出会い
いくつも脱皮してようやく大人になった。
次は自分の子孫を残すために女の子を探すのみだ。
翅をこすりあわせて、りんりんとどこかに居るだろう女の子に声を合わせる。
辺りからも同じような声が聞こえてくる。
「ライバルたちに負けてられないぞ……!」
起きてから寝るまで、ご飯を探す時以外はずっとりんりんと鳴いた。
りんりん、りんりん。
今日もダメか……。
成果はずっと無かった。
心なしか、辺りから聞こえてくる声が少なくなってきたような気がする。
空は変わらず青く澄んでいるのに、僕の心は晴れそうもない。
視界に黄色が横切った。
なんだ? 目で追いかけると、空を飛ぶ黄色い翅を持ったチョウがいた。
普段もチョウは見ているはずなのに、なぜかこの黄色いチョウを見た途端、ドキドキしだしてごくりとつばを飲み込んだ。
思わず、りんりん、と翅を鳴らす。
りんりんりん、チョウがこっちを向いた。
やった!
「どうかしたの?」
高いけれど、胸にじんわりと広がる暖かさのある声。
心がじんわりと暖かくなった。
「きっ、綺麗だなあ、って……」
しまった! 急に聞かれて、本心を答えてしまった。
慌てて取り繕うと思ったけれど、彼女赤く染まった顔を見て僕は口を閉じた。
「え、っと……え!?」
「あっ、と、すみません! つい本音が! じゃなくて、あの……ごめんなさい急に!」
慌てている僕を見て、チョウはクスクスと笑った。
「大丈夫ですよ、可愛い女の子に会えるといいですね」
その笑顔にも目を奪われた。
あなたが一番可愛いですよ。と言いそうになったけれど、心の中にとどめておいた。