表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/117

第59話 「問い」

 対話は、続いていた。


 だが――


 進んでは、戻る。


 理解しかけては、すれ違う。


 完全な一致には、ほど遠い。


「……やっぱり簡単じゃないですね」


 リリアが腕を組む。


 森の中央。


 二つの集団は、距離を保ちながらも、接触を繰り返していた。


 エルミナが静かに言う。


「ええ」


「ですが、確実に変化はあります」


 セリスが頷く。


「……衝突の頻度は減少」


 ノアが笑う。


「でも」


「決定打がない」


 アレンがそれを見ながら呟く。


「……分岐点だな」



 その日。



 再び、両者のリーダーが対峙する。



 今度は。


 以前よりも近い距離。


 周囲の個体も、静かに見守っている。


「……」


 信じる側が、先に動く。


 空を指す。


 そして。


 言葉を発する。


 以前よりも長く。


 明確に。


「……強くなってる」


 リリアが言う。


 エルミナが頷く。


「“意味”が増しています」


 セリスが低く言う。


「……体系化されている」


 ノアが続ける。


「教えになり始めてる」


 疑う側は、それを聞く。


 そして――


 地面を指す。


 資源を示す。


 仲間を示す。


 現実を、突きつける。


「……ぶつかってるな」


 アレンが言う。



 信仰か。


 現実か。



 どちらを選ぶのか。



 その時。



 信じる側が。


 “新しい動き”を見せる。



 空を指した後。


 自分たちの拠点を示す。


 そして。


 疑う側に向けて。


 “誘う”ような仕草。


「……?」


 リリアが首をかしげる。


 エルミナが言う。


「……共存の提案」


 セリスが頷く。


「……統合しようとしている」


 ノアが笑う。


「なるほど」


「飲み込む気だ」


 疑う側のリーダーは。


 それをじっと見る。


 考える。


 周囲を見る。


 仲間を見る。


 そして――



 首を振る。



「……っ」


 リリアが息を呑む。


「拒否した……」


 エルミナが静かに言う。


「価値観の維持を選びました」


 セリスが低く言う。


「……分裂確定」


 ノアが小さく笑う。


「来たね」


 アレンが目を細める。


「……ここからだ」



 空気が変わる。



 張り詰める。


 今までとは違う。


 逃げ道のない選択。


 共存か。


 決裂か。



 その瞬間。



 疑う側のリーダーが。


 空を見上げる。



「……?」


 リリアが驚く。


 その個体。


 初めて。


 長く。


 じっと。


 空を見続ける。


「……何してるんだ?」


 アレンが呟く。


 そして。



 言葉を発する。



 ゆっくりと。


 だが。


 はっきりと。



 “問い”。



「……」


「……今の」


 リリアが呟く。


 エルミナが息を呑む。


「……問いかけです」


 セリスが低く言う。


「……対象は」


 ノアがアレンを見る。


「こっちだね」



 疑う者が。



 神に問う。



 それは。


 信仰ではない。


 恐怖でもない。



 “確認”だ。



「……」


 静寂。


 アレンは、その言葉を受け取る。


 意味。


 意図。


 そして。


 その裏にあるもの。


「……知りたがってるな」


 リリアが言う。


「答えるんですか?」


 エルミナが静かに続ける。


「……ここで応答すれば」


「世界は大きく変わります」


 セリスが言う。


「……不可逆だ」


 ノアが笑う。


「どうする?」



 全員の視線が集まる。



 アレンは、空を見た。


 自分たちの位置。


 世界との距離。


 そして。


 今、この瞬間。


「……」


 もし答えれば。


 彼らは確信する。


 神はいると。


 もし答えなければ。


 彼らは探し続ける。


 考え続ける。


 選び続ける。


「……」


 ゆっくりと。


 息を吐く。



「……まだだ」



 答えない。



 リリアが小さく頷く。


「……ですよね」


 エルミナが微笑む。


「ええ」


 セリスが一言。


「……妥当」


 ノアが笑う。


「いいね」


「一番面白い選択」


 アレンが苦笑する。


「だからそれやめろ」



 下では。



 問いは、返ってこない。



 疑う者は、空を見たまま。


 しばらく動かない。


 そして。


 ゆっくりと。


 視線を落とす。


「……」


 その目は。


 迷いではなく。



 “決意”だった。



「……来るな」


 アレンが呟く。


 リリアが言う。


「何がです?」


 エルミナが静かに言う。


「……選択の結果」


 セリスが低く言う。


「……行動に出る」


 ノアが笑う。


「ここからが本番」



 問いは、返らなかった。



 だからこそ。



 彼らは、自分で選ぶ。



 その先にあるものを。



――第59話 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ