第一話 国外追放された悪役令嬢、農家として再起を決意する。
絶対やらないと決めていた追放系、手を出してみました。
けれど、他とは一味違った追放系にします。
追放された元令嬢がプライドも恥も捨てて、再起していく、そして成長していく様を御刮目ください。
今思えば私、「ルフィア・ヴィスパーダ」は傲慢なお嬢様だったのだろう。
美しさゆえに傲慢になっていたのだろうか、名家の生まれだからか、それに傲っていたフシもあったのだろう。
のちに皇太子妃になる、同じ学び舎で共に学んだ、「サーリャ・シェールズ」に過去に嫌がらせをしていたのか……思い当たるのは色々ある。
今、私は『フェミータ王国』から、《国家反逆罪》の罪で「国外追放処分」を受け、入国禁止を言い渡され、領地も全て没収され、現在馬車の中だ。
この罪で国外追放処分はまだ軽い方だ。
最悪のケースで死刑だからだ。
名家の育ちが幸いしたのか、温情と言うべきだろうか。
ゲームで言えば、「破滅フラグを回収したテンプレ的悪役令嬢」の私だが、生きてさえいれば再起はできる。
しかし、逆風渦巻く中でこの名前を使えば即座に拘束されるかもしれない。
だから、セカンドライフは「ルナ・ヴァンヴィ」を名乗ることにした。
そして王国から馬車で約三時間を掛けて、到着したのは田舎。
「クレイスター村」と言うらしい。
私はこの時思った。
何もないじゃない!!と。
一応家は用意してもらってはいるものの、部下はもう、いない。
自炊すら碌にやったことのない、家事経験ゼロの私は前途多難。
誰もいない中で何をやればいいのかすらわからなかった。
尤も、国家に反逆などと考えていなかった私は、いわゆる無実の罪でこうなっただけだ。
しかし、戻れることはもうないだろう。
王家の人間のいうことは絶対。
私が「ルフィア」だとバレれば即座に拘束は間違いない。
どうすればいいのか……私は現実を思い知り、ただただ、腐るだけだった。
そして、1ヶ月が経過した。
元令嬢、現在無職の村人。
当然、引きこもり同然の生活で、買い物にもほとんど出かけていない私は、炊事は多少できるようにはなったが、一人暮らしなのだ。
何か手に職をつけなければ……。
再起するにしても、傲慢になってはいけないのは分かっていた。
では、どうするか。
私はこう結論づけた。
「決めた………!! 私、農業をして、フェミータ王国に貢献する!!」
こうして、私は、農家として再起することを決めた。
そして、何かヒントを得るために直売所へ向かった。
まだ僅かに希望があるであろう、フェミータ王国に戻るためとはいえ、農家として再起するにしろ、ヒントを得なければ何も始まらない。
目をつけたのは……
色鮮やかなトマトだった。
「すみません……これ、どこで作られたものですか??」
私は市場の人に聞いてみた。
農家として再起するためとはいえ、まず学ぶことからしなければ、再起もクソもない。
こう、答えが返ってきた。
「あー、このトマトかい? ……『スパイア』さんのところのだけどよ……それがどうかしたんかい? お嬢さん。」
私はその人ににじり寄った。
「そのお方は何処にいらっしゃいますか!?」
「あー……それならよぉ……山奥にいるぞ? 『バナード山』にいるぜ?」
「ありがとうございます!!」
……そういって、私はバナード山へ、猛ダッシュしていったのだった。
目的はただ一つ。
スパイアさんに、会うために。
山を駆けること二時間。
スパイアさんの家に到着した私は戸を叩いた。
「うるせーな……誰だよ……。」
野太い男の声だ。引き戸を思いっきりガラッ!!! と開けたスパイアさん。
無精髭で、ボサボサの髪をした、オジサンだった。
「………アンタ、この辺で見ねえ顔だな……。中央から来たっぽい顔をしてんな……。何の用だ、俺によお……。」
鋭い目で睨みつけたスパイアさんは、私に用件を聞いてきた。
「……私は1ヶ月前にここに引っ越してきた、『ルナ・ヴァンヴィ』と申します。………お願いです!! 私に農業を教えてください!!」
私は単刀直入に、聞かれたままのことを答えた。
スパイアさんは、意味がわからない、といった顔をしていた。
「………はあ?? どういうこったあだよ。まあいいわ……中、入んな。山の天気は変わりやすい。風邪、引かねえためだ。」
こうして、スパイアさんに誘われるまま、私は家に中に入った。
このことが、私が「農家」として再起するキッカケとなるのだった。
次回、勉強会です。
チートなどは一切出てきません。
超泥臭い小説なんで、ゆったりと書きたいと思います。