第39話 「上位の外側」
世界の外。
そのさらに外。
観測領域を越えた先。
そこに――
“境界の外側”があった。
「……」
アレンは足を止める。
「どうしました?」
エルミナが問いかける。
「いや」
「ちょっとな」
前を見る。
景色は、ある。
だが、違う。
色が淡い。
存在が薄い。
まるで――
「……未完成か」
リリアが呟く。
「そんな感じですね」
セリスも頷く。
「ここは“世界”ではない」
「途中だ」
「だな」
アレンは小さく笑った。
視界を開く。
鑑定。
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【領域】
分類:外縁層
状態:不安定
観測:制限あり
⸻
「……観測できねぇな」
「え?」
「制限されてる」
エルミナが眉をひそめる。
「誰に、ですか」
「……それが分からん」
その瞬間。
空気が変わった。
「――侵入者」
声。
だが。
今までの観測者とは違う。
もっと“生”に近い。
「来たな」
アレンが前に出る。
空間が揺れる。
そして。
一人の少女が現れた。
黒髪。
無機質な瞳。
だがその奥に――
明確な意思。
「……」
アレンの視界が反応する。
⸻
【不明存在】
分類:不明
階層:観測者以上
危険度:測定不能
⸻
「……上か」
アレンが呟く。
少女が首を傾げる。
「……へぇ」
「見えるんだ」
リリアが剣を構える。
「敵ですか?」
少女は少しだけ笑った。
「どう思う?」
「敵なら斬る」
「シンプルでいいね」
軽い口調。
だが。
圧が違う。
セリスが低く言う。
「……油断するな」
エルミナも魔力を展開。
「この存在……」
「観測者とは別系統です」
少女が一歩近づく。
距離が詰まる。
だが。
誰も動けない。
“格”が違う。
「……君」
少女がアレンを見る。
「面白いね」
「観測者、潰したんだって?」
「まぁな」
アレンは肩をすくめる。
「気に入らなかったから」
「理由が雑すぎる」
少女が笑う。
だがその瞬間。
視線が鋭くなる。
「でも」
「だからこそ危ない」
「……」
「君」
「バランス壊すタイプでしょ」
「否定はしない」
「でしょ」
少女は小さくため息をつく。
「めんどくさいなぁ」
リリアが一歩前に出る。
「で?」
「何しに来たんですか」
「それ」
少女はアレンを指差す。
「回収」
空気が凍る。
「……は?」
アレンが眉をひそめる。
「俺?」
「そう」
「異常個体」
「規格外」
「干渉領域突破」
「完全にアウト」
「……」
セリスが剣を構える。
「連れていかせるわけにはいかん」
エルミナも言う。
「同意です」
リリアが笑う。
「面白くなってきましたね」
少女はそれを見て、少しだけ驚いたように目を細めた。
「……へぇ」
「ついてくるんだ」
「当然だ」
アレンが答える。
「一人で行く気はない」
「……」
少女は少しだけ考える。
そして。
小さく笑った。
「やっぱり面白い」
「じゃあこうしよ」
一歩下がる。
「今は見逃す」
「……?」
「でも」
「次会った時」
「ちゃんと“選ぶ”から」
「何をだ」
「敵か、味方か」
その瞬間。
空間が揺れる。
少女の存在が薄れる。
「名前くらい教えとくか」
最後に言った。
「俺はアレンだ」
少女が少しだけ笑う。
「私は――」
一瞬、間があって。
「ノア」
それだけ言って。
消えた。
⸻
静寂。
⸻
「……」
「……」
「……何あれ」
リリアが呟く。
「ラスボス更新ですね」
エルミナが言う。
「確実に」
セリスが低く言う。
「……あれは別格だ」
アレンは空を見上げる。
「……いいね」
「面白くなってきた」
「余裕ですね」
リリアが笑う。
「まぁな」
アレンは言う。
「どうせやることは同じだ」
「全部見抜いて」
「全部ぶっ壊す」
三人が笑う。
「ですね」
「ええ」
「当然だ」
完全一致。
「……」
「……」
「……よし」
アレンは前を見る。
「次行くぞ」
⸻
物語は、さらに外側へ。




