「先込め火縄銃と射手も用意せよ」
仁吉はおれの前に出ると深々と頭を下げた。
「仁吉」
「はい」
「銃は今どうなっているんだ?」
「実は今日殿がお呼びという事で、新しい物をお持ちしました」
なんと仁吉は元込めの火縄銃を開発したと言うのだった。
確かにおれは以前、仁吉に元込めの銃を造れないかと提案したことが有った。アイディアを幾つか説明したのだが、まさか本当に出来るとは思わなかった。
仁吉が持参したその銃には手元にレバーが付いており、下げて前に押し、弾を入れ、また引いて上げることで装填完了となるシンプルだがしっかりした構造だった。さらに弾は従来のミニエー弾より少し長くなっており、弾道の安定性が増して有効射程距離が伸びたとの説明だ。
「今撃って見せてくれぬか」
「分かりました」
庭に出る際、幸村に声を掛けた。
「幸村」
「はい」
「先込め火縄銃と射手も用意せよ」
「はっ」
試射は十分満足のいくものだったが、肝心なことは従来の先込め式火縄銃との比較だ。両者を並べて早さを競合わせてみたのだ。
結果は元込め銃は先込めと比べて約二倍から三倍の速さで撃てる事が分かった。さらに言えば先込め銃と違い、地面に伏せた状態からでも弾を込め撃つことが出来る。これは元込め構造の大きな強みだろう。
「仁吉」
「はい」
「後は耐久性だ。百発続けて撃てるように努力せよ」
「分かりました」
ただ元込め式銃でも火薬と弾丸は別々に入れる必要がある。薬莢で弾と一体になっていればいいのだが、さすがにこの時代の鍛冶職人でそれは難しい。
それでも火薬を入れ、その前に弾を入れた後、小さな工具を使って弾丸を火薬に押し付けているのが気になった。レバーを引くのだから、その動作と同時に自動で弾を火薬に押し付けられないだろうか。
仁吉にその事を話したが、既にこの銃は五百丁ほど出来ているとの事だった。もちろん更なる改良と増産を指示した。
すでにイングランド王国は世界制覇に乗り出している。最後は必ず日本にまでやって来るに違いない。もはや殺人兵器だのと言ってはいられない。やり返せなければ、こちらが一方的にやられるだけなのだ。




