モブ認定
「すごいな。この空間は他の魔法は使えないようだね。」
私はスキンに横を歩かせていたらエラン様が私のスキンの前を歩いていた。
画面上のスキンの前には中国版に近い商人がいた。
なるほど、この空間にいる人はモブとして表示されるのか。
さっきまで展開中は全員後方にいたし、なんならライザと護衛は範囲外にいたので気がつかなかった。
「あ、ここらへんだよ」
エラン様はそこにかけよって立方体を一瞬出て行った。
現実で林のなかで手を振ってるのが見える。
画面上はロード外に商人が出ていったように見えた。
範囲外は青空のように見える。
歩いていくと再びエラン様のスキンの商人が見えた。
立方体がエラン様を包むとエラン様は身震いをした。
「これ一瞬ならそんなに気にならないけど、歩くスピードだとぞくぞくするね」
と言いながら笑っている。
いい笑顔だ。
超イケメンなのに画面上はただの商人だ。
せめてマルチみたいにプレイヤーっぽく表示してくれないかな?
エラン様が示したあたりは確かにぼこぼこしていた。
誰かが何かして凸凹なのではなく、自然にその状態なのだろう。
二メートルくらいの崖のように10メートルくらい出っ張りが続いてできている。
その向こうはちょっとした丘になってるのか、全体的に人工林というよりも自然のままの森だ。
「このあたりはあまり整備してないのですか?」
「そうなんだよね。最初にここに城を作ったときから多分そんなに変わってないんだと思うよ。いずれ何かを建てることを想定して第一の壁を広めに設定していたから外に比べても城周辺の森の方が放置されがちでね。」
エラン様はそんなに困ったような表情ではない。
普通のことと言った雰囲気だ。
「放置されているということはここには小動物しかいないんですかね。」
大きな害獣がいたらここから城には壁がないから問題だ。
「そうだね。鳥とかが飛来する意外はリスとかイタチくらいしかいないかな。たまに駆除しないといけないくらい繁殖しちゃったりするけど、それも訓練の一貫になってるよ。」
なるほど。
画面上を見ると、その凸凹の影に尻尾が見える。
現実では見えないんだが。
あれはイタチ?でも私がやってたサンドボックスではイタチっていなかったはず。
私はスキンを動かしてその尻尾に向かうとイタチのようなデフォルメされた可愛いモブがいた。
ちょっとやるのは躊躇われたけど、スキンにつるはしを持たせて殴る。
現実ではキャン!という鳴き声が聞こえた。
イタチのモブは赤いエフェクトが出たけど、まだ生きてるみたい。
もう一度殴ると再び現実で鳴いた。
ちょっと心が痛むけど。
ごめんよ。
画面上ではイタチは消えて地面に革と肉が落ちていた。
スキンを少し動かすとスキンに吸い込まれた。
手持ちは一杯なので箱マークを押してインベントリを開くと『イタチの革』と『イタチの肉』という表記がされている。
これはビックリだな。
私の見てきたものにないアイテムも追加されるということか…
現実のその場を見ると白い靄が崖の影に落ちていた。
命を奪ったのだな、という感覚がどっと押し寄せた。
私はそのそばまでいってしゃがむと膝に能力証を乗せて手を合わせた。
ごめんね。
ありがたくいただきます。
黙祷を終えると立ち上がって周りを見回していたらエラン様が近づいてきた。
「イタチがいたのかい?鳴き声は聞こえたけど、わからなかった。」
たぶん土に隠れて見えなかったのだろうけど、サンドボックスの画面上はイタチの巣のような窪みがあったから見えたんだろうな。
壁に穴が空いてるような感じだったのだ。
しかもイタチのモブはちょっと大きめに表示されてたと思う。
「すみません。思わず。」
「駆除対象だから別に構わないけど、あっさり殺してしまうからビックリしたよ。女の子は嫌がる子が多いからねぇ」
エラン様が笑顔で言うのでちょっと心に刺さった。
「気を付けないとですね。『勝手にピース設定』しとかないと際限無くなりそう…」
私が最後の方ぶつぶつ言うとエラン様は首をかしげた。
いちいちイケメンだなぁ。
「イタチはやっつけると何か出るの?」
そう聞いたのはずっと黙ってたアドル老師だった。
スキンはやはり商人だ。
キラキラした目というよりは真面目な顔をしている。
イタチを簡単に殺したことに対しておこってるわけではないよね?
「『日本』で遊んでたサンドボックスではイタチはいなかったのですがイタチの革とイタチの肉が手に入りました。」
「なるほど…革を剥いだ状態で手に入るのか。かなり有能な能力だな。」
そうアドル老師は独り言のように呟くとまた考え込んで後方に歩いていった。
ライザのあたりの立方体の外まで行くと近くの岩に腰かけた。
「とりあえず、ここらへん整地していいですか?」
私はエラン様の指示を思い出した。
「あぁ、整地?まぁ、ここら辺は自由にして構わないからあの窪みだけ少し埋めといてくれると助かるかな。あのあたりは訓練の流れ次第ではよく行くからほっといたら後で兄様達に何か言われそうだ。落とし穴だとかなんとかとね…」
エラン様は笑い声を漏らしながら言った。
そして、華麗に走ってアドル老師のいるあたりまで下がった。
立ち姿まで美しい。




