第11話 色のある世界
朝の光が、研究所の窓を満たしている。
昨日までの騒がしさが、嘘のように静かだった。
──ちゃんと、眠れた。
それだけで、少しだけ安心する。
立ち上がり、背伸びする。
「……コレット先輩は」
足は、自然と医務室へ向いていた。
「……おはようございます、コレット先輩……」
「おはよう! クラリスも、お見舞いに来てくれたのね」
ベッドから、コレットが手を振る。
「まだ起きてはだめよ、コレット」
「分かってるって、マーセル」
いつもの様子に、ほっと息をつく。
「あのね……夢、見てたの。
うまく思い出せないけど……呼ばれてる感じで」
「先輩……」
「あはは、変だよね……?」
「いえ、そんなことは……」
「コレットはまだ疲れてるのよ。ゆっくり休んで!」
「もう、マーセルはすぐそれだー」
コレットに手を振り、マーセルと共に医務室を後にする。
「……コレット、明るく振舞ってるけど。昨夜もうなされてたらしくて……」
「そうだったんですか……」
なんとなく沈黙したまま、研究所に入る。
さっきの言葉が、引っかかっていた。
「これまでの状況を踏まえて、研究所を──仮称だが、“出張所”を建設することとなった」
セドリックの言葉に、研究員たちの間に緊張が走る。
「場所は、クラリスたちの村の近くと──山岳地帯。この二箇所になる」
今度は、ざわめきが起きた。
「東の村出張所の所長には、セリウス。そして──山岳地帯には、エリオットを推薦してある」
一拍。
セリウスが、進み出て礼を取る。
「承知しました」
迷いはなかった。
「え。俺……!?」
エリオットが、仰け反る。
「ふは、お前に務まるのかよ!」
「山岳地帯、副所長はカイル。お前だ」
セドリックが告げる。
「一蓮托生かよ!!」
嘆くカイル。
だが──どこか、安堵したような明るさだった。
二人の様子にクラリスが笑い──
ふと、窓の外を見る。
空は、青い。
──ちゃんと、色がある。
風が、静かに吹いた。




