第13話 喪失
G1の十二月、アラタの部隊に新しい任務が来た。
神徒連盟が群馬県北部の山岳地帯から南下を始めているという情報があった。前線を押し上げようとしている。それを食い止めるための迎撃任務だった。
部隊は八人。ライカが隊長。アラタの他に、篠田も回復して復帰していた。
「今回は規模が違う」とライカが出発前に言った。
「向こうの戦士が十体以上いる可能性がある。各自、慎重に動け」
山岳地帯に入ったのは夜だった。雪が降り始めていた。
接触は山の稜線で起きた。
神徒連盟の戦士十体が上空から来た。翼を広げ、光の武装を展開していた。夜の山の上に白い光が並んだ。それは壮絶に美しく、同時に恐ろしかった。
アラタはHUDで全体を確認した。十体。こちらは八人。数は不利だった。しかし地形を使えばなんてことない。
「稜線の岩陰に散開しろ」とライカが指示した。「上空から一方的にやられるな。岩を盾にしながら削っていく」
八人が散開した。アラタは大きな岩の影に身を潜めた。ドローンユニットを展開した。四基が岩の上から顔を出して、上空の戦士に向けてレーザーを撃った。
戦闘が始まった。
光の槍が岩に刺さった。岩が砕けた。アラタは横に跳んだ。着地してアームキャノンを撃った。上空の一体の翼をかすった。
乱戦になった。
アラタは動き続けた。撃って、跳んで、回避して、また撃つ。ブースターを使って岩の上に飛び上がり、上空の戦士と同じ高さから撃った。弾が翼に直撃した。一体が落ちた。
二体目を狙おうとした時、無線に声が入った。
「篠田が!」
アラタは振り返った。
五十メートル先で、篠田が倒れていた。光の槍が胸部を貫通していた。スーツが砕けていた。動かなかった。
戦闘は続いていた。
アラタは篠田を見た。もう一度見た。
動かなかった。
アラタは歯を食いしばって、前を向いた。今は戦闘中だ。止まったら死ぬ。感傷は後でやれ。ライカが言っていた言葉だった。
その言葉通りに動いた。
撃った。また撃った。他の担員も戦士を撃った。一体が落ちた。また一体が落ちた。
三十分後、戦闘が終わった。神徒連盟の戦士十体を制圧した。テクノフォース側の死者は二人。篠田ともう一人の兵士だった。
ライカが倒れた二人のそばにしゃがんだ。しばらくそこにいた。それから立ち上がった。
「撤収する」とだけ言った。
帰りの輸送車の中で、誰も話さなかった。
アラタは窓の外を見た。雪が降り続けていた。山が白くなっていた。
篠田の顔を思い出した。「痛いっすね」と笑っていた顔。「でも死んでないんで、大丈夫っす」と言っていた声。
今度は死んでいた。死んでしまった。
次の任務でも、誰かが死ぬかもしれない。その次も。戦争が続く限り、確率の問題だった。
アラタはそれを知っていた。知っていたが、実際に起きると違った。
知っていることと、経験することは、別の話だ。
窓を流れる雪を見ながら、アラタはそう思った。
感傷は後でやれ。
でも後で、どこでやればいいのかは、誰も教えてくれなかった。
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