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第40話 「階層の理」

 外縁層。


 世界と世界の“間”。


 その曖昧な領域を、アレンたちは進んでいた。


「……静かすぎますね」


 エルミナが周囲を見渡す。


「音が吸われてる感じする」


 リリアも違和感を口にする。


 セリスは短く言った。


「……ここは“観測されていない領域”だ」


「正解」


 声が落ちた。


 全員が止まる。


 振り向くまでもない。


「また来たか」


 アレンが言う。


 空間が揺れる。


 そして――


 ノアが現れる。


 前回よりも、はっきりとした輪郭。


 存在感が強い。


「来たよ」


 軽い口調。


 だが圧は増している。


「……何の用だ」


「説明」


「……親切だな」


「気まぐれ」


 ノアは肩をすくめる。


 そして。


 指を一本立てた。


「まず一つ」


「ここ」


「“階層構造”になってる」


「……階層?」


 エルミナが反応する。


「そう」


 ノアは空間を軽く叩く。


 すると。


 景色が一瞬だけ変わる。


 上。


 下。


 奥。


 すべてに“層”が見える。


「世界」


「観測領域」


「外縁層」


「その上」


「さらに上」


 リリアが目を細める。


「……階段みたいですね」


「そんな感じ」


 ノアが頷く。


「で」


「問題はここから」


 ノアがアレンを見る。


「君」


「階層、飛び越えてる」


「……」


 沈黙。


 セリスが低く言う。


「通常は不可能か」


「不可能」


「だから異常」


 ノアはあっさり言った。


「観測者は“管理層”」


「その上に“調整層”」


「さらに上に――」


 一瞬、言葉が止まる。


「……まぁいいや」


「そこは後で」


 アレンが口を開く。


「で?」


「それ聞いてどうすりゃいい」


「簡単」


 ノアが笑う。


「上に来い」


「……は?」


 リリアが素っ頓狂な声を出す。


「今なんて?」


「上に来いって言った」


「無茶すぎません?」


 エルミナが即ツッコミ。


「普通に考えて無理ですよね」


「普通じゃないでしょ君たち」


 ノアが即返す。


「……否定できねぇな」


 アレンが苦笑する。


「でも」


「ただ行くだけじゃない」


 ノアの目が少しだけ鋭くなる。


「“試験”あるから」


 空気が変わる。


「試験?」


「うん」


「ここから先」


「“価値”が足りないと」


「消える」


 静寂。


 リリアが笑う。


「シンプルですね」


「だろ」


「で」


 アレンが聞く。


「合格条件は?」


「これ」


 ノアが指を鳴らす。


 その瞬間。


 空間が裂けた。


 中から現れる。


 三つの影。


 だが。


 観測者とは違う。


 もっと“濃い”。



【上位試験体】

分類:調整層端末

危険度:極高



「……なるほど」


 アレンが笑う。


「殴って勝てばいいやつか」


「雑だけど正解」


 ノアが頷く。


「じゃあ」


「始めよっか」



 瞬間。


 三体が同時に動く。


 速い。


 今までと比べ物にならない。


「来る!」


 セリスが前に出る。


 だが――


「っ!?」


 押される。


 一撃で。


「強っ……!」


 リリアが踏み込む。


 斬る。


 だが。


 通らない。


「硬いじゃなくて……!」


「“格”が違う……!」


 エルミナが叫ぶ。


「概念強度が高すぎる!」


 アレンは一歩前に出た。


「……いいね」


 笑う。


 完全に。


 楽しんでいる。


「やっぱこうじゃないとな」


 視界を開く。


 価値を見る。


 構造を見る。


 そして――


 “階層差”を認識する。


「……なるほど」


「上に行くには」


「これ超える必要あるってか」


 ノアが頷く。


「そういうこと」


「じゃあ」


 アレンが言う。


「越えるだけだ」



 その瞬間。


 価値が膨れ上がる。



 空気が震える。


 リリアが笑う。


「来ましたね」


 エルミナも頷く。


「本気モードです」


 セリスが構える。


「合わせる」


 アレンが一言。


「全員」


「上げる」



 価値が共有される。



「っ……!」


「これ……!」


「さっきより強い……!」


 リリアの動きが変わる。


 セリスの剣が通る。


 エルミナの魔力が干渉する。


 そして。


 アレンが踏み込む。


「行くぞ」



 戦いは。


 次の領域へ。



 ノアがそれを見て、小さく笑う。


「……やっぱり」


「面白い」


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