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神なき世界の創り方―神を信じた幼馴染と、神を殺す兵器を使う俺―  作者: 知識渇望


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プロローグ

はじめまして。

初投稿作品になります。楽しんでいただけたら嬉しいです。

世界が神を見つけたのは、ある秋の朝のことだった。


正確には、神が見つかったのではない。観測されたのだ。データとして。数値として。否定できない事実として。


世界中の研究機関が同時に検知した異常なエネルギー反応は、既知のいかなる物理法則にも当てはまらなかった。それは宇宙線でも電磁波でもなく、地球上のあらゆる場所に薄く、しかし確実に満ちている何かだった。研究者たちはそれを「未知の高次元エネルギー体」と呼んだ。報道はもっと単純な言葉を使った。


神。


その日から世界は変わり始めた。

神の観測が起きた年を「神元暦0年(G0)」とし、以降はG1、G2と数える。西暦との換算は

「神観測年 = G0」である。


天城アラタ(あまぎ あらた)はそのニュースをリビングのソファで聞いた。


十四歳。学校帰りの制服姿のまま、まだ鞄を床に置いただけで腰を下ろしていた。テレビの画面では、見慣れたアナウンサーが珍しく上ずった声で原稿を読み上げていた。


「本日午前九時十二分、国際観測網が確認した未知のエネルギー体について、複数の研究機関が――」


「アラタ、ただいまー」


玄関のほうから弾むような声が聞こえた。返事をする間もなく、廊下を歩く足音が近づいてきて、リビングのドアが勢いよく開く。


月城ユイ(つきしろ ゆい)だった。


同じ制服。肩のあたりで切りそろえた黒髪が、走ってきたのか少し乱れている。アラタの家の鍵を持っているのは、幼い頃からの習慣だ。いつの間にか当たり前になっていた。


「見てる? すごいよね、これ」


ユイはソファに飛びこむように座り、テレビを指さした。


「神様がいたんだって」


「観測されたってだけだ」とアラタは言った。「いたかどうかはまだわからないよ」


「でも数値に出たんでしょ」


「数値は確かにある。けど、それが神かどうかは別の話だ」


ユイはむっとした顔でアラタを見た。それからすぐに笑った。こういう顔の切り替えがユイの特徴だとアラタは思っている。怒っても三秒で笑う。


「アラタってほんと、そういうとこ面白くないよね」


「事実の確認をしているだけだ」


「いや絶対わかっててそういう言い方してる」


否定はしなかった。


テレビの中では、世界各地の映像が流れていた。礼拝堂の前に人が集まり、ある者は泣き、ある者は跪いていた。広場では老人が天を仰いで何かを呟いていた。研究所では白衣の男女がモニターを食い入るように見つめていた。


アラタは画面から目を離さずに言った。


「これで世界が変わるかもしれないな」


「どっちに?」


「わからない。いい方向か、悪い方向か」


ユイはしばらく黙って画面を見ていた。それから静かな声で言った。


「ねえ」


「なんだ」


「神様って、人を死なせなくできるのかな」


アラタはユイのほうを見た。ユイはテレビを見たまま、少し遠い目をしていた。


「そんな都合のいい話はないだろう」


「夢ないなあ」とユイは笑った。でもその笑顔は、いつもより少しだけ薄かった。


それからの一年は、静かな混乱の時期だった。


神の存在が観測されたことで、世界の空気は大きく二つに割れた。


一方は、これを信仰の証明として受け入れた人々だ。神はいる。だから祈れ。祈りは届く。奇跡は起きる。彼らはやがて組織化され、政治的な力を持ち始めた。神の顕現を望み、信仰によって世界を導こうとする勢力「神徒連盟」が生まれたのは、観測からほどなくのことだった。


もう一方は、これを科学的に解析しようとした人々だ。神は現象だ。エネルギーだ。未知であることと神聖であることは別の話だ。解析し、制御し、必要なら封じ込める。そう考える技術者や軍人たちが集まり、「テクノフォース」が組織されたのは、それからさらに三ヶ月後のことだった。


アラタの父は後者の側についた。


テクノフォースの技術部門に籍を置く彼は、神のエネルギーについての研究を始めた。夕食のたびに難しい顔で端末を眺め、アラタに「まだよくわからんが、面白いことになってきた」と言った。アラタはその言葉の意味が、当時はまだよくわからなかった。


観測から一年が経った夏、奇跡が起きた。


最初は小さな出来事だった。瓦礫に埋まった子どもが、傷一つなく救出された。病院で余命宣告を受けた男が、翌日には完全に回復した。どちらの現場にも、強く祈り続けていた人間がいた。


それが神の力によるものだという証明はない。偶然かもしれない。錯覚かもしれない。しかし世界はその「かもしれない」に飛びついた。


神徒連盟への参加者が急増した。各地で礼拝施設が建てられた。祈りの儀式が生まれた。そして一部の兵士が、祈ることで身体能力を大幅に高める方法を習得し始めた。光の翼を持ち、空を飛び、奇跡の力で戦う、それが神徒連盟の戦士の姿だった。


テクノフォースはそれを危険だと判断した。


対抗手段の開発が始まった。

ECS ― Exo Combat Suit (エクソ コンバット スーツ)。人工筋肉と神経反応加速システム、高出力兵器を備えた戦闘スーツ。奇跡には技術で対抗する。それがテクノフォースの答えだった。


世界の緊張は高まり続けた。


ある夕方、アラタとユイはいつもの帰り道を歩いていた。


川沿いの道。夕陽が水面に反射して、橙色の光が揺れていた。二人が子どもの頃からずっと使っている道で、アラタにとっては景色よりも先に足が覚えている場所だ。


「ねえ」とユイが言った。


「なんだ」


「もしさ、世界が終わるってなったらどうする?」


アラタは少し考えた。「普通に生きるさ」


「え、それだけ?」


「最後にやりたいことって言っても、別にないもの」


ユイは笑った。

「変なの」


「そうか」


「でも」とユイは言った。歩きながら、川のほうを見て。「そういうとこ好きよ、アラタのこと」


アラタは答えなかった。夕陽の色が川に溶けていくのを、ただ見ていた。


「ねえ、もし誰も神様を信じなくなったら」とユイがまた言った。

「神様ってどうなるんだろうね」


「消えるんじゃないか」


「えー、それちょっと寂しくない?」


「なぜそう思うんだ?」


「だって誰も信じてくれなかったら、いなくなっちゃうんでしょ。なんか……かわいそうじゃない」


アラタはその言葉を、軽く流した。


その時は、まだ。


その言葉が本質を正確に言い当てていることも、ユイがやがて全てを捧げることも、アラタには知る由がなかった。


夕陽が沈んでいく。


川が光を映している。


世界はまだ、静かだった。


しかし静寂は長くは続かない。


神のエネルギーは、人間の感情を吸収して膨張し続けていた。信仰、恐怖、憎しみ、祈り、あらゆる感情がエネルギーに変わり、神に蓄積されていく。やがてそのエネルギーが一定値を超えた時、神はこの世界に完全に顕現する。


神徒連盟はそれを願った。


テクノフォースはそれを阻もうとした。


二つの力がぶつかり合い、戦争は始まった。


天城アラタが初めてECSスーツを着たのは、それからすぐのことだ。ユイの声を最後に聞いたのも。



これは、神なき世界を創るための話だ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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今後も更新していきたいと思います。

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