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第50話 「核心」

 未定義深層。


 その最奥。


 “核心”。


 そこは――


 何もなかった。


「……いや」


 アレンが呟く。


「違うな」


「“何もない”ですらない」


 リリアが小さく息を呑む。


「……ここまで来ると、逆に分かりませんね」


 エルミナも静かに言う。


「存在の基準が成立していない……」


 セリスが低く言う。


「……完全な外側」


 ノアだけが、少しだけ目を細めていた。


「……ここ」


「ほんとに最後だよ」


「だろうな」


 アレンが前に出る。


 その瞬間。



 “何かが生まれた”。



 いや。


 “元からあったものが認識された”。



 それは。


 形がない。


 存在がない。


 だが。


 確実に“すべて”。



【???】

状態:未定義核心

危険度:測定不能



「……」


 全員が動けない。


 圧でもない。


 恐怖でもない。


 ただ――


 “干渉できない”。


「……これ」


 ノアが呟く。


「無理なやつ」


 リリアが笑う。


「久々に来ましたね」


「勝てないやつ」


 エルミナが言う。


「……理論的に攻略不可能です」


 セリスが短く言う。


「……撤退も視野に入れるべきだ」


 アレンは静かにそれを見る。


 だが。


 何も読めない。


 何も分からない。


「……いいね」


 それでも笑う。


「完全に“外”だ」


 その瞬間。



 “それ”が動く。



 いや。


 “結果が確定する”。


 全員の存在が“消える”。



 アレン一人になる。



「……」


 静寂。


 何もない。


 自分すら曖昧。


「……ここまでか?」


 ふと、そんな考えがよぎる。


 だが。


「……いや」


 小さく笑う。


「まだだ」


 今までのすべて。


 観測。


 干渉。


 定義。


 支配。


 そして――


「……認識」


 呟く。


「結局これだ」


 目を閉じる。


 何も見ない。


 何も定義しない。


 ただ――


「あると認める」



 その瞬間。



 “それ”が確定する。



「……見えた」


 アレンが呟く。


 形はない。


 だが。


 確実に“存在している”。


「……なるほどな」


「お前」


「何でもないな」


 “それ”が揺らぐ。


「……当たりか」


 アレンが一歩踏み出す。


「なら」


「終わりだ」


 だが。


 触れない。


 干渉できない。


「……」


 少しだけ考える。


 そして。


「……違うな」


「壊す必要ない」


 手を下ろす。


「お前」


「“何でもない”なら」


「そのままでいい」


 その瞬間。



 “それ”が変化する。



 初めて。


 意味を持つ。


「……!」


 アレンが目を細める。


「そういうことか」


 “それ”は。


 敵ではない。


 ただの“空白”。


「なら」


「終わりだな」



 “何もしない”を肯定する。



 その瞬間。


 “それ”は完全に静止する。


 消えもしない。


 動きもしない。


 ただ――


 そこにある。



 世界が戻る。



「っ……!」


「戻った!」


 リリアが叫ぶ。


 エルミナが周囲を見る。


「安定しています……!」


 セリスが言う。


「……終わったか」


 ノアがアレンを見る。


「……やったね」


「まぁな」


 アレンが肩をすくめる。


「思ったよりシンプルだった」


「普通は無理」


 ノアが言う。


「絶対詰むやつ」


 リリアが笑う。


「でもアレンですし」


 エルミナも頷く。


「ええ」


 セリスが一言。


「……当然だ」


 ノアが小さく笑う。


「……ほんと」


「何者なの君」


 アレンが空を見る。


「ただの鑑定士だ」


「それは無理がある」


 全員一致。


 笑いが広がる。



 未定義領域。



 すべてを越えた先。



 そこには。



 “何もない”があった。



 そして。



 それでよかった。



――第50話 完


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