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甲斐山のうわさ  作者: ハム
S—part
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1



 小さな村の四方を囲む山の一つ、そのふもとで今年16歳になる和男は幼馴染みの少女、春子を待っていた。

 しばらくすると、大きなリュックを背負った春子が手を振りながら和男の元まで歩いてきた。



「どうだった?」


「2つとも持って来れたよ!」


「おし、じゃあ夕方親父さんが帰ってくるまでに戻ってくんぞ!」



 和男と春子は、村を囲む山の一つで、昔から誰も立ち入れない危険な山として有名な甲斐山に踏み入った。

 二人は、春子の父が所持していた甲斐山の詳細な地図を見ながら、慎重に獣道を進んだ。



「ふぅ、あの岩場を越えた向こうみたいだね。」


「ああ、入り口が見えたらちょっと休憩してから準備しよう。」



 二人が先を進む甲斐山が危険とされている理由は、山の一部で毒ガスが発生している事が原因だった。毎年梅雨明けや地震のあった直後などは、毒ガスの発生している地点に異常がないか等の調査もされている。

 そういった現実的な危険のある山であるため、周辺の山にあるようなお化けや幽霊等の噂はなく、悪ふざけで山に踏み入る者もいなかった。


 そんな甲斐山の事情をよく知る二人がなぜこの山に入る事にしたのか。それは、普段誰も踏み入る事のなかった山に3年前にたったある噂が原因だった。


 "甲斐山の毒ガス地帯で白骨死体が発見された"


 3年前、日本の中部地方を襲った大規模な地震が発生した後、村内を確認する若手衆とは別に甲斐山に調査隊が入っていった。

 調査の結果は、いつものように特に異常なしという結果だったが、その調査の後からどこからか、"甲斐山の毒ガス地帯で白骨死体が発見された"という噂がたつようになったのだ。


 3年前中学生だった春子は、調査隊のメンバーだった父に噂が本当かどうか尋ねたが、父はその噂を完全に否定した。

 春子はそんな父に対して、「今まで通り何もなかったら突然こんな噂がたつはずがないと思うけど!」と尚も父を問いただした。

 父は、「でもなぁ、帰りは地震で倒れた看板を抱えてただけだしなぁ。村のもんは見慣れてるしよぉ。何で白骨死体なんつうもん噂になったのか俺もわかんね。」と言って返した。


 それから3年経ち、春子は違う高校に通っている和男に村で偶然会った。そして、3年前の噂について話を聞かれる事になった。



「だからさ、オカルト研究部で取材する事は出来ないけどさぁ、俺が個人的に気になっててさ。で、お前の父ちゃん調査隊のメンバーだったじゃん?お前なんか知ってるか?」


「ん~、私もその時気になって聞いてみたんだけど、帰りに看板抱えてただけだって言われたんだよね~。」


「看板ってあのイノシシ注意の看板の事だろ?そんなもん見間違えるはずないしなぁ。そうだ、お前あそこの毒ガス地帯ってどこら辺にあるか知ってる?」


「…知ってる。前、お父さんの持ってる甲斐山の地図をこっそり見たことがある。」


「マジか!どこ?どの辺?!」


「それ知ってどうすんの?もしかして…。」


「やっぱオカルト研究部員としては現地に直接確かめに行かないとな!」


「危ないよ!毒ガスとかあるんだよ?」


「そんなの調査隊の大人達みたいにガスマスク着けとけば大丈夫だろ。俺高校に入ってバイト始めたしさ。いくら位かな?」


「…ガスマスクならお父さんが使ってるの物置に入ってたと思う。予備のかな?二つあったと思うし。」


「マジで?…もしかしてそれ貸してくれんの?」


「うん。そのかわり、私も行く!私も気になるもん。」




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