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第48話 「未定義の王」

 未観測領域。


 アレンが“定義”した空間は、まだ不安定ながらも維持されていた。


「……さっきより落ち着きましたね」


 エルミナが周囲を見渡す。


「時間も流れてる」


 リリアが軽く跳ねる。


「ちゃんと“世界っぽい”です」


 セリスが短く言う。


「……だが油断はするな」


 ノアは空間をじっと見ていた。


「……まだいる」


「だろうな」


 アレンも頷く。


 視る。


 だが――


「……?」


「見えないな」


 その瞬間。



 “空間そのもの”が歪んだ。



「っ!?」


 リリアが反応する。


「来る!」


 だが。


 何もいない。


 いや。


 “いないことになっている”。


「……違う」


 アレンが呟く。


「“隠れてる”んじゃない」


「“存在を確定してない”だけだ」


 ノアが小さく笑う。


「……来たね」


 その瞬間。



 “それ”が現れた。



 人型。


 だが。


 形は曖昧。


 存在が揺らぎ続けている。



【未定義存在】

分類:上位種

状態:自己定義中

危険度:測定不能



「……さっきのと違う」


 エルミナが息を呑む。


「自分で形を決めている……!」


 セリスが剣を構える。


「……格が上だ」


 リリアが笑う。


「いいじゃないですか」


「ボスっぽいです」


 未定義存在が口を開く。


「――定義確認」


「――侵入者」


「――排除」


 その瞬間。



 “結果”が発生する。



 セリスの腕が消える。


「っ……!?」


「セリス!」


 リリアが叫ぶ。


 だが。


 血もない。


 痛みもない。


 ただ――


「……存在ごと削られてる……!」


 エルミナが言う。


 ノアが低く言う。


「これ」


「さっきよりやばいよ」


 アレンは静かに前に出る。


「……いいね」


「やっと“上”来たな」


 視る。


 だが。


 完全には読めない。


「……全部は見えないか」


 未定義存在が揺らぐ。


「――認識」


「――干渉者」


「――排除優先」


 再び“結果”が発生する。


 今度はアレン。


 だが――


「遅い」


 ずらす。


 回避。


 だが完全ではない。


 肩が“消える”。


「……なるほど」


「完全には避けられないか」


 ノアが驚く。


「……それ避けるんだ」


 アレンが笑う。


「なら」


「こっちも上げる」



 空間が震える。



 定義がさらに重なる。


「ここは」


「俺の領域」


「俺のルール」



 未定義存在が揺らぐ。


 だが――


 すぐに再定義する。


「――対抗定義」


「――優先順位上書き」


 空間がぶつかる。


「……おもしれぇ」


 アレンが笑う。


「ルールの取り合いか」


 ノアが言う。


「これ」


「普通なら成立しないよ」


「だろうな」


 リリアが笑う。


「でもアレンですし」


 エルミナが頷く。


「ええ」


 セリスが腕を再構築しながら言う。


「……問題ない」


 アレンが一歩踏み出す。


「なら」


「もっと上だ」



 視界が変わる。



 “定義の外側”。


 そのさらに奥。


「……ここか」


 触れる。


 直接。


「お前」


「まだ“決まりきってない”な」


 未定義存在が揺らぐ。


「――異常」


「――解析不能」


 アレンが笑う。


「なら」


「決める」



 定義を押し付ける。



「お前は」


「ここで終わる存在だ」


 未定義存在が激しく揺らぐ。


 抵抗する。


 だが――


「無理だ」


 アレンが言う。


「俺の方が上だ」



 完全固定。



「終わりだ」



 崩壊。



 未定義存在が消える。


 完全消滅。



 静寂。



「……は?」


「今の何ですか?」


 リリアが呆然とする。


 エルミナが言う。


「完全に……上書きした……」


 セリスが低く言う。


「……支配したな」


 ノアがアレンを見る。


「……ねぇ」


「何だ」


「もう“観測者”とかじゃないよね」


「だろうな」


「完全に“外側の上”だよ」


 アレンが肩をすくめる。


「よく分からんが」


「強くなってるのは分かる」


「それが一番怖い」


 ノアが苦笑する。


 リリアが笑う。


「でも」


「いいじゃないですか」


「最強ですよ」


 エルミナも頷く。


「ええ」


「安心できます」


 セリスが一言。


「……問題ない」


 ノアが少しだけ目を細める。


「……ほんと」


「なんで壊さないの?」


 アレンが笑う。


「面倒だからな」


「やっぱ変」


 全員が笑う。



 だが。



 その時。



 さらに奥。


 “何か”が蠢いた。



【未定義領域:深層】

状態:未定義

危険度:???



「……まだあるな」


 アレンが笑う。


 ノアがため息をつく。


「……終わらないね」


「終わらせる気ないからな」


 三人が笑う。


「今さらです」


「ええ」


「当然だ」



 物語は。



 まだ終わらない。



――第48話 完


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