第25話 「真価覚醒」
空気が、張り詰めていた。
上位存在が立つ。
圧倒的な“何か”。
ただそこにいるだけで、世界が歪む。
「……」
アレンは息を吐いた。
見えている。
だが足りない。
「あと一歩……」
その一歩が届かない。
リリアが構える。
「アレン」
「何」
「信じてます」
短い言葉。
だが強い。
エルミナも言う。
「あなたならできます」
セリスが剣を握る。
「指示を」
三人の視線。
全部が向く。
アレンに。
「……」
その瞬間。
何かが、変わった。
胸の奥。
神器が反応する。
いや――
共鳴している。
「……そうか」
アレンは呟いた。
「俺、一人でやろうとしてたな」
視界が開ける。
繋がる。
リリア。
エルミナ。
セリス。
三人の流れ。
魔力。
動き。
すべて。
「……見える」
いや。
違う。
“繋がった”。
⸻
【統合認識】
状態:起動
効果:戦場全体制御
⸻
「……これか」
アレンは笑った。
上位存在が動く。
だが。
遅い。
「右から来る」
「了解!」
リリアが動く。
完璧なタイミング。
「次、上!」
セリスが斬る。
「拘束!」
エルミナが魔力を重ねる。
すべてが繋がる。
ズレがない。
完全な連携。
「……これが」
「“真価”か」
上位存在が揺らぐ。
初めて。
明確に。
押している。
「効いてる!」
リリアが笑う。
「いけます!」
エルミナも声を上げる。
セリスが言う。
「続けろ!」
アレンは一歩踏み出した。
視界がさらに深くなる。
核。
構造。
そして――
“ルール”。
「……なるほどな」
アレンは呟いた。
「お前ら」
「こっちのルール壊してるだけか」
上位存在が反応する。
一瞬。
動きが止まる。
「図星か」
アレンは笑った。
「じゃあ――」
「戻してやるよ」
神器が光る。
世界が震える。
そして。
アレンの手が動く。
空間に触れる。
直接。
“構造”に。
「……」
書き換える。
流れを。
接続を。
異界とのリンクを。
「アレン!」
「今やってる!」
負荷がかかる。
頭が割れそうだ。
だが。
止めない。
「あと少し……!」
リリアが前に出る。
「全部受けます!」
セリスが支える。
「時間を稼ぐ!」
エルミナが魔力を流す。
「補助最大!」
三人が壁になる。
アレンを守る。
「……ありがとな」
小さく呟く。
そして。
最後の接続。
「これで――」
切断。
⸻
静寂。
⸻
上位存在の動きが止まった。
そして。
崩れる。
ゆっくりと。
形を失い。
消えていく。
完全消滅。
⸻
「……」
「……」
「……終わった?」
リリアが呟く。
アレンはゆっくり息を吐いた。
「終わった」
その瞬間。
力が抜ける。
「っ……」
倒れる。
だが。
受け止められた。
柔らかい感触。
「アレン!」
「大丈夫ですか!」
左右から支えられる。
完全密着。
距離ゼロ。
だが。
今はそれどころじゃない。
「……疲れた」
「当たり前です!」
リリアが怒る。
「死ぬかと思いましたよ!」
「ごめん」
「謝ってもダメです!」
だが。
その目は少し潤んでいる。
エルミナも静かに言う。
「……無事でよかった」
セリスが一歩近づく。
「……認める」
「え?」
「お前は」
「この場で最も重要な存在だ」
短い。
だが重い言葉。
アレンは苦笑した。
「やっとか」
「最初からだ」
珍しく、少しだけ笑う。
⸻
その時。
視界に情報が浮かぶ。
⸻
【異界接続】
状態:一時停止
根源:未解決
⸻
「……」
アレンは空を見た。
そして。
静かに言う。
「終わってないな」
リリアが笑う。
「当然です」
エルミナも頷く。
「ここからが本番です」
セリスが剣を握る。
「ならば」
「次も斬るだけだ」
アレンは笑った。
「全部見抜く」
そして。
世界は次の段階へ。
“真価”は、まだ先にある。




