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凄腕鑑定お姉さんは結婚できない(休止)  作者: 春無夏無


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防犯ことはじめ

 このパネは旅人の町。

 町の入口に衛兵は勿論いるけれどちゃんとした身分証さえあればほぼ誰でも入り込むことができる。

 入口で商人の馬車の荷をあらためる、なんてこともしないので中に潜んで町の中に……なんてことも容易い。

 というか町を囲んでいる木製の塀も身軽な人なら飛び越えられると思う。もっと高くしないと。


 ただ何もないことで有名な町だったので、わざわざこの町でリスクを犯すよりは、他のもっと栄えた町で悪事をはたらこうと思われて、犯罪被害が起きにくかったという一面もある。

 先を急ぐなら素通りするし、夜が近ければ宿に泊まるだけですぐ出ていく。

 悪いお客様というのは今までそういう存在だった。


「増えてますねぇ、犯罪」


 冒険者ギルドに持ち込まれた被害報告や捕縛依頼をひとつひとつチェックしていく。

 今のところは盗難、詐欺くらいなので人的被害は少ないが放置する理由にはならない。


「自警団にも情報は流すが……まあ期待し過ぎるのは良くないな」


「手が空いている冒険者の人に依頼出してみます?」


「多くは報酬出せないし新人向けかな?」


 日々増える報告に職員たちは頭を悩ませている。

 早く解決策を打ち立てたいものだ。私のお休みのためにも。


 現在私は休み無しの連勤中である。

 町には質屋も古物商もなく、鑑定と買取を行なっているのは冒険者ギルドのみだ。

 というわけで持ち込まれるわけだ、盗品が。

 勿論持ってきた人はすぐ捕縛して、そのまま尋問送りになるけれど、一向に被害は減らない。

 盗品を見逃さないためとはいえ連続出勤は疲れてきた。そろそろ休みたい。

 もう王都みたいにしっかり検問とかするしかないのか。



『安全は無料で手に入るものではないからな』


「だよね」


 帰宅後シノマキに相談してみた。

 使うたびに思うけれど、まるで横にシノマキがいるように話せるとかすごいわ、この魔道具。

 シノマキはこれをコールリングって名前にしたらしい。


『例えばアデリーが鑑定カウンターではなく、町の入口に立てば防ぐのはできるだろうが、それは現実的ではない』


「どちらにしろ私に休みはないわ」


『鑑定スキルを持つ町の人間に協力を仰ぐのがいいだろう。この前渡した片眼鏡を貸し出した上でな』


 ああ、成程。

 非常勤の人々が魔道具を使用して交代でカウンターに入れば盗品かどうかくらいはわかるだろう。


『それから腕の立つ冒険者を雇って、一緒にアデリーが町を見回る』


「私が直接見れば犯罪者はすぐわかるわね」


 これは毎日でなくてもいいだろう。


『町の防衛は一昼夜ではなんともならないから、王都の検問所で使ってる魔道具をそちらに送ろう。申請の人数と実際の人数が違うときに警告が出る』


「ありがとう。速達代金引換で私宛に送って」


『わかった』


 これで多少は私も休めるようになるはず。明日ギルド長に話して調整してもらおう。



「悪くないですね。王都の検問所で使っている魔道具なら確実でしょう。うちの予算から出しますよ」


「よろしいんですかぁ?」


「安全はタダじゃない、というのは正しい認識です。町に人が増えた以上目を背けることはできないので必要経費だと割り切りましょう」


 そのくらいなら私が身銭切っても大丈夫だと思ったけれど、どうやら予算を回してくれるらしい。

 実務経験が豊富だからこういう判断は素早いな。


「私が町の見回りに出る件はどうでしょう?」


「……良い案ですが、護衛をつけても危険なことを戦闘能力皆無の人に頼むのは避けたいのが正直なところです」


「とはいえ、広い目で見ればパネの冒険者ギルドの全従業員は私の部下になりますからねぇ。部下を守るために上司が最前線へ出張るのはおかしいことでもないでしょう」


 あと町が栄え始めた一因に私もありそうだし。

 早い段階で私が町の防犯に気を回していればもう少し対策も楽だったかもしれない。


「権力を笠に着るならもっと相応しい場があるでしょうに」


「逃げ足だけは鍛えてますし、片目を潰されても片方残って生きていれば業務に支障はありませんよぉ」


 ギルド長はあからさまに呆れた様子をこちらに見せてくる。

 私がうっかり殺されると彼は立場上大変面倒なことになるので、恨まれないように安全策はちゃんととっておきましょう。


「でもまあ結局のところ、完全に防ぐのは無理でしょう。撲滅できるなら世界中でそうしてますから。ある程度町が栄えてしまった以上、仕方のないことです」


「住人同士の軽犯罪や諍い暴行程度なら今までもありましたしねぇ」


「今後も続くでしょうし、なるべく外からの人に『この町での悪事は割りに合わない』と思わせて、他所に行ってもらうことにしましょう」



 私は日替わりで女性冒険者をふたり雇い、買い出しに出ているギルド職員を装って町の見回り。

 窓口では非常勤鑑定員による盗品の確認。

 検問ではシノマキから買った魔道具を使っての人数が確認。

 これで面白いように捕まる人が増えたけれど、いくらなんでも多過ぎる。普通の町で検挙されるような人数ではない。

 ということはこの町で犯罪をするように仕向けている人がいる?


 ……そういえばたまにくる嫌がらせ手紙という心当たりがある。開けると燃えたり麻痺毒を出すのでそのまま捨ててるけれど。

 もしかしたら仕向けてる人間が嫌がらせ手紙の差出人と同じかもしれないし、拘置されてる人たちを詳しく鑑定してみるか。

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完結済み連載作です。
ゲームで育てた不人気作物パースニップでみんなを元気にしてあげる
VRMMOで成人女性が農業したり育てたマンドラゴラに振り回される話です。

尻軽女が暴力系ヒロインに転生したので、暴力を封印してみた
不幸だけど折れない女の子の心を折る内容です。ほのぼのしません。
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