波長が合う者 5
俺が持つスマホは、両親から譲り受けたもの。
師匠から雷の魔法で充電の仕方を教わって、起動はできるが……。
「……これって」
ミサはいろんな角度でスマホを見つめる。
今は一応起動するが、どんなに短くても十年前のもの。今のバイトではさすがに変えることができないし、明らか電子科学機器までの知識はないから作れない。
「……元々はアプリだけ魔法で使ってインストールしてたんだが、今の奴じゃどうしたか使えない。更識のスマホを触らせてもらったが、それも外側に刻印するまでで、このスマホは師匠の力でアプリだけ作れるようにしてあるから、今市販されたスマホじゃ使えないんだ。これの強化ってできないか?」
正直そろそろ寿命だし、今の俺の魔法や魔力にこのスマホはついてきてない。ならばどんなに時間をかけても新たなスマホを改造したほうがいいはずだ。
だが、もしこのスマホを使えるなら……。
しかし予想に反して彼女は、なぜか目をキラキラさせ、興奮気味に、早口でまくし立てた。
「これ十五年前に自衛隊に秘匿配布された『自衛隊専用端末』じゃない! そもそもスマホ普及は五年前からだからファーストモデル! 化石クラスの代物が今も普通に、しかも正常に動いているなんて! どんなに大事にしたのよ! 限度があるわ! 幾らかの改造、修理が施されていても基本スペックはそのまま低能状態だし、このファーストモデル自衛隊仕様ならではの特殊電子機能とか、もうむしろこれでよく使えたわ! これ頂戴! 異能の様なの混ざっててちょー使いたい!!」
中古の域を超えてる自覚はあったが、まさかここまで喜ばれるとは思わず俺は後退り、ミサはハッとしてポケットを弄った。
「……えーと、あ、あった!」
と手に持っていたのはスマホ。しかし見た目は俺の持つものでも、更識が持ってた最新モデルでもないものだった。嘲笑う林檎が刻印された、真っ赤なスマホ。
ミサは電源を入れ、
「これ、神樹で動かそうとした端末だけど上手くいかなくって。神樹の力以上で私のロボットを動かせるならもしかしたら使えるかも」
と手渡された。
触って分かる。手のひらに収まるサイズのこれには魔力が使える。そして今まで使ってたスマホ同様にインストールでき、以前よりもより良いものを使用できる。それこそ、今使用できない『あれ』さえも……。
ミサは本当に天才だった。だが……、
「いいのか、これ? そんなガラクタみたいなのより高スペックだが?」
神樹への探究心、そこからこのスマホを生んだ彼女が快く手放せるのか? おもちゃの域なんて超えた、もう少し作り込めばあのロボみたいに使えるであろう、このスマホを。
しかし彼女は笑って横に首を振る。
「……それ、一般人には使えないの。神樹の力で仮に使えても、理解がまだできてない私があのロボみたいに使えるかわからない。だからそれ渡すから、それでゆう兄を実験させてもらえるならあげる!」
……今、確実に現状打破できる切り札だ。それにミサは好奇心が強いだけで、それを悪用する奴には見えない。むしろそれを嫌う節がある様にさえ思えた。
なら今は、そんな少女を守れるものをもらっておいて、メリットしかないだろう。
「……わかった、だが約束してくれ。それは俺の両親の形見だ。だから大事にしてほしい」
「……うん! 絶対大事にする」
彼女は真っ直ぐな目で約束した。なら後は、目の前の敵を片付けるだけだ。
俺は早速、組み込めなかった【相棒】をインストールする作業に入った。




