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「太初の鯨」
くじらのうた
うみのなかの みずがふるえる
わたしたちの みずがふるえる
くじらがうたっている
わたしには きこえる
みずのなかの こえが
わたしたちが およいでいる やわらかなせかいに
とうめいなせかいに
やさしいせかいに
うたがひびく
あまえるように
はてしない うみのなかを
ひとり
およいでいく
みずとからだがとけあうとき
みずが からだを わすれ
からだが みずを わすれる
どこまでも おりていく
なめらかに おどりながら
さみしくもなく うれしくもなく
それがまた さみしくて うれしくて
くじらは うたう




