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「……チッ、お前が来なければあいつぶっ潰せたのにな」
「そう焦るな同士よ」
高層ビルの屋上で夜風に当たる。この世界は少し空気がまずい。『科学』とは、こんなにも自然を汚染するのか。
「誰が同士だ。俺はお前を利用しているにすぎない。今日はひいたが、次も指示に従うと思うなよ」
「ま、そこは勝手で構わないさ。だが《奴》が来たのは分かってたろ?」
「……『ヒラナゴ ユウマ』、か」
突然ひかされた時に感じた魔力は、やはりアイツのものだったようだ。膨大で、暖かく……未だ平和ボケした魔力の持ち主は。
「尚更だ。ここでアイツを討てばお前の計画は早まったはずだが?」
「今日はもう無理さ………『彼女』が目覚めたから」
納得のいかない言葉を告げると、そのまま奴は落下し、消えた。残ったのは、風のせせら笑う音のみだった。
「……わからねーな」
アイツは一瞬何かを恐れた顔をした。それは撤退を促したあの時すら見せなかった顔。それが示すのはきっと『ユウマ以外の何者か』という事。それは魔王か、勇者か、あるいは……。
「狭山さま」
ふと、後方から人が立っていた。しかしそれは変化したオークの一人。
「同胞はだいぶ減りました。いま、息があるものの再起に時間をかけています」
「……そうか。3日で終わらせろ」
「仰せのままに」
といい立ち去る。人間に溶け込んだ魔物は一体、今何を思っているのか。
「さて、俺も休むか」
結局、あの男の指示なしに今はまだ動けない俺は、奴の次の策を聞かされるまで眠ることにする。




