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プロローグ

新展開、始動ですw


今回はがっつりざまぁします、R-15は保険じゃないです。

流血、部位欠損、四肢欠損、残酷表現アリになりますので

苦手な方は、今回の話は読まないか

残酷シーンは薄目で通り過ぎた方がいいです。

 男が机を激しく叩く。

 息もひどく荒く、肩が激しく上下している。

 髪も無精ひげも伸び放題、体は痩せ手も足も細く、眼孔も頬も落ちくぼんでいる。

 まるで何かの病に侵されているかのようで、酷く不健康だ。

 そんな男は、全生命力で目の前のモニターを睨みつける。


「違う、違うっ! こんなオマケのような展開じゃないんだっ!! もっとしっかり救いたいんだ……もっと、もっとっちゃんと、彼女をっ」


 プロ仕様のハイスペックなデスクトップパソコンが、男に応えるかのようにフォン!とファンを鳴らした。







「クレリット・エルランス、貴様との婚約破棄を言い渡す!」 


 学園の卒業パーティー開始を告げようとした矢先、司会進行の生徒会長の声を押しのけてホール中に響く声で、金髪碧眼まさに貴公子といった眉目好いこの国の第一王子アーサー・エルドラドンは、自分の婚約者である大公令嬢に向かって婚約破棄を宣言した。

 それは突然のものだがしかしある意味、薄々予想がついたものでもあった。

 着飾った令息、令嬢がザワザワと遠巻きに取り囲む中、見世物のように曝され、婚約破棄を突きつけられたクレリットは、顔面蒼白になりガタガタと震えている。

 アーサーは婚約者のクレリットを放って、別にエスコートしていた女性を自分の横に出す。


「私は真実の愛を見出した。 ここにいるローズ・リアン男爵令嬢を、私の婚約者とする」


 ローズ・リアンはピンクブロンドのふわふわカールにピンクの瞳で、小動物のようにまん丸で下がり気味の目と、薔薇色の唇を持つ愛らしい少女だった。

 そんな彼女は拙いながらもゆっくりと淑女の礼をする。

 それを見てクレリットの目が零れ落ちんばかりに見開かれた。


「なっ、なりません殿下、そのようなお言葉を口にしては、大体この婚約は王家と公家のっ!」

「陛下と大公にはすでに話を通し、了承の印を貰ってある」

「……そんな」


 目の前に突き付けられた羊皮紙をクレリットは震える手で受け取った。

 そこには確かに、双方の婚約を破棄する旨が書いてあり、王家と大公家の印が押されてある。


「貴様は王妃の器ではない。 何だその化粧っ気のない顔は、質素で飾り気のないドレスは、装飾品の類もない地味な格好は」


 それは、確かにアーサーの言う通りだ。

 プラチナブロンドの髪は縦ロールに巻かず、ハーフアップに結い上げただけ。

 化粧も最低限で薄く蜜を唇に塗っただけ。

 着ているドレスはデビュタントの時に着た、淡い光沢を放つ布タックで寄せられたスッキリとしたデザインの純白なドレスを手直しした物で、装飾品も付けてはいない。

 本人自体も含め質は極上品だが、周囲の派手な飾りや宝石のついた極彩色のドレスと比べれば、地味だと見劣りするだろう。

 だが、これはクレリットも一言物申したいかもしれない。

 ならばこのような場合、本来ならば婚約者がドレスや装飾品を贈るのが筋なのだ。

 だがここ近年、アーサーからの個人的な贈り物など皆無。

 ならば大公家の余りある財を施せばいいのだろうが、そうできない個人的な事情もあって……。

 今にも崩れ落ちそうなクレリットの様子に、アーサーはフン!と鼻を鳴らす。


「大体、貴様は神殿との距離が近すぎる。 王家と神殿は対等でなければならぬ、組してはならぬのだ。 その姿もまるで修道女のようではないか」


 クレリットは母親を亡くした四歳の時から、神殿に嵌り祈りを捧げるようになっていた。

 だからといって、国教のミクルベ教を盲目的に信奉している訳ではなく、神殿という大きな括りに帰依(きえ)しているような形だ。

 大公令嬢が足繫く神殿に通う、それは王家でも大公家でも最初は歓迎された。

 将来の王妃が国教を尊ぶ、なんと素晴らしい事か、幼いのにしっかりしていると周囲も持て囃した。

 だがやがて、頻度、時間、そして金銭の使い方で、周囲は困惑していく

 王妃教育で王城に上がる時間よりも、学園にいる時間よりも、街屋敷(タウンハウス)領主館(マナーハウス)にいる時間よりも、神殿にいる時間の方が長いのだ。

 正に時間があれば、だ。

 ただ、特別に何をするという訳ではない。

 祭壇前で祈っている事もあれば、神官と語り合っている事もあり、大神官の説法を聞いている事もあり、清掃や炊き出しや支援等の奉仕活動に精を出している事もある。


 そして寄付する金銭が尋常でなかった。

 王家からの支度金は一切受け取らず、自分に賄う金銭は全て私的財産からで毎年確約されている個人年金を最低限だけ残して質素で清貧に過ごし、後は全部神殿に寄付をする。

 お陰て大公令嬢は、平民の間では絶大な人気を誇っている。

 その辺の貴族など目ではなく、大公家よりも下手したら王家よりも『市井の聖女』として個人的に慕われている。

 それに追随して神殿の人気も鰻登りだ。


 貧しい者への施しや、社会への奉仕は貴族の義務ノブレス・オブリージュとはいえ、これはやりすぎである。

 貴族としての行動をせず関係を持たず、神殿にばかり肩入れする第一王子の婚約者。

 これは、貴族にとって由々しき事態。


 そしてその弊害が今、冤罪となってクレリットに襲い掛かる。

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