幼女○○○ 2
この学校には誰も理事長の顔を見た者はいない。
理事長は天才だと噂され、実際、存在する上で誰でも入室できる理事長室には数々のトロフィー、勲章、感謝状が飾られているが、誰も本人と会うことはなかった。
とあるところで、八歳の少女が一つ賞を取った。
少女はそれがすごいことと感じず、ただ『宿題を解く』感覚でしかなく、そのまま数学、化学、地学、ありとあらゆる分野を極めた。
少女は部屋いっぱいに溜まった紙や物が邪魔で学校を作った。だれも否定せず、飛び級どころか教師にまでなった。
しかし彼女はある問題に直面し、一年ですべてを捨てて、死んだ父が残した学校の『理事長』を始めた。
きっかけは二つ。一つはこの学校の大木の、科学で表せない謎の独占解読。そして―――。
粉吹市と呼ばれる前のこの地での謎の集団消失『神隠し事件』の解明だった。
未だ解明できない二つの謎。彼女の探求心は底なしに二年を費やした。
謎の力、消失の謎、この二つだけで満足できなくなったころに、勝手に一つ解決した。
『神隠し事件』の被害者が消息を絶ってから十年、少女が取り掛かって二年目に突然戻ってきたのだった。
当初集団で「異世界でサバイバルしてた」と証言していることから、『集団ストレスによる幻覚症状』や『薬物実験にあわされた被害者』とも言われたがその痕跡もなく、この事件は未解明のまま幕を閉じた。もちろん全員の帰還ではなかったが、彼らからの証言で残りの人は死亡、遺品を遺族に渡して終わる。全員納得できるものではなかったものの、政府の判断でこの話はこれ以上詮索できないようにされた。
少女も例外ではなく、それに関した書類の一部を没収され悲痛に落ちる。
しかしすぐ、少女は新たな『謎』で息を吹き返したのだった。
『粉吹市、魔法使いが現れた!』
『聖夜の魔法使い』と呼ばれた少年が、『神隠し』で有名となり過疎化した街の息を吹き返した。
少女はすぐ、かの少年を探し出し、この学校へ招待した。彼の『謎』が新たな探求心に火をつけたから。
一通り話し終えた彼女は、キラキラした瞳でユウマを見る。
「どうか、どうか魔法を見せてください!!」
食い気味に袖を引っ張る少女に、厄介そうにしかめっ面する。
「...てかお前が呼んだのかよ。もう少しスレンダーでクールビューティを期待してたのに」
ユウマはユウマですごく残念そうだった。
一向にひきそうに無いミサに呆れたが、とっさに彼女を後ろに引く。
「わわっ!?」
ミサはつまずきそうになるがユウマの後ろに行き、ユウマは一点を見据えている。
「まさか」
俺はユウマが見るほうに拳銃を構えると、かなり離れているがオークが十数匹、隊列を組んで現れた。
ミサはそんな化け物に、輝いた瞳で見ている。
「すごっ! ゲームのまんまのオークだ!! なにかな、遺伝子操作かな? でもそれでも―――」
「おい理事長」
「な、なに?」
自分の世界に入りかけたミサはユウマの声で我に返るが、ユウマがかざした右手に再び瞳の輝きを放つ。
「そーだな。だったら独占ショーでもするか。お題目は『魔法の豚の丸焼きショー』ってどうだ?」
「うん、見たいみたい!!」
ユウマの提案にピョンピョンと、見た目通りの反応を見せたミサに気を良くしたユウマはニタリ、と彼女に見えない角度で笑う。
「......これが魔法だ!! 『バーニングフレア』!!」
見晴らしがよくなった山頂で、ユウマは全域に炎をまき散らした。それはあらゆる方向へ行き、木々は燃えないのにオークはもだえるように焼けていく。
ああ、こいつら敵に回したくない。
すごく悪い顔で笑う二人を見て、俺は今一度そう思うのだった。




