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次の日、わたしは昨日約束した通り朝霧飛鳥と映画を観に言った後、夜ごはんを食べに行った。
昨日の高級すぎて恐縮してしまうレストランとは違い、今日連れて行ってくれたのは高級すぎないアットホームな感じの料理屋さんだった。緊張が薄れたせいか、今日は朝霧飛鳥とわりと楽しく話せた気がする。こうやって話していると、朝霧飛鳥がいかに出来た人間なのかということが嫌という程伝わってくる。何をしてもスマートで、聞き上手で話も面白くて...。すごい、なぁ。天は王子に二物も三物も与えてしまったんだなぁ。
「今日も楽しかったね。また遊ぼう?」
!!なんと!またも王子の方から誘ってくれるとは!これはちょっと望みあるのでは...?
「ぜひ!」
「明日どうかな?」
え?明日...って、そうすると三日間連続で会うことになるけど。いいの!?朝霧飛鳥暇なの!?これはもしかしてまじでワンチャンあるのでは!?
「だ、大丈夫です」
「よかった。じゃあまた明日。迎えにくるね」
そして王子は颯爽と去っていった。
....わたしという平凡一般人が物珍しいだけなのか、わたしのことがす、好きなのか...。
いや、後者はさすがにおこがましいか...。
でもこれからの私の頑張り次第で...どうにか...。
それからも私は朝霧飛鳥と何度か会い、徐々に徐々に距離を縮めていった。そのかいあってか、そこそこ仲良くなることに成功した。けれど朝霧飛鳥が私のことを恋愛的な意味で好いているともあまり感じられず、そのうちに期限の3週間がきたのだった。
もう、玉砕覚悟で告白してしまおう。最近は朝霧飛鳥と会うためにバイト時間削ってたし、これ以上はグダグダやっていられない。
そんな気持ちで、半ばヤケクソ気味に朝霧飛鳥に告白した。
まさかOKされるなんて、思ってもみなかったけど。
ーーーーー...
「みゆちゃん?」
「ぁ...」
やばい、トリップしてた。意識が完全に三年前に飛んでいた。
「迎えにきたんだ。かえろ?」
「迎えにきた、ってなぜですか。あれからもう三年も経ったんですよ?なにを今更」
そう、もう三年もたった。全ては過去のことなのだ。借金も、彼も、私の彼へのーーも。
「もしかして拗ねてるの?僕が迎えに来るの遅かったから。ごめんね、本当はすぐにでも迎えにいってあげたかったんだけど、その前にやるべきことがあったんだ。でも、拗ねてるみゆちゃんもかわいいね」
彼の手が私の方へ伸びる。
その手をとっさに振り払った。
「っ触らないで!」
過去だ過去だ過去だ。彼のことはもう思い出したくない。私は今幸せなのだ。だから過去なんてしらない。いらない。消えて。
「あ、ごめんね。怒ってるみゆちゃんに対してかわいいだなんて、からかわれてるみたいで嫌だったよね。本当にごめんね。反省してる。もうしないよ。だから、触らないでなんて、言わないで...」
眉尻を下げて悲しそうな寂しそうな表情を浮かべる彼に、咄嗟に謝ってしまいたくなる。でも、
「わたし、もうあなたのこと思い出したくないんです。お願いだから、帰ってください」
彼とは関わらないと決めたから。
「...分かってるよ。みゆちゃんだって本当は僕と離れたくなんかなかったんだよね」
「は?」
「僕、怒ってないよ?心配しないで。悪いのは全部、あの人だもんね」
なにを言ってるんだ。先程から全然話が通じない。噛み合ってるようで全然噛み合ってない。あの人...?
「大丈夫、邪魔者はもういないよ。だから安心して僕のところに戻っておいで。帰ろう」
先程よりも素早い動きで朝霧飛鳥の手がこちらに伸びてきて、わたしの背中を捉え、引き寄せた。
「あぁ...。久しぶりのみゆちゃん。かわいい...かわいいなぁ...。大好き。いい匂い...」
朝霧飛鳥はわたしの首筋に顔を埋めると、鼻をうなじにぐいと押し付け、深く息を吸い込んだ。
「おかえり、みゆちゃん」
やっと話が進み始めた気がします。




