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愛おしい記憶 -02


──そうして何度か抜け出すうちに、ある日、ひとつの出会いがあった。


いつものように屋敷を抜け出し、晴れ切った気持ちのままに路地を駆け抜けていたラウドは、角を曲がった先で誰かにぶつかる。


思わずよろめいた自分とは違い、相手は尻もちをついたようだ。

ざざっと石畳を滑る音が向かいから聞こえ、思わず声を漏らす。


「あっ…!!」


地面に散らばったのは、色とりどりに装飾されたクッキーだった。


街の子供たちが、週末の春の訪れを祝う祭りに備えて作ったものだろう。


「あぁ!お前何してんだよ!」


「ごめぇん…!!」


後ろからかけてきた仲間と思しき少年が、転んだ少年を助け起こしながら叱る。


しかし、泣きそうになった少年に慌てたもう一方は、励ましながら落としたクッキーを大切そうにバスケットの中に戻していく。


「…。」


──早く手伝わなきゃ。


そうして、ごめんと、ただ一言謝ればいいだけなのに、何故かその一言が出てこなかった。


向かいに立つ少年は利発そうな眉を少し引き上げてチラリとラウドを見る。


しかし特に何を言う訳でもなく、せっせとクッキーを戻していく。


「あ、あの…。」


早く謝らないと。


そう思い、ようやく言葉を紡ぎだそうとした時、後ろから駆けてきた子供たちの輪の中から一人の女の子が飛び出してきた。


「ちょっと、ルートどうしたの?!」


「バレッタ、いや、ちょっとクッキー落としちゃったんだ。」


ルートと呼ばれた少年が頭を掻く。叱られたと思ったのか、未だバスケットを握りしめた少年は涙声で言う。


「ごめん、バレッタ…。」


「あぁオットー泣かないで!!」


女の子はバレッタと言うらしい。


下町の子供たちと同じような衣服を身につけているが、明らかに他の子達より洗練された身のこなしをしていることから、自分と同じようにどこからか抜け出してきていることは一目でわかった。


バレッタがオットーを慰めるのをみて、後ろから来た仲間たちも次々とやってきてはオットーを慰める。


皆、目の前に立つラウドに気がついているが、チラチラのこちらを見るだけで何も言ってくることはない。


おそらく、自分がどこからかお忍びで来ているとバレているのだろう。


「ちょっと!あなたも手伝って!」


──1人を除いては。

腰に手を当てて怒る少女。その目はラウドの身分など全く意に介していない。


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