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グリミー《ある運送会社の物語》  作者: ナイトワーカーズ
第二章 ナイトワーカーズ
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グリミーと河童 険悪。

7月9日(土)6:23分

朝から暑い。梅雨の真っ最中で湿度も高い。日中はかなり不快指数が上がるだろう。


少し動くと汗が出る。出社したばかりの人はそうだろう。

草加部の体感的には、今の時間が一番涼しい。夜間を通すと一番気温が低いのは5時からこの時間ではないだろうか。

それよりは、草加部自身は105kgという肥満で暑苦しく感じてると思う。


“コの字”には、


グリミー、カケル、草加部、大沢の4人がいた。

大型ドライバーは関東便の榊だ。グリミー化してるか聞かれると微妙だが、どちらかというとグリミーだと思う。


グリミー7号こと榊。

(さかき) 武司(たけし)(51)。髪は自然に流し下ろしていて真っ黒だ。染めてると思う。

肥満気味で体格がいい。お腹が目立つが体脂肪率は見かけほどではないように感じる。

体格通りのパワフルな仕事をする。これは素直に凄いと思うが、自分の歩合のために無理して積んできて、「こんなに積んだんだぞ。」と大きな顔をして、巧みに作業員を悪く言い、「手伝え」と威張る。


グリミー7号こと榊 武司は、この時点ではグリミーではないと後から思う。完璧にグリミー化するのは後々のことだ。


“今思うとそう思う。”


当時は、筋は通ってるけどめんどくさい人だったから、グリミーこと東藤やカケルさん、今は定年退職した鈴木さんから、


「荷降ろしはドライバーの仕事だから!」と強く言われていたが、この先輩達はグリミー榊の前だと何も言えない。言えないだけならいいけど、東藤とカケルが、俺は手伝うよと手伝い、その後、手伝わない後輩の悪口を触れ回っていた。鈴木は腰が曲がっていたのと、この時間までいることは少なかった。


だから、状況で手伝っていた。


草加部は仕分け作業が4人だと荷降ろしが負けるので荷降ろしに入った。


「東藤さん、荷降ろしに入りますよ。」

「・・・」

聞こえてるのか?


“コの字”に残ったのは、グリミー、カケル、大沢だ。


グリミーとカケルは険悪だ。

大沢は、険悪な二人に挟まれる状態にしてしまった。とはいえ、疲れてる大沢君に荷降ろしをやらせるのは酷だ。


草加部は荷降ろしを始めた。

「お疲れさまです。」

「お疲れさ~ん。助かる~。」


パワフルな榊と草加部はガンガン降ろして行く。


“コの字”から、ガーン、ガーン ウキーと荷物を叩きつける音が増えてきた。

グリミー1号と2号が出社してきたのだ。前から所長が休みの土曜日は過激だった。


荷降ろしした台車はどんどん溜まって行き、空台車を置いていた荷降ろしホームも埋まっていった。


この状況下でグリミーと河童頭のカケルが揉め始めた。原因は分からない。


“想像するに、グリミーは忙しくなるといつも怒り出すキャパが小さい奴だ。荷降ろしの台車が溜まって行きキャパが越えた。そして、カケルに八つ当たりを始めたということだろう。”


そこに、グリミー1号と2号が出社して来た。この2人がタッグを組むと一線という言葉がこの世にはないんじゃないかと思うくらいに越えてくる。


カケルは集中力が乏しく誤仕分けが多いのと、それをまったく気にしないところがある。


簡単な話し、グリミーこと東藤は、自分はきちんとやってるけど、カケルや夜勤がちゃんとしてないんだと、自分に矛先が向かないように先手として打って出ただけのことだ。


この間にもガーン、ガーン ウキーと叩きつける音が響く。


周りはこの攻防線を好奇の目で見始め、自分の所にも誤仕分けの荷物があると、キーーと叫びながら持ってくる。


“えっ、いくらなんでも誤仕分け多すぎないか?”と思うくらいあった。


グリミー自身が好奇な目とこの状況に堪えられなくなったのか、1号と2号に、カケルさんと我々を指差しながら何か話し、わざとらしくテキパキした動作で鼻高々とさせながら、チラチラとカケルを見ながら仕分けを始めた。


人間は、こういうのに気づくセンサーを持っている。


嫌になったカケルは仕分けを放棄し、話しやすい配達ドライバーの手伝いに入った。見ててそう思った。


“コの字”は二人だけになった。


今度は草加部にグリミーの矛先が向く。

「なんでこんな状況で荷降ろしやってるか知ってる? 荷降ろしの方が楽だから。仕分けしたくないんだよ。」

と大沢や、たまたまいた1号に言い出した。


草加部の耳に入る。

榊の耳にも入った。


まだグリミー化していなかった榊は、

「大丈夫?向こうは?何があったんだ。」

と、草加部に言った。


「わかんないです。大丈夫かどうかは、普通なら大丈夫なんですよ。だって夜間は一人とか二人でやってんですよ。出来ないわけないじゃないですか。どう考えてもあの二人がおかしくしてますよ。」


「前からそうだよな。」

「榊さん、申し訳ないですが、どう見ても大丈夫じゃないから戻ります。」

と言って草加部は“コの字”に入った。


荷降ろしはほとんど終わっている。すぐ終わるだろう。


グリミーは、わざとらしいしかめっ面で左肩を回していた。そして、自分だけが忙しく大変だけど頑張っている風に、キビキビした動作で、たまに1号2号とアイコンタクトを取りながら仕分けをしていた。


草加部が何か悪いことをしたかのような雰囲気だった。


少し経った頃、

グリミーがついにキレた。

自分はちゃんとやっていますという根回しが東藤的には済んだのだろう。


カイさんも出社してきた。

今日はグリミー沢木が休みなのと、チンピラの残党の高津も休みなのでスムーズに“コの字”まで来れた。

いつのまにか3号こと能見のトラックは戻っていたようだが姿がない。足を上げて寝てるのだろう。


上越便も到着した。


グリミーこと東藤が構内に響き渡るように叫んだ。


「キーーーー!」


グリミーは続けた。自分が正義で周りの全員が味方かのように吠える。


「キーーー!カケル、おめえや、いい加減にしろや。こっちは暑い中やってんのにやー。おめえなんか死ね!殺す!」


と延々とやり始めた。


“コの字”は三人で十分だから、あの二人はほっとき関東便の残りを含めて仕分けを始めた。


関東便の榊は洗車をしていた。


榊自身は、その場しのぎのグリミーとカケルの、こういうところをよく理解していた。

が、自分の歩合が一番で手伝ってもらえれば文句なしという感じだ。


“カケルさんには確認出来なかったが、投げ出して向こうに行き、あそこまで言われてる、辞めるつもりだろう。


計画を進める。”


ーつづくー

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