仲良くなりたい
また近くを通っていないかと、空を見上げる。
やっぱりそんな都合のいいことは起こらなかった。
大きくため息をついて、諦めてりんりん、と翅を鳴らす。
「あの……」
ふと後ろを見れば、念願の女の子だ。
「あ、ああああの、初めまして!!」
心から笑顔が溢れ出てくる。
やっとだ、これで僕も子孫を残すことが出来る。
僕のどもり具合に、女の子は楽しそうに笑った。
笑顔の似合う女の子だ、僕にもったいないくらい。
「いい天気ですね、」
と微笑んで空を見上げた。
視界にうつる黄色。
僕の思考が止まる。
後ろで、ようやく来てくれた女の子から困惑している声が聞こえた。
それでも、僕は女の子よりも、彼女の方が好きだった。
「あの、せっかく来てくれたのに……ごめんなさい!」
びっくりしている女の子を置いて、僕は黄色い背中を追いかけた。
背の高い草木に覆われ、時々視界が緑いっぱいになる。
黄色を見失いそうになって、息が切れる中走るスピードを上げた。
「あの!」
声を張り上げる。
彼女が振り返った。
「あら、また出会いましたね。」
ふわり、と微笑んだ彼女に、僕の体は熱くなった。
「ぐ、偶然ですね、何か良い餌でも無いかと思って探してたんです。おなかすいちゃって……」
本当はお腹なんて空いていない。
ドキドキして、空腹かどうかすら感じられないほどだ。
「あはは、この時間はぺこぺこですよね」
笑ってくれた。話題としては間違ってなかったらしく、ホッとした。
チョウが僕の近くまで降りてきてくれて、顔が熱くなってくる。
近くで見た彼女はもっと綺麗だった。
土と同じ色の僕と違い、青い空に反抗するような目立つ黄色で、それなのに体も色味もふわふわと柔らかい。
彼女の纏う空気も柔らかくて、見た目と一緒だ。
ほう、と息が漏れる。本当に彼女は素敵だ。
「お時間もらって良いんですか?」
一定の方角に向かって飛んでいたから、何か用でもあるのかと思った。
「大丈夫よ、せっかく話しかけてもらったんだもの。」
ふわりと笑った彼女に、僕の心はまたドキンと跳ねた。
これ以上脈が早くなったら、このまま死んでしまいそうだ。
「ふ、普段どこに住んでいるんですか!」
死んでしまう前に、もっと彼女のことを聞きたい。
もっと彼女と話していたい。
「んー、ここよりもう少しのぼったところかな。ちょっと遠いけど……」
そういって彼女が向いた方角は、さっきまで向かっていた場所だった。
もしかしたら、家に帰ろうとしていたのかもしれない。
「わざわざ来てるんですね! ここに住めばいいのに……」
そしたら、もっと長く会えるのに。
でも、わざわざ来ているからこそ、僕は彼女に会えたのだ。
彼女の行動範囲の広さに、今は感謝しなければいけない。
「友達がいるから。」
ごめんね、と彼女は苦笑いした。
「友達大事ですもんね」
やっぱり、僕はまだ彼女にとって友達にすらなっていないのだと思うと、心が張り裂けそうだった。
でも、その心を隠して僕は笑った。
彼女に気遣いはしてほしくなかった。




