そして今日も少女は悩みの種 4
夢は、時として『夢』だと認識することがある。認識できた時、その夢で自由に動けたり、夢そのものを変えたりできるだろう。
『ごめんなさい』
今にも泣きそうな麻央がそこにいる。
自信を砕かれたバカな俺が、そこにいる。
麻央は走った。それを俺はしばらく追えずただただ立ち尽くし、我に返って追っかけた。
謝罪の意図もわからず、過信した自分に嫌気をさして走り、そして––––手遅れだった。
魔王のおっさんが虫の息で、麻央は返り血で真っ赤。
訳がわからない。どうしてそこからおっさんを殺す事になるかを。
だが、『まだ間に合う』。
俺はおっさんに駆け寄り、油断してた麻央の前で転移魔法で何処かに飛んだ。
着いた先に危害を加えそうな奴はいない。俺はすぐに止血をしようと物を探しに行こうとしたが、まだ息があるおっさんが俺の手を掴む。
『……娘にだけは殺されたくない』
たまに見せるイケメン面に、覚悟に、俺は答えろと心が叫ぶ。
俺は、あいつらの父親を殺した。
だが、魔王への復讐の意思は最後まで目覚めなかった。
俺は埋葬し、麻央から逃げるように城を、魔界を出た。
夢は切り替わった。
次は優華と麻央の一騎討ち。互いに剣を振り、魔法を撃ち、しかし決着はつかない。
力量は互角。すでに四天王、勇者一行はほぼ全滅。
『…もうやめて、マオ』
しかしユウカの声は届かない。古から続く呪縛《大罪》の力でマオは暴走する。
同じく古の、天使まじりの勇者のユウカも解放し戦う。
この決着はきっと、共倒れしかないことを、旅を通して知っている。
ユウカが負けても異端審問会が出張って弱ったマオを殺す。
マオが負けても、異端審問会が『のちの脅威』として封印、又は殺害する。
『異端審問会』はイディオの絶対的力。逆らうことができない災厄。
でも、それに共感する民衆だって罪がある。
いい奴がいるのに、世界は悪者を肯定しようとする。善と嘘つく悪を。
『異端審問会』の、あの男の本当の目的は『永遠の大戦』誰かが誰かを殺すのを眺め、時に加わり、ただ自分の欲を満たすだけの大戦を。
一年かけた。いろんな種族の協力も仰いだ。
だから、誰にも知らせない『俺の計画』の、最後のプロセスまで来た。
古今東西、共通の敵を前にすれば皆が一致団結する。しかしただの敵ではダメだ。今だと『魔王マオ』を超える悪でないといけない。
だから力をつけ、この日、俺は魔王と勇者を倒して世界に宣言した。『魔王と勇者に両親を殺された俺が、これからこの世界に復讐する』と。
復讐なんて、考えていないくせに。俺は嘘吐きだ。




