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第六話 その17 崖上への登坂者(クライマー)



 ガリンの街はガリン平原という駄々広い平原に囲まれていたが、街の裏手にあたる北側、距離にして数km離れた位置に標高は800mにも満たないものの、険しくまともな登山道も無い二つの連山があった。一つはガリンの真北にそびえ街を真後ろから眺めるように。もう一つはその西に、街をやや斜めに見下ろす様に。

 二つの山は、いや山と呼ぶより超巨大な崖と言った方が正しいのかもしれないが、その連山は両山とも専門の登山道具でも用いなければ、まず登れそうにない断崖絶壁面をガリンの街に向けており、もし上る事さえできたならその頂上からはガリンの街を一望する事が出来た。

 登山道具なしでこの崖を登るには裏面にある急斜面を、しかしそこを選択したとしても、剥き出しの岩肌や崖傍の危険なルートを登り、通って行くしかない。故にそんな斜面を登れる生物はカモシカとか雪豹とかそういった四足歩行で、しかも機動性に長けた生き物だけのはずだが、真北の山の斜面を恐るべきスピードで駆け上がる一つの影があった。


「ハッ!」


 その影はよく見ると二足歩行の生物であった。


「クッ!あいつら延々追っかけて来て!さらにはこんな崖まで詰めてきて!いったいどんだけ居るのよ!」

「しつこい!鬱陶しいったらありゃしない!」

「こんな絶壁でも裂け目があっても、自分たちの身体ごと大量に埋め込んで塞いでまで追って来るなんて予想外だったわ!」


「ご主人サマ~だったらなんでこんなガケのぼってるっぽ?」


「のぼってるっぴゅ?」


「は!?」


「のぼりきってもジワジワとおってくるっぽ、とにかく数がおおすぎてどんなガケでもうめておってくるっぽ!」


「じかんのモンダイっぴゅ!さっさとむれのそとににげたほ~がよくないっぴゅ?」


「そ…それは…」

「その~あれよ、アレ!頂上でやり過ごして朝を待てば、あいつらも大人しくなるかもしれないから、そしたら歩いて揚揚と街を去ればいい!」

「そ、そんだけの話よ!」


「ほんとうだっぽ?」


「ほんと~っぴゅ?」


「な、なによ!それ以外何があんのよ!」


「なにもないっぴゅねw」


「なにもないっぽよw」


「無いわよ!ない!!!」


 喋りながらもロッククライミングやハードル走の様な身のこなしで少女は急斜面を次々とクリアし駆け上がっていく。


「ぽっぽw!」


「ぴゅっぴゅっw!」


 炎と風は嬉しそうに少女の頭や背中の辺りを舞いながら後を追い、小炎は少女の行く先を照らし、小旋風は背を押している様だった。

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