第23話・シニヨンとハゲ
バレエヘアといえばあのお団子ヘア。髪をまとめてくるりと巻き込み、アメピンやユーピンで止めていく。シニヨンヘアともいいます。いわゆるバレエのまとめヘアのことです。
私は子供のころは、毎度母にやってもらっていました。当時からヘアをまとめるのが下手ですべて母におまかせです。あるとき、母娘で美容院でカットをしてもらっていたら、美容師さんから「ねえねえ、この子の頭の真ん中がハゲているよ」 と、隣にいたまだ若かりし母に言いました。「えっ」 と驚く母、ヘアカット用マントを羽織ったまま、立ち上がり真剣な顔をして美容師さんの指さす方向をのぞき込む。母担当の美容師さんも一緒に私の頭をのぞきこむ。大人たちに囲まれ不安げに鏡越しに見つめる私。美容師さんは肩をすくめました。
「お子さんはバレエをしていましたね。髪をまとめるためとはいえ、引っ張りすぎると小さくともハゲちゃいますよ」
「言われてみれば薄くなっています。これ、どうしたらいいのですか」
「簡単です。まとめ髪をやめたらいいですよ。すぐに生えてきますよ」
「じゃ、切っちゃって」
いやーーーーーーーっ、と心の中で叫びながらも髪を「おかっぱ」 に切られる私。おかっぱってわかりますかね? アニメでいえばサザエさんに出てくるワカメちゃんの髪型です。当時は意志を持たぬ母の人形でありましたのでされるがままでした。
次のレッスンで、バレエの先生に怒られるかと思ったのですが案外何も言われず拍子抜けしました。ま、下手でしたしね。子供の時は仕方ないです。シニヨンにしなくなったので、ハゲはすぐ直りました。
しかしそれがコンプレックスの一つになり、母に内緒で大人バレエを再開し、次いでフラメンコをしたときは絶対に切りませんでした。髪は腰まで伸びました。仕事中はまとめていましたので支障なし。もともと髪の量が多いのと、強く引っ張らうように注意していたのでハゲることはありませんでした。前置きはここまで。
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シニヨンに限らずポニーテールのように髪を引っ張ってまとめるのが長期にわたると
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はげてくる
……のは事実です。一応病名もついています。
「牽引性脱毛症」 といいます。
女性に限らず誰でもなります。ポニーテールやシニヨンなど、髪を強く引っ張る髪型を続けているとはげてきます。物理的な原因です。重みのあるエクステも同じ。またブラッシングの力の入れすぎもだめですね。
あとは髪への栄養不足か。マッサージをしましょうというのは、血行不良です。額のはえぎわが後退しつつある男性が栄養剤を振りかけてくしや手でとんとんとマッサージしているのはそのためです。
このバレエハゲ……優雅に踊っているのによく見たらハゲているのってシャレにならぬ。私も気をつけています。時には分け目を変えたりもします。ショートヘアは大人バレエでも考えていない。レッスン前のシニヨンつくりは「さあこれから踊るぞ」 という気合もいれてくれるものだから。
レッスン終了後のピンを抜くときの解放感も大好きです。妙に痛かったり痒かったりを我慢しているときは特に。
ピンはなぜかすぐなくなりますね。レッスン場で落とす場合もあるのでしょうが、いつのまにか消えていく。バレエの七不思議のひとつでしょう。大げさではなくてよ?
私だけかもしれませんが、とりあえずバレエハゲは悲しいのでなるべく髪を刺激しないようにしています。