序文
もしあなたがクリストファー・ロビンについて書かれた別の本を読んだことがあるなら、彼が昔、一羽の白鳥を飼っていたこと(あるいは、その白鳥のほうがクリストファー・ロビンを飼っていたのかもしれないが、それは私にはわからない)を覚えているかもしれない。そして彼は、その白鳥を「プー」と呼んでいた。
それはもうずいぶん昔のことだ。
別れのとき、私たちはその名前を一緒に持って帰った。もう白鳥にはその名前は必要ないだろうと思ったからである。
さて、エドワード・ベアが「自分だけの、何か胸の躍るような名前が欲しい」と言い出したとき、クリストファー・ロビンは考える間もなく、すぐにこう言った。
「きみはウィニー・ザ・プーだ。」
そして、その名は本当に彼のものになった。
そこで、「プー」という名前については説明したので、今度は「ウィニー」のほうを説明しよう。
ロンドンに長くいれば、一度は動物園へ行かずにすませることはできない。
動物園には、入口(WAY IN)から入り、出口(WAY OUT)まで、檻という檻をできるだけ早足で見て回る人たちがいる。
けれど、本当に素敵な人たちは違う。
自分がいちばん好きな動物のところへ真っすぐ向かい、そこでゆっくり過ごすのである。
だからクリストファー・ロビンが動物園へ行くときは、いつもシロクマのところへ行く。
そして左から三人目の飼育係に何かをそっとささやく。
すると鍵が開けられ、私たちは暗い通路を抜け、急な階段を上り、ようやく特別な檻の前へたどり着く。
檻の扉が開くと、中から茶色くて、ふさふさしたものが小走りに出てくる。
「わあ、くまさん!」
クリストファー・ロビンは嬉しそうに叫び、その腕の中へ飛び込んでいく。
このクマの名前はウィニーという。
だから、「ウィニー」というのはクマには実にぴったりの名前なのだ。
けれど面白いことに、ウィニーがプーにちなんで名づけられたのか、それともプーがウィニーにちなんで名づけられたのか、今では誰も思い出せない。
昔はちゃんと知っていたのだけれど、忘れてしまったのである……。
ここまで書いたところで、ピグレットが顔を上げ、あの甲高い声で言った。
「ぼくは?」
「かわいいピグレット。」
私は言った。
「この本は、まるごときみのお話でもあるんだよ。」
「じゃあ、プーのお話なんだ。」
とピグレットは小さな声で言った。
わかるだろう。
ピグレットは、プーだけが盛大な紹介をしてもらっていると思って、少しやきもちを焼いているのである。
もちろん、プーはみんなのお気に入りだ。
それは否定できない。
けれど、ピグレットにはプーにはない役どころがたくさんある。
プーを学校へ連れていけば、誰だってすぐに気づいてしまう。
でもピグレットはとても小さいので、ポケットの中へすっと入ってしまう。
七二十四だったか、それとも二十二だったか、自信がなくなったときでも、ポケットの中のピグレットに触れると、なんだか安心できるのである。
ときにはピグレットはポケットから抜け出して、インク壺の中をじっくりのぞき込むことさえある。
そんなわけで、教育という点では、プーよりずっと多くの経験を積んでいる。
けれどプーはそんなことは気にしない。
「頭のある者もいれば、ない者もいる。」
彼はそう言う。
ただ、それだけのことなのである。
さて今度は、ほかのみんなが口をそろえて言い始めた。
「ぼくたちは?」
だから、そろそろ序文を書くのはやめて、本当のお話を始めることにしよう。
A・A・ミルン




