第45話 「その後」
――静かだった。
あの“最上位”での出来事のあと。
世界は、何事もなかったかのように動いている。
空は青く。
風は穏やかで。
街には人の声が戻っていた。
「……ほんとに戻ったな」
アレンは空を見上げる。
だが、以前とは違う。
“全部見える”。
構造も。
流れも。
選択の分岐も。
「便利すぎるだろ、これ」
「顔に出てますよ」
隣でリリアが笑う。
「ちょっと調子乗ってますよね」
「否定はしない」
アレンが肩をすくめる。
エルミナが静かに言う。
「ですが」
「それでも“干渉しすぎない”のがアレンさんらしいですね」
「まぁな」
セリスが腕を組む。
「……全部変えられる力があっても」
「変えないという選択」
「それが一番難しい」
アレンは軽く笑う。
「そこまで立派なもんじゃない」
「面倒なだけだ」
「嘘ですね」
リリアが即答する。
「完全に照れです」
「うるさい」
いつも通りの空気。
だが。
確実に違う。
世界の“位置”が。
そして。
「……で」
リリアがちらっと後ろを見る。
「いつまでついてくるんですか?」
そこには――
「え?」
ノアがいた。
「普通に一緒にいるけど」
「普通じゃないです」
エルミナが静かにツッコむ。
「あなた、立場的にかなり上ですよね」
「まぁね」
ノアはあっさり答える。
「でも暇だから」
「理由が軽すぎません?」
セリスが呟く。
ノアはアレンの隣に立つ。
距離が近い。
「で?」
「どうするの」
「何が」
「これから」
アレンは少し考える。
そして。
「……特に変わらん」
「依頼受けて」
「面白そうな場所行って」
「適当に生きる」
「……」
「……」
「……は?」
三人が同時に固まる。
ノアだけが笑った。
「最高じゃん」
「でしょ」
リリアがため息をつく。
「神ポジション取ってそれですか」
「神じゃない」
「外側だ」
「もっとやばいです」
エルミナが言う。
セリスが頷く。
「……制御できているのが奇跡だな」
ノアがアレンを見て言う。
「ほんとに」
「普通、壊すよ?」
「壊すの面倒だしな」
「やっぱり変」
リリアが笑う。
「でも」
少しだけ真面目な顔になる。
「だからいいんですよね」
エルミナも頷く。
「ええ」
「アレンさんがアレンさんであることが」
「一番価値があります」
セリスが短く言う。
「……同意だ」
ノアが少しだけ目を細める。
「……ほんと」
「不思議なやつ」
アレンが肩をすくめる。
「今さらだな」
そして。
前を見る。
「とりあえず」
「次の依頼行くか」
「え、もう?」
「当然です」
「問題ない」
「いいね」
全員一致。
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その時。
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アレンの視界に“何か”が映る。
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【未観測領域】
状態:未定義
危険度:???
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「……」
アレンが小さく笑う。
「まだあるな」
ノアがそれを見る。
「……ほんとに」
「終わらないね」
「終わらせる気ないからな」
「だろうね」
リリアが笑う。
「じゃあ行きましょうか」
「ええ」
「……当然だ」
ノアも笑う。
「付き合うよ」
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世界は広い。
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どれだけ上に行っても。
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まだ先がある。
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だから――
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進むだけだ。
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――第45話 完




