9殺目 訓練
魔法講習会が終わりキルとシロ、それからクロは暗殺部隊の部屋に戻る。
「今帰ったぞ」
げんなりした顔でクロ達は戻ってきた
「はッ、どうやら姉貴に絡まれたようだなッ」
そこには独裁者の如く、踏ん反り返っているベルが居た。
「うっせ」とクロが。
クロとキルはあの後ネメシスから呼び出され、最近訓練生達が真面目に訓練をしないという愚痴を聞いていたのだ。それも酒を飲みながら。
そう、クロ達がネメシス教官が苦手な理由は愚痴を言いに来る事だったのだ。それも会う度毎回なのである。
暗殺部隊の仕事は基本、書類整理とその日に下される任務である。
書類は貴族からのクレームや民衆からの意見などだ。他にも税や商人達の動向などもある。
なぜそんなことをこの暗殺部隊がやっているのかというと。
他の部署に比べて圧倒的に仕事が少ないからである。
そして、ふとした時時計台の大鐘がなる。
大鐘は、ベネティウス城の真隣にあり、「朝食時」「昼食時」「訓練時」「就寝時」と1日に4回なる。
今鳴ったのは「訓練時」である。
「よしシロ、訓練に行くぞ」
「分かった。今行く」
……………
…………………………
ベネティウス城、訓練場
辺り一帯に広がる砂地がこの訓練場なのだ。周りは2mほどの石の壁で囲まれている。その壁の外は観覧席もある。一見すると闘技場のような作りになっている。
そこに対峙している黒髪の男と黒髪の幼女がいた。
「じゃあ、いくぞ!」
とシロが言う。
「あぁ、いつでも来い!」
刹那···火花が散る。
双方の短剣が交わり、力がぶつかる。
「感覚上昇」
感覚上昇は全感覚の一段階下の身体強化魔法である。
そしてクロが加速し、火花が激しさを増す。
シロはクロの加速について行けず防戦一方である。
「憑依術・足軽」
刹那···シロが加速する。
双方の短剣が金属音を響かせる。
シロが飛び上がり短剣を振り下ろす。それをクロは易々と受け流す。シロは地面に着地すると同時に短剣を投げた。その短剣はクロの右太ももにかすって通り抜けた。
「···っ!」
クロが傷ついた太ももに気を取られた瞬間にクロに殴りかかった。
「負けたっ!!」
そう叫でいたのは···シロだった。
シロは訓練場の砂地に大の字になっている。
「絶対勝ったと思ったのにぃ〜!」
「いや、見事だったよ。少なくともこの城内で俺に傷痕をつけることが出来るのはシロ一人だけだ」
「クロっ···」
パッと明るい表情をシロは見せる。そしてその表情はフッと暗くなる。
「でも、最後の負け方が···猫みたいに持ち上げられて終わるなんてぇ〜!!」
そう、シロは最後殴りかかった時に猫の如く後ろ襟を掴まれ持ち上げられたのだった。
「それにしてもシロ、お前身体強化魔h「忍術」···」
「···」
「···」
「身体強化魔h「忍術!」」
「···忍術使えたんだな」
何故かシロはここを譲ろうとしない。原理を聞いてみたら魔法と全く同じだった。
そもそも魔法(忍術)はイメージ力がとても重要なわけで、決まった詠唱は無いのである。それこそ無詠唱で発動出来る。(その分威力、効果は下がるが)ちなみに、一番威力が上がるイメージは穴からその魔法が出てくるイメージだそうだ。
「あらかた色んな忍術は使えるぞ」
フンスとシロは誇らしげな顔で答える。
「そうか」
優しい表情で、クロが微笑む。
「···クロ」
シロは思いつめた表情でクロに詰め寄る。
「な、何だ?」
「そろそろ話してくれないか?···その···暗殺部隊のこと」
「···ええと···言わないとダメですか?」
まさかの質問に思わず敬語になってしまう。
シロは首を縦にふる。
「まぁいつかは話すべきだと思っていたけど···話す機会が無かったからな···分かった。話すよ俺達暗殺部隊のこと。エゴ·タル含めた元暗殺部隊のこと」
そう言ってクロは語りだした。少し前の昔話を。忘れ去られるべき物語を。悲しみを増す黒の暗殺者の心が晴れるまで。
ネクロフューズ·ベネオーズ 殺人数 不明
ヤミネ·シロ 殺人数 100人
いつの間にかユニークアクセス300人も越えててとても驚きました。10割趣味の作品なのによく見てくれるなぁ。本当にありがとうございます!