「天狗殿がおれたちの援軍に来られたぞ」
この後細川、福島両軍が直ちに攻撃に移ったとの連絡が入る。
これを知った他の軍も続いて戦闘状態に入り、九州南部の全域が戦場になったようだ。ただ深追いし過ぎた細川軍が、ガレオン船の砲撃を受け後退しているとの報も有った。
しかし、各軍からの報告を聞いていると、ある共通点が浮かび上がって来た。
イングランド軍があまり攻勢に出て来ないと言うのだ。
守勢に回っているというよりも、明かに攻撃をためらっている感じだと。敵軍は砲撃も銃撃も今まで通りで、弾切れという感じでもない。
「トキ」
「はい」
「もう一度空を飛んでみようか」
「えっ」
あるいはと言う思いが、おれの脳裏に浮かんだのだ。
「トキ、行くぞ」
「はい」
おれは再び般若の面を付け、笹を背中にさして空を飛んだ。
今度は戦場を豊臣軍側からイングランド軍に向かい、見下ろしながらの飛行だ。
唖然として見上げるイングランド兵達が、ついに逃走し始めた。
「やっぱりそうだ」
時代は十七世紀初頭だ。クロムウエルの方針もあって、特に信心深い兵隊達がそろっている。魔女の存在を信じてはいるが、本当に空を飛ぶおどろおどろしいおれの姿を見ると、先を争って逃げ出したのだ。
中には大切な鉄砲を投げ出す者まで見える。桜島からは盛大な噴煙が上がっているから、舞台背景は迫力満点に違いない!
一方豊臣軍は、
「あれは天狗ではないか」
「天狗殿がおれたちの援軍に来られたぞ」
「うおっ~~」
豊臣軍側将兵の間に、天狗様だという声があっという間に広まった。
恐れおののき逃げるイングランド兵と違い、豊臣軍側の兵は歓喜の声を上げ攻撃に転じた。
信仰心の強いイングランドの者どもはついに歯止めが利かなくなり、総崩れとなり逃げていく。
「最後まで追い詰めてはならない。停止せよ」
飛行を終えたおれは停止命令を出す。
ガレオン船から砲弾の届かない辺りに全軍を留まらせた。




