第三章『夏休み』
バンドをやめて数か月。
今まで毎日のように弾いていたギターを参考書に持ち替えてから勉強に励んでいた。
しかし、進路も思うように決まらず、いらいらが募っていくことに気が付いた。
季節は夏。毎日夏期講習で学校や塾に通う。それは受験生としては当たり前かもしれないけど、どこかむなしさも感じていた。
そんなある日、兄貴が夏休みを利用して帰省きてきた。
「お前が勉強しているなんて珍しいな。」
帰って早々に俺の部屋にやってきた兄貴は開口一番そう言った。
「俺だって好きで勉強ばっかりしてんじゃないし。俺は忙しいんだから地元の友達とでも遊びに行って来いよ。」
冷たくそう言うが、兄貴は気にすることなく部屋へと入ってくる。
好き勝手に部屋の中を漁りだし、押入れを探っている。
「見つけた!こんな奥に隠して、お前もうバンド辞めたのか?」
そして、兄貴は押入れの奥にしまったギターを引っ張り出し、鼻歌を歌いながらチューニングを始めてしまった。
「大学行くために勉強しないといけないから、いつまでもバンドなんてやってないよ。」
兄貴のほうを見ることなく、そう答えると兄貴は手を止めて俺を見た。
「直樹、大学行って何すんの?」
「は?」
兄貴の突然の質問に俺は首をかしげた。
「目的もないのに大学行っても無駄無駄。俺の大学のダチにも目的なく大学いったはいいけど、留年したり辞めたやついっぱいいるから。」
それよりさと、兄貴は俺を見てニッと笑う。
「少しは息抜きしようぜ。これ持って、ちょっとそこまで行かないか?」
これといって差し出したのは、兄貴が初めて買ってもらって、俺にくれたアコースティックギターだった。
「俺、そんな暇ないんだけど…」
「まぁ、いいじゃん。少しだけ行くぞ!」
そう言って、兄貴は強引に俺を外へと連れ出した。




