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聖剣カタストロフィⅣ

「何っ!?」

「どうなっているのよ!? これ……」


 凛と大地は目の前で起こった不可解な出来事に大きく口を開けた。


「まあ、一応改造人間だからねぇ」

 美架は不気味に笑うと、腕で斧と大剣の刃をはじき返す。


 果たして、改造人間とは何でもありなのだろうか?

 というのは、凛と大地が沙姫に思い切り斧と大剣を振り下ろしたとき、それを美架が超スピードで沙姫の前に駆けつけて、あろうことか、タンクトップからむき出しなった生身の前腕で、二人の攻撃を受け止めたからである。

 しかも、美架の腕は無傷だ。


 攻撃をはじき返された凛と大地は、後方にバック宙返りを決めて、地面に着地した。


「そういえば、まだ説明していなかったわねえ」沙姫はいきなり高笑いを始めると、見る者をゾッとさせるほどの不気味な笑みを浮かべた。「私達は一応、3ヶ月間の人体カプセル生活に耐えたのだけれど、それでも、全員が全員魔法が使えた訳ではなかったのよ。そこで、魔法が使えなかった実験体は、さらにもう2ヶ月間、人体カプセルに閉じ込められ、最強の対肉弾戦兵器として作り変えられたのよ、それが天音美架」


「そういうこと、あんな弱っちい攻撃じゃ、私の体にはかすり傷一つつかないぞ」

 美架はウインクして、ブリッ娘風にふざけた調子で言った。


 凛と大地の額から、思わず冷や汗がこぼれ落ちる。

 決して表情には表れていないものの、武器を持つ手がお互いに震えていた。

 さっきので、完全にトラウマとなったみたいだ。


「それでは、私の攻撃ならあなたにも届くかもしれませんよ」

 オルターは完全に落ち着き払って、静かに目を閉じると、腰から剣を取り出した。

 そして、目を素早く開けると、剣の刃を美架の方へとゆっくり向けた。


「うわあ、剣術の優等生が相手かぁ……、面白くなりそうだね」

 美架は不敵に笑い、スッと目を細めた。


なんじ、選ばれしとうとき者よ」

 オルターは、静かに目を閉じて剣を両手に持ち、水平に構えた。

 すると、どういう訳か、剣全体が光を放出し、輝き始める。

 オルターは詠唱を続けた。

 

 海を割り、大地を切り裂き

 これら大いなる罪

 この場をを持って許可せよ

 龍神様なり。

 我、この(たび)破滅の力を

 手に得ようとす者なり。

 されど、今ここに誓おう。

 たとえいかに大いなる罪犯せど

 我が騎士道に一切の恥残さんことを。

 刻め、聖剣カタストロフィ。


 詠唱を終えると、オルターの剣は白い光を帯びた霊剣に変化していた。


「聖剣? さすがにあれは私でもヤバくない、サッキー!?」

 美架は思わず弱音を上げた。


「そうね……、さすがに美架でもあれをモロ食らえば、立ってはいられないでしょうね」

 沙姫はおどおどした調子で言った。


「それでは参りましょう」

 オルターは急に怒ったように顔色を変えると、目つきを鋭くし、一気に美架の元へ駆け抜ける。


 ほとんど、一瞬の出来事だった。


 オルターは、0・1秒も経たない内に美架の目の前に近づくと、神速の剣技で美架を切りつけ、そして、その隣りにいる沙姫にも刃で切り刻むのだった。


 だが、どういう訳だろうか?


 美架や沙姫を霊剣で切りつけたのはいいが、身体は全くの無傷だった。


「オルター? 本当に霊剣で美架と沙姫を切りつけたのか? どう見ても無傷なんだが……」

「はい、それは彼らの心を切ったからです」


 オルターが笑顔でそう言うと、美架と沙姫はその場に崩れ落ちる。

 そして、この体育館の亜空間が消えて、俺達は元の場所に戻るのだった。


 心を切る?


 俺は、オルターがそんな言葉を平然と口にしたことに対し、言いようのない恐怖感に取り憑かれた。


「それでは、追っ手が来ないうちに、急いでこの場から逃げましょう」


 オルターはそう言うと、霊剣を上段に構え、何かを切るかのように一振り切ってみせた。


 すると……、




 俺達は、俺の学生寮の部屋にワープしてしまうのだった。




 これは一体……、

 

 俺はその光景に思わず絶句してしまう。


「ねえ、オルター? これはどういうことなの?」

 凛は少しも驚いた様子を見せずに、笑顔で尋ねた。


「これはですね、春人の部屋に戻るときの道のり、それまでにかかる時間を全てカタストロフィで切ったのですよ」

 オルターは満面の笑みを浮かべてこういった。


「本当にすごい聖剣ね、カタストロフィ」

 凛は苦笑いしながら言った。


「そうでしょう? でも一つ欠点がありましてね。それは、私自身が酷く疲れることなのですよ」


 いや、それだけじゃないですか……オルターさん。


 俺達は一斉に苦笑いを浮かべた。


 

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