仲良し主人と、犬猿なる右腕
「い〜や〜!!」
「………マオ、駄々こねない」
昨日は出かける気も起きず、結局午後はなんとなく勉強して、優華の怒りを買わないように早めに就寝した。
そして今日、優華の提案でまた、市外でショッピングをするのだが、今日は綺紀も信木もシフトでいなく、と言うよりここしばらく俺はフリーとなっていた。理由は三月までほぼ毎日手伝っていたことへの感謝と、信木と綺紀だけでうまく回せるほど余裕ができたらしいから、だと。
別に気にしなくてもよかったのだが、こちらも再会してまだ日が浅い二人とこうして出かけることが、特に悪い気がしないので有り難く骨休めさせてもらうこととした。実際この世界に帰還したのは昨年のクリスマス10日前、それからなかなか濃い出来事が続いてまともに息抜き出来なかったからか、やっとその濃い出来事の結びを飾ったのは麻央と優華との再会で、それからは……まあ、勝手がわかっているのと慣れている為そう苦でもなかったし。
「あ、これユウカに似合いそう!」
「………マオ、これ似合うと思う」
「じゃ、見せっこしよ!」
「……うん」
と女子定番の洋服選びをする、女子高生の皮かぶった《魔王》と《勇者》はキャッキャうふふっ、とお互いの服を選んでいたのを少し遠目で見ていた。
「……で、何のようだ? お守りしにきてくれたのか?」
四角い柱にもたれながら、後方で同じく、俺を正面に右側を向いたガタイのいい男と、その真反対のスレンダーな女性に聞こえるように聞く。
「お前から頼まれていたことを、うちの参謀から結果を伝えるようにってことで、ついでに荷物持ちに来た」
と、『勇者一行随一の狂戦士』ギンキが、すっっごく嫌そうな声で答えた。すると、これまたすっっごく嫌そうに、『魔王の右腕』イディオではルシファーこと、ルシー・ファマードは答えた。
「ふん、貴様は相変わらずの脳筋なのだから、あの勇者連れて気を利かせて消えてくれませんか? 迷惑ですが?」
「ああ!? お前こそあの魔王どっかにいかせろ! ユウカはズバッと言えねーんだから気を利かせて雰囲気つくれ!」
「なんですか!!」
「やるってか!!」
「いいから報告しろって……」
この通り、昔はよく敵として衝突していた為、それは敵でなくなった今も、まさに『犬猿』である。