分かるがなんだ幻の君って!まあ社交界を避けまくった結果だろう....。うん。
そして私の婚約者。
この国の皇太子にして容姿端麗、英雄豪傑、精励恪勤と謳われる国一番の優良物件らしい。
「らしい」というのは一回も私が会ったことがないからだ。会いたいとも思わないけど。
「あぁあ....嫌になっちゃった....」
そう呟きながら一面になっている赤く熟したイチゴを摘む。
屋敷からちょっと歩くと現れるこの丘は私のお気に入りだ。
庶民の服を着て屋敷を抜け出し、この丘でリフレッシュするのは美辞麗句に溢れた生活の中の唯一の楽しみでもあった。
「今頃お母様たちはお茶会かしら....お茶会って何が楽しいのかさっぱりわからないわ....それに明日には夜会...はぁ....明日はなんて言って抜けようかしら.... 」
ちなみにお茶会には風邪気味だと言って欠席した。小さい頃から仮病を使いまくった私は病弱だと思われている。
子供の教育だってなんだって他人任せな貴族社会では子供に関心なんてないんだろう。案外チョロいのだ。
憂鬱な気分のまま立ち上がる。
そろそろ戻らないと私の脱走の共謀者で侍女のクレアが心配してしまう。
「さて、そろそろ帰ろうかな...」
とスカートの裾を直す。
すると帰路の方から人が来る気配がした。
「クレアが痺れを切らして迎えに来たのかしら??」
たまに長居してしまう時、クレアが「遅いですっ」なんて言いながら迎えに来ることがある。
「いやでもそんな時間経ってないわよ...ね?」
サクサクと土を踏む音。
「もしかしてクマとか?!いやいやこんなところにクマなんて...ね?!?!いないわよね!?!?」
ちょっと怖くなってきた。
ふわっと風がそよぐ。
そこに現れたのはクマではなかった。
「「てん....し...??」」
そこに現れたのは輝くゴールドの髪に宝石のような碧い瞳、彫刻と見間違うほどの体躯、そしてそこに少し驚いたような表情浮かべた「天使」とも「神」とも呼べるような美しい「男の人」だった。