「第二章:レイチェルの火花」
ついに動き出した水不足の解決策。レイチェルは本当にこの危機を解決できるのでしょうか、それとも……?
ジョサイアとレイチェル、二人の運命が大きく動き出す第2章、ぜひお楽しみください!
夕暮れの小道。ジョサイアは黒いコートの裾を引く、小さな力に足を止めた。
視線を落とすと、そこには潤んだ瞳でこちらを見つめるレイチェル・グローリーがいた。
「……行くな、ということか?」
ジョサイアの問いかけに、彼女はこくりと頷く。その姿に、彼は溜息をつきつつも、どこか温かいものを感じていた。
「やれやれ……わかったよ。お嬢様のお供といこうか」
彼がひょいとレイチェルを抱き上げると、二人の奇妙で確かな絆が結ばれた瞬間だった。
巡回中、レイチェルはジョサイアの肩の上で楽しそうに揺れている。
「わふっ、ふふっ!」
「おいおい、そんなに楽しいか?」
ジョサイアが苦笑すると、レイチェルは得意げに空を指差す。だが、村人たちと水不足の深刻な話題を交わすジョサイアの隣で、彼女はふと何かを見つけ、ぴくりと反応した。
通りかかった商人の手にある、一枚の羊皮紙。
――地図だ。
レイチェルの瞳から、先ほどまでの幼さが消えた。彼女は商人のローブをちょんちょんと引っ張り、背伸びをして地図を指差す。その姿はあまりに愛らしく、好奇心に満ち溢れていた。
「ねえ、おじさん!」
「ん? なんだい、リトル・ミッシー(小さなお嬢さん)。何がほしいんだい?」
商人が屈み込み、優しく尋ねる。レイチェルは小さな指で羊皮紙をちょんちょんと突き、首を傾げた。
「その地図、近くに川が流れてる?」
「は……?」
商人は絶句した。幼子の口から出る質問とは思えない。
「川が、流れてるかって……お嬢ちゃん、それがわかるのかい?」
面白がった商人が地図を広げると、レイチェルは迷いなく地面に座り込み、学者のような眼差しで図面を検分し始めた。
「レイチェル! 何を勝手なことをしている!」
ジョサイアが駆け寄る。彼はまるで子猫を運ぶ母猫のように、服の襟首を掴んでひょいと彼女を抱え上げた。
「すみません、この子は少し……」
ジョサイアが頭を下げる中、レイチェルは悪戯っぽくジョサイアを見上げて言った。
「この人は、私のお父さんなの!」
「……っ!?」
ジョサイアの顔が、湯気が出るほど真っ赤に染まる。
……村の井戸は、相変わらず枯れ果てていた。
絶望に暮れる村人たちの姿を見て、ジョサイアは深く唇を噛む。
「いつになれば、この乾きは癒えるのか……」
その時、トントンと肩を叩かれた。
「レビィ、木の枝。ちょうだい?」
「え、ああ……これか?」
手渡された枝を手に、レイチェルは地面にカリカリと線を刻み始める。
それは、落書きなどではなかった。リディア王国の、地形と水脈を完全に把握した地図。
ジョサイアは目を見開いた。
(なんだ……この正確さは。本当に……一目見ただけでこれを?)
「レビィ! ここ!」
レイチェルが指差したのは、森の境界の先にある源流。
「それはゼフナ川だ。だが、あそこは……」
ジョサイアが言いかけると、レイチェルは弾けるような笑顔で言い放った。
「なら、これでおしまいだよ。この村の、水不足の解決!」
その言葉に、ジョサイアは息を呑んだ。
この小さな、天才的な少女。彼女となら、この死にゆく王国を変えられるかもしれない。
ジョサイアは探偵帽を強くかぶり直し、震える手でレイチェルを抱き直した。
「……行くぞ、レイチェル。水源を確認する
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
レイチェルの過去の謎が少しずつ見えてきました。彼女は本当にただの子供なのでしょうか?それとも……?
次回、二人はついに水源を目指して森へ向かいます。
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それでは、次章でお会いしましょう!




