表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/111

圧倒的な力、証明の時

――ルーミア村、広場。


魔物の群れが村の外から押し寄せ、空は不穏な雲に覆われていた。地響きとともに現れた黒い巨体の魔物たちは、今までとは桁違いの存在感を放っている。


「これが……元凶……」


エリシアが小さく呟いた。彼女の額には冷や汗が滲んでいる。その隣でリシェルが腰の剣を握り締め、険しい表情でカズヤを見る。


「カズヤ、どうする?この数、この強さ……正直、まともに戦えばこちらの損害は免れない」


「逃げ道は?」


「無い。村の出口も全部塞がれた」


エリシアが苦い顔をしながら首を振る。


カズヤは深く息を吸い込み、眼前の脅威を冷静に見据えた。


「じゃあ、まとめて片付ける」


その言葉に、エリシアとリシェルの目が見開かれた。


「……本気で言ってるの?」


「無理しないで、私たちも戦うから」


心配そうに声をかけてくる二人を、カズヤはふっと笑って振り返った。


「無理じゃないよ。むしろ、お前たちの出番は無いくらいだ」


その瞬間、カズヤの周囲に金色の光が溢れ出した。風が逆巻き、地面が震える。


「《光のシャインブレード》」


右手に光の剣が出現し、左手には《雷のサンダースピア》が瞬時に生成される。更に腰には《炎のフレイムアロー》が並び、背後には《氷のグレイシャルシールド》が浮かぶ。


エリシアとリシェルは息を呑んだ。


「こんなに……一度に武器を生成するなんて……」


「まさか、属性まで……!」


カズヤは軽く肩を回し、目の前の魔物の群れに向けて踏み込んだ。


「さぁ、派手にいこうか」


◆ ◆ ◆


第一波、巨体のオーガが吼えながら突撃してくる。


カズヤは躊躇なく《シャインブレード》を一閃――光の斬撃がオーガの胴を真っ二つに切り裂いた。血飛沫も、腐臭もない。浄化の光が魔物の体を分解し、塵一つ残さず消し去った。


「っ……!」


エリシアは震える指先を握りしめた。次々と押し寄せる魔物たち。数だけでも百体は優に超えている。


しかし――。


「《雷連撃サンダーバースト》」


カズヤが放った雷の槍は大地を裂き、無数の分岐した雷撃が前線の魔物をまとめて貫いた。


「なっ……」


「化け物か、あの男は……」


呆然と呟くリシェル。目の前の光景は常識を超えていた。


次々と現れる魔物も、カズヤの放つ属性武器の前には瞬く間に消し飛んでいく。《フレイムアロー》が空から火雨のごとく降り注ぎ、後方からの援軍もまとめて焼き払う。《グレイシャルシールド》は防御だけでなく、魔物の動きを封じる氷結波を放ち、戦場を完全に掌握していた。


「これが……本当のカズヤ……」


エリシアの声は震えていた。恐怖ではない。圧倒的な力を目の当たりにした興奮と、心の奥底から湧き上がる感動だった。


「……終わらせる」


カズヤはゆっくりと手を上げた。四つの武器が一斉に輝き、空が瞬時に光と雷と炎と氷で覆われた。


「《四属性終焉クアドラ・オブリビオン》」


最後の一撃が放たれる。大地を抉り、空を裂き、全ての魔物が一瞬で飲み込まれた。


◆ ◆ ◆


静寂が訪れる。


黒い瘴気も、禍々しい気配も全て消え去った。


エリシアとリシェルは、ただただ呆然とその場に立ち尽くしていた。


「終わった……のか?」


リシェルの呟きにカズヤは肩を竦めた。


「終わった。元凶も残党もまとめて消えた」


信じられないというように、二人は互いに顔を見合わせる。


エリシアがゆっくりと歩み寄り、カズヤの前で足を止めた。


「……あなたは、やっぱりただの天使じゃない。私たちの救世主……いいえ、私たちの……」


言葉の続きをエリシアは口にしなかった。しかし、その頬は紅潮し、潤んだ瞳が全てを物語っていた。


リシェルも口を開いた。


「今の戦いを見て……私は……心から思った。……あなたについていきたいって」


カズヤは気恥ずかしそうに後頭部をかいた。


「まあ、任務だからな。守るのは当然だろ」


「任務が終わっても、私は……離れないかもしれないわよ」


リシェルが冗談めかして笑いかけたが、その眼差しは本気そのものだった。


カズヤは軽く苦笑した。


(……やれやれ、また面倒事が増えそうだな)


だがその顔はどこか嬉しそうでもあった。


◆ ◆ ◆


数日後――。


ルーミア村は平穏を取り戻し、村人たちは笑顔を取り戻していた。エリシアとリシェルもカズヤと共に過ごす時間が明らかに増え、距離は目に見えて縮まっていった。


カズヤはふと天を仰ぐ。


「ヴェルグ……これが俺の力ってやつか。……ま、悪くないかもな」


ふと笑うカズヤの背後から、エリシアとリシェルの優しい声が重なる。


「カズヤ、ご飯できたわよ」


「一緒に食べましょう」


カズヤは振り返り、穏やかに頷いた。


「行こうか」


新たな絆と新たな力を得たカズヤは、天使としての次なる試練へと歩みを進めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ