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甲斐山のうわさ  作者: ハム
S—part
3/16

3



 二人はキーホルダーをそのままにし、先に進んだ。

 そしてしばらく洞窟を歩いていると行き止まりになった。春子の持つ地図にも簡単な洞窟の地図が記載されており、入り口から一本道で奥に行くほど毒ガスが濃くなるとの記述のみあった。



「行き止まりだな。」


「ここが一番ガスが強い所みたい。特に何もないね。」


「一応写メでも撮っとくか。」



 二人は来た道を引き返そうと、行きと同様にでこぼこの道を足元を注意して進んでいたが、懐中電灯を照らしていた和男が違和感を感じ、右手側の壁に光を向けた。



「ん?壁がない…?」


「あ、分かれ道になってる!」



 来た時は気づかなかったが、どうやら岩陰に隠れて春子の父の地図にも記載されていない、別の道があるようだった。



「うそぉ…。マジで?」


「調査隊の大人達は気づかなかったのか?」


「もしかして、毎回こんな奥の方まで来てなかったのかも?」


「…これ、どうする?」



 和男と春子はお互いのガスマスクを付けた顔を見合わせた。そして、二人はその地図に記載されていない道を進む事に決めた。


 先ほどより慎重に歩を進め、ゆっくりと進んでいた二人だったが、遠くで何か物音が聞えた気がして立ち止まった。



「何か聞えなかった?」



 しばらく息を潜めてじっとしていた二人だったが、特に何も聞えなかった為また道を進み始めた。

 

 すると、やはり遠くの方でカン、という音が聞えた。



「やっぱり…なんか音聞えたよね?」


「ああ、何か硬い物がぶつかったような音が…」



 和男は話をしながら一歩だけ前に足を踏み出した、その時、ドッ!ドサッ!という音がさっきよりも近くで聞えた。


「ヒッ!」


 春子が悲鳴を上げた。確実に何かがいる。

 和男はさっき踏み出した一歩を引き戻して、春子と二人じっと息を潜めて前方を懐中電灯の明かりで照らした。


 すると、ズ、ズズッ、と何かを引きずるような音が聞こえてきた。

 音はさっきよりも近づいて来ている。


 そして二人のすぐ近くで、いきなり人の息遣いが聞えた。



「キャーーー!!」



 その息遣いが聞えた途端、春子は洞窟内にグワンと反響する大きな悲鳴をあげ、来た道を走って戻ろうとしたが、すぐにでこぼこな地面につまずき転んでしまった。和男も驚いて逃げようとしたが、懐中電灯を落としてしまった為、「だ、誰だ?!」と叫びながら必死に明かりを探した。


 春子は転んだ事と動揺する和男の声を聞いた事で少し冷静さを取り戻した。そして和男と共に這いつくばって懐中電灯の明かりの元へたどり着いた時、息遣いがあった方から男の声が聞えた。




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