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凄腕鑑定お姉さんは結婚できない(休止)  作者: 春無夏無


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アデレードという女3

 パネの町に赴任してきてから芽生えた後天スキルがある。

 きっかけはこの町出身の若い冒険者に依頼が少な過ぎると言われたので、じゃあ赴任してきたばかりだし、周辺地域の調査も兼ねて護衛依頼を出しましょうと何回か行ったことだったか。

 新任でも資格持ち、金はあるけど戦闘能力はないので、いかに平和なこの町周辺であってもモンスターがいる限り調査には護衛が必要なのだ。


 それで周囲の森だの川だの山だのを鑑定しまくっていたら、分析という後天スキルが身についていたのだ。

 例えば町から見えるあの名も無き山。

 鑑定で見るだけならば採掘できる鉱石の量や種類、や出現するモンスターなどが確認できる。

 そこに分析を重ねてやると、鉱石を採掘できるように整備するための費用と採掘後の予想収支、季節性のモンスター狂暴化による被害予測、などが表示されるのだ。

 対物に関してはかなり優秀なスキルだと思う。

 収支が大きくプラスになるようであれば、整備して採掘場を設置したりすることができるし。

 対人に関してはよくわからないけれど。

 試しても相手の私に対する好感度しか表示されないのだ。

 わざわざ全員確認して好感度が低い人がいたら落ち込む気がするので、人に対しては分析は使わない方向でいる。


 あちこち調査した結果、表向きは何もない地域だけども、私より前にパネへ調査に来た人の鑑定はかなり低レベルだったのだろうな、ということがわかった。

 この前ギルドに持ち込まれた角鱒が捕れるパネ川の上流に竜眼石の鉱脈があることすら気付かなかったのだから。

 あれは鉱脈が表に出てくるわけでもないし、結晶の成長とともに外へ吐き出されるまで採掘もできない石だから、結局は川を攫って探すしかないのだけど。


 あちこちの眠れる宝に興奮して開発を促した結果、町は発展し、人口は増え、業務は忙しくなった。

 莫迦なのか私は。

 でも私だけのせいではないと思う。


 将来ミネットちゃんの義父になる商人さんのように、王都や栄えた街から追い出されるように流れてきた人材も、実際この町の発展に関与している。

 きっと目的地はここよりもっと先の街だったとは思うけれど、旅人としてやってきた彼らは多くがこの町に住むようになり、公共事業の手伝いをしてくれたり商売を始めたりと住みやすい町に変えてくれたし、パーティから追い出されたのに凄腕冒険者として頭角を現した人もいる。

 誰のせいであっても、私の忙しさに変化があるわけではないので意味のない話だ。




 本日は鑑定カウンターではなく依頼カウンターに呼び出しがあったので向かうと、顔馴染みの冒険者さんがふたり待っていた。

 彼らはこの町の公共事業を手伝ってくれているので冒険者というよりは半分くらいギルド職員のような気がする。


「マルゼンさん、センコさんおはようございます。今日はどうされましたかぁ?」


「ギルド長には許可取ったんだけど、アデリーさんにいい土地を教えてもらいたくてさ」


「俺たちのスキルが成長して、もうひとつダンジョンを増やせそうなんだ。今度は上級者向けを考えているんだけど」


「あらぁ、おめでとうございます」


 おお確かにまたスキルがレベルアップしてる。

 彼らは別々の街からほぼ同時にこの町に流れてきた。

 マルゼンさんは穴ぼこを作るスキル、センコさんは魔力の塊を作るだけのスキル、と役立たずの烙印を捺されて。

 ところが通りがかったこの町で私がたまたま彼らを鑑定した結果、穴ぼこを作るスキルはダンジョンメーカー、魔力の塊を作るスキルはモンスターメーカーであると判明したため、引き留めてコンビを組んでもらい、公共事業である町営ダンジョンを立ち上げてもらったのだ。

 こうして自然ダンジョンが存在しないこの地域に初心者向け人工ダンジョンが誕生し、経験不足の若手冒険者は減り、町は周辺から来る新たな冒険者で潤い、彼らはスキルレベルをあげることができた、というわけだ。


「そうですねぇ、最近はこの森付近のこの辺りの地脈が活発でいい感じですよぉ」


 周辺地図を指さしながら、場所の説明をする。

 地脈が活発であればあるほどダンジョンは活発化するので、強いモンスターも配置しやすいし、生み出される宝箱も良いものになるので場所選びはとても大事だ。


「あとは……初心者が挑みにくい場所ならここですねぇ。行きやすいとどうしたって技量の足りてない方が入って死んでしまいますし」


 冒険者は死にやすいとはいえ、死んで欲しいわけではないので上級者ダンジョンを造るのであれば対策は必要だと思う。

 初心者向けダンジョンの踏破と一定の冒険者ランクで入場制限してもらうのもいいかもしれない。

 人工ダンジョンなら入場の条件付けはダンジョンマスター次第なのだし。

 うーん……


「これって上級じゃなくて、深層ダンジョンにして中級から超上級って感じにはできないんでしょうかぁ?」


「それまたどうして?」


「今の季節だとこの町の周辺で初心者ダンジョン踏破した後の中級者が成長できるクエストに乏しいんですよぉ。季節性ではなく通年で中級者がステップアップできる環境が必要なんです」


「なるほど、今は閑散期か。確かにアデリーさんが希望するようなダンジョンも作れるし、維持もギリギリできると思うが、どちらかが風邪でも引いたら大変だぜ?」


 勿論なんのアイディアもなく提案したわけではない。


「先月くらいから移住された方をおふたりに紹介したいんですよぉ。今は別の仕事中ですけど、組まれればダンジョンの維持がかなり楽になる見込みです」


 私の返答にふたりは身を乗り出した。


「楽にってどのくらい?」


「今のスキルのレベルなら、ふたつきくらいダンジョンを放置しても内部が崩れたりモンスターが溢れなくなりますねぇ。その方はまだ低レベルなので、レベルアップによって期間は延びます」


「それはとんでもないスキルじゃないか!」


「今は週1回の手入れだから、かなり楽になるな」


「その方のお仕事が終わりましたら、おふたりに紹介しますねぇ」


「アデリーさんよろしく!」


 彼らは意気揚々とダンジョン候補地を実検しに行った。完成すればこの町の名前を高めるだろう巨大ダンジョンに心を躍らせているのだろう。

 さて、私は手早くプリヴェさんにアポイントを取りましょう。


 近頃は都会や王都からやってきた冒険者の人は治安維持の為という名目で私が見ることになっている。

 それによりざくざくと珍しいスキルを持つ人をみつけ、彼らのようにギルドの仕事を手伝ってもらったり、最適なクエストを紹介できるようになった。

 本当に他所の街の鑑定の目は節穴なのかしら?

 私以外の鑑定白金バッジを持っている人は王城か貴族に仕えているから街の住民を見たりしないのだろうけれど。


 プリヴェさんも元の街では役立たず。

 全くそんなことないのに。

 物質を安定・定着させるスキルなんて使い道沢山あるじゃない。

 今行ってもらっている陶芸工房からは定期契約を結びたいって依頼がきてるわよ。彼女がスキルを使えば焼成中に陶器が割れてしまうのを防ぐことができるし、とても割れにくい完成品ができるからね。


 巨大ダンジョンに安定・定着を使用すれば彼女のスキルレベルは飛躍的に伸びるだろう。

 公共事業で報酬もいいからほぼ引き受けてくれる見込みだ。



 こうして忙しくなることがわかっているのに埋もれた才能を持つ人材を育成してしまう悪癖がまた出てしまった。

 もう町の名前を上げるところまで上げてしまって、本部から追加鑑定員を派遣してもらったほうがいいのかもしれない。バッジも持ってない新人がやってきて、更に忙しくなる未来が待っていそうだけど。

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