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『帝都モノづくり乙女 ―冷静沈着な狂気令嬢は、未来の付喪神(AI)と文明を爆走させる―』  作者: 仁胡 黒


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第十五話:特ダネは分解の味。あるいは自動記者会見機(ぷれす・りりーす)の猛威

第十五話は、現代の「ネットミーム」や「炎上広告」が大正時代の新聞記者を迎え撃つ、言葉の暴力コメディ回です。

 アイリスの送る「怪しいネット広告風のセリフ」を、生真面目な少尉が全力で叫ぶというシュールな対決が見どころです。

「……九条院家には『発光する怪人』が棲み、夜な夜なカレーの異臭を放ちながら空を飛んでいる。――お嬢様、今朝の帝都新聞にそう書かれておりますぞ!」


真壁少尉は、震える手で新聞を広げた。そこには、前回の実験で「絶叫」しながら「発光」し、なぜか「カレーの匂い」をさせていた少尉の、世にも恐ろしい想像図が掲載されていた。


「あら。語弊がありますわね。飛んでいたのは少尉ではなく、仮想の視点かめらですのに」


結月は優雅に紅茶を啜りながら、庭の生け垣を乗り越えようとしている「特ダネ」狙いの記者たちを冷ややかに見つめた。


『お嬢様、門の外に記者が十人。みんな「九条院家の秘密兵器」を暴こうと必死だよ。……あ、一人、少尉のポエムが書かれた手帳を拾おうとしてる』


「ぬおっ!? あれは帝国陸軍の機密(と私の魂)が詰まった手帳! 貴様ら、そこを動くなぁ!」


少尉が飛び出そうとするのを、結月が鋭い声で制した。


「お待ちになって、少尉。野蛮な対応は九条院の品位を下げますわ。……こういう時は、私の新作、『九条院式・自動記者会見機(一号)』の出番です」


結月がガレージから引き出してきたのは、巨大な拡声器に、タイプライターと目潰しのような閃光電球フラッシュを無理やり溶接した、禍々しい三輪走行機だった。


「少尉、これを操縦して門の前へ。アイリスが脳内から『最も世間を騒がせる回答』を転送しますから、貴方はそれを拡声器で叫ぶだけでよろしいわ」


「はっ! 承知いたしました! ――って、アイリス殿、何を言わせる気だ!?」


『お安い御用だよ、少尉! 2026年の「炎上商法」と「クリックベイト」の粋を集めた、最強の回答リストをインストールするね!』


少尉が機械に乗り込み、門を開いた瞬間。記者たちが一斉に群がった。

「真壁少尉! あの光る怪人の正体は!?」「九条院家は軍の秘密兵器を作っているのか!?」


アイリスの合図と共に、少尉の口が勝手に動き出した。


「……静粛に! ――『【悲報】九条院家、ガチでヤバい発明をしてしまう。驚きの結末は……概要欄(門の下)をチェック!』であります!!」


「が、がいようらん……? 何だそれは!?」


『いいよ少尉、次! センセーショナルにいこう!』


「……『拡散希望! この発明、知らないと人生損します。全帝都が泣いた、衝撃の真実とは!?』にございます!!」


少尉の野太い軍人ボイスで放たれる、あまりにも大正時代とかけ離れた「ネット用語」の奔流。記者たちは困惑し、メモを取るペンが完全に止まった。


「さらに……『【検証】軍人がカレーを被って雷に打たれてみた。結果は……100万バズ確定!』であります!!」


ドガシャァァン!!


少尉が叫ぶと同時に、機械に取り付けられた巨大フラッシュが爆発的な光を放った。記者たちは「目がぁぁ!」と叫びながら次々と退散していく。


「……ふむ。情報の撹乱と、物理的な目潰し。完璧なメディア戦略ですわね」


結月は満足げに、退散していく記者たちの背中を見送った。


「……お嬢様……。私は、自分が何を言っているのか、一言も理解できませんでした……。ただ、心が……心が、ひどく汚れた気がいたします……」


少尉は機械の上で、魂が抜けたような顔で項垂れた。


『少尉、これからは「バズり軍人」として帝都の有名人だね! 明日の見出しは「九条院家の番犬、意味不明な呪文を連呼」で決まりかな!』


アイリスの陽気な笑い声が、静まり返った九条院家の庭に空虚に響き渡るのであった。

第十五話をお読みいただきありがとうございます。

 ついに「バズる」という概念を理解しないまま、帝都を混乱に陥れた真壁少尉。彼の尊厳は、今や風前の灯火です。

 さて、記者たちは追い払いましたが、少尉が叫んだ「ガチでヤバい発明」という言葉を真に受けた、本当の「ヤバい組織(鉄歯会の本隊)」が動き出します。

 次回、お嬢様の工房が狙われる!?

 名付けて「工房防衛線。あるいは全自動・自動迎撃庭園の罠」。

 また次回もお会いしましょう!

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