愛の反動 04
困ったような表情でさりげなく距離をとろうとするバレッタにかまいもせず、男はぐいぐいと距離を詰めている。
周囲の目など気にもならなかった。
この後のことを考えたら、今動かないほうがいいという冷静な判断さえ忘れて、一直線にバレッタと男たちのもとへと向かう。
「おや、ラウド様。」
「…どうも、ベル―ト卿。」
いつもの笑みを取り繕ったつもりだったが、わずかに不機嫌さを醸し出していたのかベル―ト卿がこちらの機嫌をうかがうように言う。
「バレッタ様をご存じで?あまりこう言った場にいらっしゃらないこともあって、お話しする機会もなく。」
「あぁ…ザミット家にはお世話になっているからね。…なかなかお会いする機会がなかったが。」
ちらりとバレッタを見ると、一瞬交差した視線をぱっと逸らされる。
(…そらされた…?)
ショックを受けていると、バレッタは視線をさまよわせたかと思うときれいなカーテシーで深々と礼をする。
「はじめまして、ラウド様。ザミット家二女のバレッタと申します。」
──はじめまして。バレッタの放った言葉が頭の中を何度も何度もリピートする。
(…忘れている…?いや、気が付いてない…?)
愕然とし、余計な言葉が零れ落ちないように口元に手を当てる。
「…ラウド様?」
「あ、あぁ…よろしく。」
バレッタが心配するようにこちらを覗き込む。下から見つめる顔に入り込んだ照明の光が大きな瞳をさらに際立たせる。
しかしベル―ト卿が放った言葉に思わず低い声を漏らす。
「では、ラウド様。僕たちはこれで。」
「…なんと?」
「ちょうどダンスをご一緒いただくことを快諾いただけたところでして。」
「いえ…私はできれば…。」
バレッタが下唇を小さく噛みながら恐縮したように引き下がろうとする。
──昔見た、心の内を隠すときに見せた癖と変わっていない。




